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98.ミントオイル


 ちょっと思いついたことがあるんだ。

 それは「ミントオイル」。


 ラベンダーオイルとかあるじゃないですか、地球の場合。


 香料の天然オイルって高価で、そういうのをブレンドした香水の中には修道院で作られていたとか読んだ記憶がある。


 それで今すぐできそうなものにミントオイルがあるのだ。

 すーっとして愛好家はいると思う。

 これから夏だしいいんじゃなかろうか。


 この前トングの生産でお世話になったドワーフのベギダリルさんくらいしか頼れそうな人はいないので、聞いてみたのだ。


「ということでミントオイルの蒸留器みたいなのが欲しいんですけど」

「あぁ蒸留器なそれならできるぞ。小型のほうがいいよな? 大きいとめちゃくちゃ高いからな」

「そうですね」


 ニッと笑ってまかせろと言ってくれる。


「ところで蒸留器なんてなんで作れるんですか?」

「そんなの酒に決まってるだろ。アルコールだって油みたいなもんだからな。ドワーフと言ったらウォッカとウィスキー。ウォッカと言ったらドワーフ」

「なるほど」


 非常に納得できる理由だった。


「だからドワーフの鍛冶屋は蒸留器を作れなきゃ一人前とは言えん。うちにもあるんだ。それでだな、ちょうど最近自家製の酒用の蒸留器を小型のものから中型の大きいのに替えたんじゃ。小型の余ってるからもってけ」

「え、いいんですか?」

「もちろん料金は取るぞ。ただし相場の半額じゃ」

「ありがとうございます」


 こうして蒸留器を入手した。


 それをアイテムボックスに収納する。

 別に変な顔もされなかったので普通なのだろう。セーフ。


 せこせこハリスの家に向かった。


「というわけでミントオイルの製造をしたい。蒸留器がいるんだが、ハリスんちに置いて作ってほしいんだけど」

「あぁ仕事はまだ欲しい。人数が多いと仕事がたりねぇ」

「だよな。じゃあ頼む」

「おうよ。おまかせされるぜ」


 と二言返事でOKを貰ってハリスの家を製造工場とした。

 ハリスの家は俺の元家と一緒でしっかり屋根と壁があるスラムでは大きいほうなのだ。


「じゃあみんな、今日はミントだけだ」

「おぉおおお、ミントな」

「ミント!」


 みんなでミントをかき集める。

 小一時間でもみんなで集めればあっという間だ。


 それを蒸してその先を蒸留器にセットする。

 火はいらない。これは魔道コンロの一種なので。


 そうして待つことさらに一時間くらいで、ぽつぽつと一滴ずつ出口から垂れてくる。

 それを小ビンで受け取る。


 嗅いでみるとスーッとする匂いがする。

 オイルといっても無色透明なようだ。


「ほら、これがミントオイル」

「おぉお。いい匂いするな、なるほどこれを貴族のご婦人とかが肌につけるんだな」

「そういうこと」

「なるほど、売れそうだな。さすがエドだ」


 こうしてミントオイルが製造できた。

 さっそくどうしようかなと思ったが、セブンセブン商会に持ち込んでみた。


 従業員の偉い人が応対してくれる。


「ほぉこれがミントオイルですか」

「そうです」

「似たコンセプトのものはあります。ラベンダーオイルですね」

「あぁラベンダーオイルですか。それなら?」

「はい、これも売れると思います。ラベンダーはいい香りですが好まないかたも多いそうで」

「へぇ」

「これはちょうどいいですね。それにスッとして夏にちょうどいい。すばらしいです」

「えへへ」


 評価は上々、さっそくトライエ貴族向けに店に置いて、さらに王都の貴族向けの出荷の荷物に一緒に入れてくれることになった。


 ちなみにセブンセブン商会ではマジックバッグを持った人間が乗ったランバード便を主に使っていて、早期配達ができる。

 量が多いものに関しては普通の馬車を手配することもあるそうだ。


 それで少量で高値がつくミントオイルはランバード便に載せてもらえることになった。


 数日のうちに王都に到着する予定だそうだ。

 さすがセブンセブン、仕事が早い。




 家にも持って帰る。


「ほらこれがミントオイル」

「へぇ、なにこれスーッとする。面白いね」

「みゃう、変な感じするみゃう」


 ミーニャもシエルも楽しそうに匂いを嗅いでいる。


「こうして手首のところにつけて使うんだ」

「へぇ」

「ふぅん」


 香水のつけかたを教える。

 首の後ろとかにつける人もいる。


 さわやかな匂いがして、なんだかいい感じだ。

 ただミーニャもシエルもそれからラニアも、元々女の子特有のいい匂いがするので、香水はしなくても大丈夫なんだよな。


 メルンさんは別に変な臭いとかしないけど、おすすめしてみるか。


「メルンさん、どうです。香水みたいな感じのものだけど」

「えぇ、さわやかでいいわね」


 メルンさんにもご好評いただいて、サンプルの香水はメルンさんが使うことになった。

 お金があるとは思えないけど、スラムの治療院で話題くらいにはなるかもしれない。


 別に香水以外でもいいのか。

 例えば頭につけてトニックみたいに使うという手もある。

 夏の暑い日にはよろこばれそうだ。


 朝シャン文化なんてないけど、水で頭を洗うことはある。


 試しに水を汲んできて数滴ミントオイルを垂らしてやってみた。


「うぉぉ頭が……」


 頭が変な感じに。

 慣れないとスースーしてたまらん。

 気持ちいいといえば気持ちいい。

 流行るかは微妙なところだ。


 商品は売るだけでなくて、使い方もレクチャーしないとだめなんだな。

 特に新しい商品はどうやって使ったらいいかわからないもんな。

 勉強になったわ。


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