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109.ザリガニパーティー


 この前、噴水の近く、用水路の横でクマを解体した。

 トライエ市では井戸が多かったが、ここエルダニアでは井戸は少なくて、用水路を主に活用していたようだ。

 綺麗な水の流れがあるので、飲料水にも使っている。

 今でも噴水から続いている用水路以外にも、幾筋もの用水路が走っている。

 上物はみんな壊れてしまったけれど、用水路は水が溢れたりすると困るので、今でも修復して整備されていた。

 石組は元々頑丈なほうなので、それほど手間ではなかったようだ。

 下流のほうでは放牧された牛が用水路の水を飲んだりもしている。


 この用水路、小魚やエビ、サワガニとかもいるのだ。

 もちろん水草なんかも生えている。あまり手入れしていないからなのか、自然のままにしてあるのか。


 そして今日のターゲット――ザリガニ。


 この世界のザリガニも赤くて大きいもので二十センチくらいだろうか。

 フォルムはアメリカザリガニに似ている。


 そして日本では水が汚れているところに住んでいるイメージがあって泥臭いので、ほとんど食べられることがない。

 しかし本場アメリカ、カナダではザリガニパーティーといってみんなで大量に取ってきて食べる風習があると聞く。


「そうだ、ザリガニパーティーしよう」

「わーい、パーティー」


 ミーニャちゃんも小さく高速にぴょんぴょんして楽しそう。

 期待値はマックスだ。


 前、エビとか取ったけど、どうみてもザリガニのほうがデカい。

 素揚げにするのと、焼いたりするのでは全然違うので、どちらのほうがいいという訳ではないけれど、ザリガニも美味しそう。


 セミを取ろうとした虫取り網があったと思う。

 あれ実をいうと水中兼用のやつでいわゆる「タモ」なのだ。


 水の流れがある用水路をささっとタモですくう。


「わ、わわ、赤いのいる!」

「うん、ほら、これザリガニ」

「にゃうにゃうにゃう、痛いっ」


 にゃう妖精のシエルがタモから出そうと手を入れて持ち上げたので挟まれてしまった。


「ほら、一度置けば離してくれるよ」

「う、うん、みゃう」


 一度タモの中に戻すと自然とハサミを離す。

 俺はお腹部分を指で挟んで持ち上げる。


「こうやって胴体を持つんだ。後ろ側までギリギリ届かないはず」

「なるほどみゃう」


 みんなで順番にタモを使ってザリガニを取っていく。

 取ったザリちゃんは逃げないようにアイテムボックスに放り込む。


 あちこちにいる赤いボディーは目立つので、ほいほい捕まえられる。

 横の奥の方へ逃げようとするけど、石垣はしっかりしていてあまり穴は深くないので、捕まえられる。


「また取れた、みゃう」

「ほいほい」


 シエルさんご満悦。

 選手交代、ラニアへ。


「えへへ、取れましたわ」

「おお、いいねいいね」


 ラニアも自慢顔だ。


「にゃあ、取れた!」

「さすがミーニャ」


 ミーニャはお水の中にざぶざぶ入って、追い込んで素手で捕まえている。

 さすがミーニャ。


 こうしてたくさんのザリガニが取れた。

 さすがに全滅しないように、少し手加減した。

 用水路はかなり広範囲にあるので、まだまだいる。


 領主館ホテルに戻って、調理しよう。


 ザリガニさんたちを大きい鍋に放り込んで茹でてしまう。

 少しだけ可哀想だな、と思ったものの、真っ赤に茹で上がったイセエビやロブスターみたいなフォルムを見たら吹き飛んでしまった。

 茹で上がったら一度、取り出す。

 面倒だが包丁を使いつつ手でも剥いて、ザリガニの足と殻を外していく。

 普通のザリガニパーティーでは焼いて各自自分で剥くのだろうけど、今日は失敗した。


 みんなで手分けしてザリガニを全部剥いていく。


 ザリガニの身を今度はフライパンへ。

 塩、コショウ、オリーブオイル、それからニンニクで炒めていく。

 そこにこの前の残りのクマ肉を投入。


「じゃーん。クマ肉とザリガニのアーリオ・オーリオ」

「あーりお、おーりお?」

「うん。ペペロンチーノの親戚だよ」

「ペペロンチーノ、好き!」


 ミーニャも記憶にちゃんとあるようで、満面の笑みを浮かべている。

 すでにエビ系の甘味とニンニクなどの匂いがぷんぷんして、すごく美味しそうだ。

 そこにお肉の匂いが追撃してくる。もうたまらない。


「「「いただきます!」」」


 みんなでザリガニを実食。

 赤と白いぷりっぷりのザリガニの身。こうなってしまうとほとんどデカいエビだ。

 めちゃくちゃ美味しそうだ。

 そして一口サイズに切られたクマ肉。どう見ても食べ応えがある。


「おいちいぃいいいいいい」

「うん、とっても美味しいです。甘味もあって」

「美味しいみゃう、美味しいみゃう」


 ニンニクやトウガラシのスパイスもほどよく利いていてめちゃくちゃ美味しい。

 これはアタリだ。大当たり。何回でも食べたい。


 まあみんなうれしそうだ。

 ホテルにいるみんなにも、おすそ分けをする。

 みんなよろこんでくれた。

 殻を頑張って外した甲斐があるってもんだ。


 殻などのゴミはアイテムボックスに放り込んでおく。

 あとで卵の殻などと一緒に肥料にしよう。


 あれザリガニの殻ってカルシウムだっけキチン質だっけ。

 まあいいや、たぶん肥料になるだろう。


 これは畑の肥料にするか、それかエッグバードの餌に混ぜて使おう。


 かなりの数のザリガニを取ってきたので、ホテルにはたくさんの人がいたけど、みんなで一人一匹くらい食べられた。

 基本無料サービスだけど、俺たちのお駄賃箱を設置したら、結構大人がよろこんで銀貨とか入れてくれたので、かなり儲かった。

 こうしてザリガニパーティーは大盛況で終わった。


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