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91.ラプンツェル・シスターズ


 ただこのお兄さん、ちょっと騎士団みたいな鎧が目立つうえに、後ろの連れの女の子三人がうーん。


 めっちゃ美しいエルフの三人、おそらく姉妹を従えている。

 ポンチョコートで衣装を隠している上からでも、おっぱいが大きい。

 首から上は出ていて腰まである長い金髪が綺麗だ。

 それから腰は細くてお尻が大きいのがシルエットでもはっきりわかる。

 エルフってみんなおっぱい小さいのかと思ってたけど、そうでもないな。


 ポンチョコートは短く膝上丈でミニスカートのワンピースみたいになっている。

 顔は間違いなく美少女だろう。耳ははっきり尖っていて長い。


「あの……」


 聞くに聞けない感じだったのだけど俺が言葉を濁すと理解してくれたようだ。


「ああ彼女たちはラプンツェル・シスターズだよ」

「ラプンツェル・シスターズですか?」

「そう。知らない? 美しいエルフの三姉妹さ」

「いえ、スラムに住んでると周りのことはあまり情報が入ってこなくて。すみません」

「そっか、そうだよな。こんなところで。すまない」

「いえ、別にいいんです」


 ラプンツェルといえば、塔の上に幽閉されていて長い髪を降ろして王子を登らせて逢瀬を楽しんだという話だけど。

 この世界でも似たような話があって便宜上ラプンツェルと呼ぶ。


 それでエルフの三姉妹だ。


「君を一人前として認めよう。三人ともエド君に正式な挨拶をしてくれ、特別だからね」


「わかりました」

「「はい……」」


 三人とも、頷き合うとそっとポンチョコートを開いて脱ぎ、マジックバッグへと収納する。


 ポンチョの下は軽装のドレスアーマー姿だった。

 金属製のブレストプレートとミニスカートだ。


 エルフ特有の白く透けるような美しい素肌が少し見えている。

 全体的には金属は白金、布は薄緑、薄い浅葱あさぎ色だ。緑がエルフっぽい。

 胸の上には小さいリボン飾りがある。

 長女が赤いリボン、次女がピンク、三女がオレンジ以外は共通だ。

 リボンは色がはっきりしていて結構目立つ。

 足は薄緑色のニーソックスと絶対領域がまぶしい。


 ありていに言えば、高そう。


 貴族が使うような本気の金属装飾とエンチャントなどで防御力を高めてありそうな、あれだ。


「高貴なエルフの女性はみな、髪を伸ばすものなのだそうだ。山向こうでは」

「へぇ」


「では、挨拶を」


 カーテシーを三人が揃ってする。

 ミニスカートの裾をつまんで広げかわいらしく首をかしげる。

 微笑んでくれる。

 恥ずかしそうに顔と耳を赤くするところが、初々しい少女のようで、かわいらしい。


「長女のマリアーヌです」

「次女のミリアリーフです」

「三女のソクラシアです」


「手にキスを」


 長女さんから右手の甲を差し出してくる。

 もちろん近づかないとできないので、接近する。

 ドレスアーマーと白い素肌にすごいドキドキしてくる。

 それからミーニャたちとも違う、女子高生くらいの女の子特有の甘いモモのようないい匂いもしてきてクラクラする。


 ちゅ。ちゅ。ちゅ。


 無心。心を空っぽにして作業のようにキスを落とす。

 断固、精神を統一して作業を遂行した。


 俺の周りにはみんないる。


 俺の横にはすでにミーニャ、ラニア、シエルが待機していて、そのエルフさんたちを顔を赤くしてぼーと見つめていた。

 これは彼女たちが美しくて、見とれているのだろう。


 そして少し離れてギードさんとメルンさんもいた。


 メルンさんとミーニャさんはさっきまで俺と離れて治療をしていたけれど、すでに終わっている。

 治療のとき、ミーニャの前に若い冒険者が列を作っていたので笑ってしまうところだった。


「どうだい? 僕の自慢の戦友たちは」

「あ、はい! とっても美しい、綺麗だと思います」

「そうかいそうかい。だそうだよ」


「「「……ありがとうございます。エド様」」」


 ちょっとためらった後、俺にお礼を言ってくれる。

 少し頬を染めるところとか、めっちゃかわいい。


 褒めたせいか、少し恥ずかしいのか目が若干泳いでるもんね。


 あ、目線が止まった。顔が赤くなる。


 目線を追うとギードさんだった。


 ギードさんがうつむきつつ、目立たないように片手をそっと上げる。

 そうすると姉妹三人が目を見開いて、今度は目を細めて、そっと頷いた。


「あの、マーク」

「なんだい?」

「明日、午前中少しの間、用事ができまして、私たちに時間をください」

「そうか。まあ、いいよ。別に急いでいないし」

「「「ありがとうございます」」」


 姉妹が揃って頭を下げる。


「それじゃあ、明日の午前中はフリータイムということで。僕もついていくけど」

「わかりました」

「では、戻ろうか」


 三姉妹はそっとポンチョコートを羽織って視線から衣装を隠す。

 さっきからじろじろ見られていたのだ。

 その男性たちの視線の数はちょっと数えきれないくらい。


 そっと長女のマリアーヌさんが俺に聞いてくる。


「すみません。エド様、あのエルフの方は?」

「ああ、あのちょっと名前は言えなくて。なんで?」

「いえ、その知り合いでして。ご領主様といっても信じてもらえないと思うのですけど」

「あぁ、あの失礼ですが聞きたいんですけど、教会派ですか? それとも正教会派ですか?」

「教会派です。あのギード様に会わせてください」


 後ろのマークさんも頷いてくれる。


「彼女たちは確実に教会派だ。僕が保証する」


「いいよ、明日、うちに朝はやくおいで。喫茶店エルフィールってお店だから」

「わかりました。必ず、必ずや、お伺いします。このマリアーヌ、命に懸けて」

「いや、命は大事にしてください」

「うっ、は、はい」


 こうして明日の朝、うちで会うことになった。


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