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117.建設ラッシュと粉挽き所


 秋になって、本格的な建設ラッシュが始まった。

 一つは夏は暑いので、期間工の人がお休みだったこと。

 もう一つは王都の建設業者が王都の投資家によって雇われて、何グループか参戦したことだった。


「すごい、人がいっぱいいる」


 ミーニャが街の通りを歩いて眺めて感動している。

 あちこちで家を建てている。


 特に同じ仕様で並んでいる通りを全部作ってしまうという手法が俺の意見で通ったため、同じ家が何軒も並んでいるのを見るのは圧巻だ。

 表通りの商店街もそうで、荷物置き場、商品の陳列してあるオープンスペースなどが共通仕様になっている建物が林立している。


 土台を作ったら人海戦術で上の骨組みを木で作ってしまい、壁を石組で組んでいく。

 地球の現代より建築方法自体は素朴な感じで、そのぶん複雑ではないので施工が早いらしい。


 あっちこっちで木の加工、石の加工をしている人がいる。


 都市設計は俺と暫定領主のギードさんはじめ、冒険者ギルドや教会などの人と合議でだいたいの区割りを決定した。

 一応として名目上は土地そのものは領主の土地だ。


 王都やトライエ市では新しい土地なんてないので、建て替え以外では新築の家がない。

 そのため建設業者はすごい張り切っている。


 普段は増築だったり改築、修繕の仕事が多いそうだ。

 こういう新築で大きなお金が動く仕事は、その分儲かるので、みんなやる気がある。

 なんとか飲食店や宿舎で人を捌いて回しているけれど、ぎりぎりだった。


 ここエルダニアはトライエ市と王都の途中にある。トライエ寄りにあって、さらにエルフ領と山を挟んで接している。

 元々はエルフ領と交流があったので、エルフ産のポーションなどをよく取り扱っていた。

 今はエルフ領との物流網が壊滅してしまったので、流通業者はエルフ領と王都との間に長距離馬車を無理やり走らせて、なんとかしのいでいるという状況だ。


 一度、エルダニアで在庫を卸して、エルフ側と王都側の間にバッファを置くのは、物流の安定の考え方からしたら重要だった。

 そういうところに商機を見た、商人などがこぞって街の建設にお金を出しているのだ。


 建物を建てた人は家賃収入を得ることができる。

 不動産資産といえば、不労所得だ。欲しいに決まっている。

 王都では新規の不労所得が得られる機会は少なく、既得権益となっているので、新興の大商店や貴族はこぞって出資してくれている。



「すごい、ぐるぐる、回ってる」


 こちらにあるのは粉挽き所だ。

 ミーニャの目もぐるぐる回りそうな勢いで、見ている分には楽しい。目が回ったりしないのだろうか、不思議だ。


 今までは小さな石臼でその日の分だけちまちま小麦粉を挽いていた。

 人口が増えてきたので、そういう単純労働に掛けている時間が惜しい。


 ということで都市の発展に欠かせない『粉挽き所』が設置された。

 いわゆる水車小屋というやつだ。


 街には用水路が張り巡らされているけれど、土地は全部平坦ではなく、高低差がある場所がある。

 特に奥の下流の方に二メートルくらいの段差があったので、そこへ水路を伸ばして水車を設置した。

 ドワーフのおっさんの木工技術により、水車と全自動の石臼粉挽きマシーンが設置されている。

 二十四時間、小麦粉などを製造している。


 一時は王都から小麦を粉に挽いた小麦粉の状態で輸入していたんだけど、単価が割り増しなので、あまり経済的によくなかった。

 都市の独立生産のためには、水車小屋が必要なのだった。

 万が一、王都との街道の橋が壊れたら馬車が通れなくなるし、盗賊やモンスターが頻出するようになったら詰んでしまう。

 そうならないように余裕は欲しい。


「この辺はなんもないね。いい丘だね」

「ああ」

「スライムは歩いているけど」

「そうだね。ここには大聖堂と学校を建てるんだよ」


 それから中心地から少し離れた丘の上。

 ここには「聖エルダニア大聖堂」を建てる予定でいる。ラファリエ教会の礼拝堂で、観光名所にしようという試みだ。

 街中は手狭なので、あまり大きな教会を設置しにくいが、郊外なら土地が空いている。

 そしてその横に「エルダニア高校」と「エルダニア中央小学校」の設置が決まっている。

 さらに「エルダニア図書館」を作る予定でいる。


 学校教育機関は必要だ。

 今は各都市がまあまあの教育機関を設置していて、王都には一番いい教育機関があるのだが、その門戸は狭く各学年で各校百名程度しかいないはずだ。

 また王都は港町で海に近いため、大津波などの大災害があったときにバックアップはあったほうがいい。

 エルダニアもスタンピードに遭ってしまったので他の都市のことばかり言ってはいられないけど、今度はそういう意味でも戦力の増強もできる学園は必要だと思う。


 エルダニア高校は、国内最大規模の高等教育機関にする予定だ。

 ただし今すぐできるわけではなくて、いろいろ手回しや教員の採用など、考えることは多い。


 まあ考えるだけはタダなのでギードさんには話してある。

 年齢を重ねてきた分エルフさんも考えはあるようで「なるほどな」と納得していた。

 やはり教育の重要性については小学校の教師もしてくれていたように理解しているようだった。


 エルフ領にも近くポーションによる錬金術と学園都市にするのが俺の目標かなと漠然と考えている。

 なんだか都市開発ゲームみたいで、わくわくしてくるね。

 ただしセーブはできない、ぶっつけ本番だ。


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