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135.エルダニアのお花畑


 季節は春まっさかり。


「わわっ、見てみてつくし」

「おおう、いっぱいだ」


 ミーニャたちがわいのわいのとはしゃいでいる。

 城壁内の空き地にはスギナも群生している場所があり、辺り一面につくしが顔を出していた。春の風物詩だ。

 つくしも採ってきて灰汁を抜き、おひたしや甘露煮などで食べられる。

 俺が前世の記憶を取り戻したときにはつくしはもう生えていなかった。

 ということでもう少しで一年になる。


「こっちには菜の花がいっぱいだよ」

「うん」


 やっぱり女の子は花のほうがいいのだろうか。

 どう見ても花より団子だとは思う。

 ミツバチが黄色い菜の花畑の上をブンブンと活発に活動していた。

 やっぱり春になったんだな、と感慨深い。


「クローバーの花冠だよ」

「ミーニャちゃん私のも」

「うんうん、うまくできたね」

「みゃうみゃう、私も」


 ミーニャ、ラニア、シエルの三人はクローバーの絨毯に座り込んで、何かしていると思ったら花冠を作っていた。


「はい、これ。エドちゃんの分」

「お、おう、ありがとう」

「えへへ、これでお婿さんだねぇ」

「あ、うん」


 こうやって花冠を作って結婚式ごっこをするのが女の子たちの春の遊びだ。

 俺たちもそういうことをするようになるとは思わなかった。

 かわいいお嫁さんたちに囲まれて花冠をつけて、みんなで並ぶ。


「永遠の愛を誓いますっ、にゃ」

「誓います。えへへ」

「誓います、にゃうにゃう」


 お嫁さん三人がくっついてくる。春の陽気に加えてその体温は尚更温かい。

 その辺を散歩して歩く。


「見てこっちにはレンゲがいっぱい」

「おう、見事なピンクだ」


 元々城内の畑などから広がったのだろう。

 レンゲが一面に広がっている。


 春はいろいろな花があって楽しい。


「見てこれ、フキノトウ」


 どれどれ鑑定。

【メルリアフキ 植物 食用可】

 確かにフキだから、フキノトウなのだろう。フキのツボミがフキノトウといわれる。

 よく天ぷらにすると美味しい。少し苦みがある。

 こういうときに「フキノトウ」と鑑定されたら面白いけど、さすがにそこまで書斎ではないらしい。

 今の時期は森の中にもいっぱい生えていると思う。


 ということでフキノトウを探して歩き、採って集める。


 領主館ホテルに戻ってきて、菜の花とフキノトウの天ぷらとしよう。


「はい揚げます」

「わーい」

「ですです」

「にゃうにゃう」


 じゅわあぁぁ。

 次々と天ぷらにしていく。春の野草の天ぷらとか最高だ。


「「「いただきます」」」


 こうして天ぷらを塩で食べる。


「美味しい」

「ちょっと苦いけど、美味しいですよ」

「うまいみゃう」


 季節ものはその季節でしか食べられないからね。

 そういうものは大切にしていきたい。


 ◇


 さてそうして春を満喫して数日経ったころにお客さんだ。


「エドくぅううん」


 この甘い呼びかけ、ピンク髪のツインテールといえば、エレノア様だ。

 今日も赤いドレスアーマーの女騎士さんたちを連れてやってきた。


「最近、全然お手紙くれないから来ちゃいましたわ」

「お、おう、ごめん。王都で忙しかったから忘れてた」

「酷いですんわ」

「ごめん、ごめん」


 エレノア様が馬車から降りるとすぐに跳んできて俺に抱き着いてくる。

 なかなかにスキンシップが激しい。

 香水や石鹸の匂いなのか他の子とは違ういい香りがする。


「何かご飯をください」


 今は丁度お昼のご飯時だ。

 前俺たちがエルダニアに来た時と同じようなスケジュールで来るとだいたい昼ごろに到着する。


「じゃあ少しだけ残ってたクマ肉にしようか」

「クマ肉。すごいわ。ワイルドですわ」


 ということでクマ肉の甘辛タレ炒めを作ってもらい出す。


「美味しい。それにこのお肉の食べ応えがすごいですわ」

「おいちぃ」

「美味しいです」

「うみゃい、みゃう」


 女の子たちにもご好評で俺はうれしい。

 でもこれであれだけ大きかったクマ肉も残りごくわずかだ。

 また新しく仕留めたい。

 春になったのでクマも森に出てくるだろう。

 それまでは北のヘルホルン山の麓の洞窟で冬眠をしているのだ。

 すごくデカいボスクラスだと冬眠しないで冬中徘徊して餌の動物を襲って食べるらしいけど。

 マークさんとクマ狩りの相談をしないとな。

 いや別にクマでなくてもいいか。シカとかイノシシでもいい。

 ゴブリンはいらない。魔石くらいは換金できるけどやっぱり肉だよな。

 売るにしても肉のほうが量が多いからトータルで見れば値段が高いし。

 ことわざ「ゴブリン狩りの銭失い」ともいうしな。ゴブリンばっかり狩っても金にならず赤字だという意味だけど。

 でも初心者冒険者といえばゴブリン狩りともいうけどね。

 俺たちなら鑑定と鮮度維持ができるアイテムボックスもあるし薬草採取のほうが儲かりそうだけど。


 お肉だよな、やっぱり。

 干し肉でいいならアジベルリア帝国産のヤギかヒツジが大量に出回っているものの、塩辛いのもあるし、買うとそれなりにお値段がする。

 ということで結論としては、春になったのでお肉狩りに行きたい所存です。


「お肉が欲しいんだ」

「そだよね。私もお肉食べたいもん」

「ミーニャちゃんもか。私も美味しいお肉食べたいです。ハンバーグ」

「わわ、ハンバーグに唐揚げみゃうっ」


 ということで了承は得た。


「私も猟に連れていってほしいですわ。エドくぅうん」

「えっ、エレノア様もですか……」


 護衛の女騎士の人も困惑気味だ。

 でもどうしてもというなら、やぶさかではない。

 危険は……ある。ないとは無責任に言えない。冒険者は自己責任だ。

 しかし領主の娘さんを猟に連れていってもいいのだろうか。


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