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116.紅葉狩りとキノコ狩り


 秋たけなわ。エルダニア領主館の果樹園やサクランボ通り、森の広葉樹などなど。

 紅葉がだいぶ見られるようになってきた。


「ということで今日は、紅葉狩りとキノコ狩りです」

「キノコ!」

「まぁキノコは年中取っているけど、今日は秋キノコだね」

「うん!!」


 みんな美味しいキノコでも想像しているのか、ヨダレが垂れそうな顔をしている。

 エルダタケやムラサキキノコは美味しいもんな。



 俺たちは美味しいもの目指して森に入った。

 ミーニャとラニアも含めて気配察知をして魔物を避けつつ進む。


「ほら、これがモミジ。赤い手のひらみたいな葉っぱだよ」

「うん、真っ赤だね」


 みんなでモミジの葉っぱを観察する。


「これも一応、回収しておくか」


 しおりとかにすると需要があると思う。綺麗なので。

 王都方面とかトライエ市とか、そこまで広葉樹が多い印象がないので、珍しいかもしれないし。

 それでも何本かはトライエ市内にも広葉樹はあって赤や黄色の葉っぱがあった気がする。


 今年は当たり年なのか、紅葉の色は鮮やかでとても美しい。


「そして、はい、キノコ」

「やったぁあああ!!」


 木の根元には株になって山盛りに群生しているキノコちゃんがあった。

 キノコはいつだって唐突だ。


【メルリアシメジ キノコ 食用可】


 確かにシメジっぽい。

 色はどちらかというと笠は茶色、柄は白で普通のキノコだ。


 食用可の安心表示に納得して回収する。


 うん。鑑定君はとても便利だ。特にキノコの可食判定は大助かりだった。

 キノコには似ているのに毒キノコとかよくあるので、これがないと困る。


「エド、エド。いっぱい木の実が落ちてる」

「うん。これはドングリだね」

「そうなの?」

「たぶん」


【エルダシイの実 植物の種 食用可】


 シイの木つまりドングリの木の実なので、ドングリだと思う。


 この大木と、周りにも何本も同じ種類の木がある。

 落ちたドングリから生えたのだろう。

 その木々の下に大量にドングリが落ちている。


 これにはリスさんたちもにっこりだろう。

 少しいただくことにしよう。


「ドングリ拾って集めようか、クッキーにしよう」

「わーい」

「なるほどです」

「にゃうう」


 みんなが周りでしゃがんでドングリを拾い始める。

 大量にある。これはさすがに拾いきれない。


「どんぐり~♪ どんどん、どんぐり~♪」


 調子がいいミーニャが歌い出す。

 なんだか周りの雰囲気まで少しいい感じに見える。

 何回も同じフレーズを歌うので、シエルまで一緒になって歌っている。


「「どんぐり~♪ どんどん、どんぐり~♪」」


 もしかして、ミーニャたちの歌にもバフ効果とかあったりして。

 なんか教会とかの神聖な雰囲気に少し似ているのだ。


 キラキラと太陽の光が降り注ぎ、落ち葉が舞い踊る。

 絵に描いたようとは、まさにこんな感じ。

 落穂拾いみたいな油絵にしたら売れそうだ。

 拾うのはもちろん美少女三人組。


 絵の才能とかカメラのスキルとかあったらよかったな。

 ないものはどうしようもないが。

 とりあえず俺は心のカメラで連写しておく。


 こんな子供たちの遊びをした、と記憶にとどめておくのだ。

 それがいつかいい思い出になる。


 彼女たちはスカートの前ポケットにどんどん詰め込んでいく。

 子リスの三姉妹みたいでかわいい。


 ドングリを拾うだけなのに、なんでこんなに楽しいんだろうな。

 収集するのが楽しいのかな。

 なんか集めると資産が増えるよろこびがあるというか。


「では、回収しまーす」

「「「はーい」」」


 みんなたくさん拾ってくれた。

 これならたくさんドングリクッキーができるぞ。

 まぁ小麦もあるので、別にドングリにこだわらなくてもいいだけどね。

 日本の現代だと健康志向とかあって、ありがたがられるけれども、まだ異世界にはそういう発想はあまりない。

 もちろん一部の市民の間に健康茶は知られるようになったけど。



 敵を避けて歩いたので、ほとんどエンカウントしなかった。

 ゴブリンを三匹ばかり倒したのみで、エルダニアに戻ってきた。


 ドングリの皮をみんなで剥いて石臼で挽いていく。

 どんどんちいさな粒になっていく。


 ドングリ粉に小麦粉を混ぜて、それに水を入れて練っていく。

 小麦粉より大粒なので少し固まりにくい。


 それに塩少々、それから高級品の砂糖をいれて味を調整する。

 一口サイズに小分けにして、料理用金属バットに丸めて並べていく。


 魔道コンロのオーブンに入れてクッキーを量産していく。

 ここはエルダニア領主館で業務用の大型オーブンがあるので、こういうときは助かる。


「クッキー楽しみ!」

「だな」


 もうすでに香ばしい匂いが漂い始めていた。

 ミーニャたちはくんくんと鼻で嗅いで、興味津々だった。


「「「いただきます」」」

「「「美味しぃ~~」」」


 みんなでドングリクッキーをいただいた。

 素朴な味ではあったけど、なかなか美味しい。


 第二弾、第三弾と何回か焼いて、領主館のメイドさんたちやホテルのお客さんにも分けてみんなで食べた。

 秋をみんなで共有したみたいでなんだかうれしい。


 それからメルリアシメジは、夕食でバター焼きにしてもらった。

 なかなかキノコ独特の味とバターの塩気と香りでとても美味しかった。

 腹ペコ妖精さんたちも今日は大満足でした。


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