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82.マヨネーズとタルタルソース


 あくる日。


 俺とラニアが休日だったので、見張り山へペア探索に出かけた。


「二人で探検なんて珍しいですね」

「そうだね」


 いつもより上機嫌のラニアと山を少し登る。


「キュピキュピ」


 一角ウサギだ。


「おりゃあ」


 俺が剣で切りかかる。

 昔は一発で逃げられてしまったが、今回は当てることに成功、見事にウサギちゃんをゲットした。


 それからもその辺を巡回して合計五羽の一角ウサギを持ち帰った。


 家に帰ると解体に取り掛かる。

 本来ならその場でやるか、すぐにやったほうがいいけど、俺のアイテムボックスは万能だ。


 ミーニャが目を丸くして注目してくるなかで解体していく。

 魔石、骨、肉、皮などに分解された。

 内臓はそっとアイテムボックスにしまう。




 さてそれでは、ついについにですよ。

 マヨネーズづくりをしたいと思います。


 もっと早くできたのだけど、泡立て器がなくて面倒くさいなと思っていた。

 最近朝市を見ていたところ泡立て器を発見したのだ。

 金物屋とかに普通に売ってるのかもしれないけど、お店はよく知らない。


 卵黄だけのマヨネーズにしようかとも思ったのだけど、白身がもったいないので全卵を入れる。

 卵、塩、そしてこの前買ったお酢を入れる。


 塩はよく使っているけど、この国の南東部は海に面していて塩田での塩づくりが盛んだ。

 最後に煮るのも魔道コンロが使われているのでコストはそれほど掛からない。

 また北側のベリダリタル山脈の中腹でも岩塩が採取できる。

 ベリダリタル山脈はヘルホルン山の西隣でうちからもほど近いので、塩は安価だ。


「はい、これを混ぜる」


 さらにオリーブオイルを入れて、混ぜていく。

 白っぽくなるまで根気よく混ぜる。


「はい、完成!」

「おぉぉなんだこれにゃ」

「変わっていますね」

「知らないみゃう」


 そうですね。


「これが『マヨネーズ』という食べ物です」

「「「マヨネーズ」」」


 どやぁ。

 転生知識をゲットしたら一度はやってみたい定番ランキングベストテンに入る。

 マヨネーズづくりだ。


 卵の菌の問題があるらしいが、この世界ではあまりそういうのが問題になったことはないので、大丈夫らしい。

 鑑定君もこの卵は良品だと教えてくれている。

 鶏卵ではなくエッグバードだが、似たようなものだ。


 適当にホレン草、タンポポ、サニーレタスの摘んできたものをちぎって皿に入れた。


「はい。サラダに塩じゃなくてマヨネーズを掛ける」

「ほーおぉ」

「みゃぅ」


「ささ、食べてごらん」

「「「いただきます」」」


 マヨネーズのサラダを食べる。


「美味しい」

「美味しいです」

「美味しいみゃう」


 どうだ。参ったか。

 こうしてうちの料理についにマヨネーズを追加した。

 もっと早くやればよかった。




 さてウサギを狩ってきたのは他でもない。


「今日の晩ご飯はウサギの唐揚げです」

「「「おぉぉ」」」


 ラニアも今日は食べていくそうです。

 最近は食べていく頻度が下がってきていた。家でも野菜やいろいろな工夫を実践しているらしいと聞く。


「今日はタルタルソースに挑戦しよう」

「「「タルタルソース」」」

「うん。タルタルソース」


 なんでも東方のタルタル族の料理で肉をつぶした料理があったそうな。

 生肉のタルタルステーキのことだと思う。

 それで卵を同じように潰してマヨネーズを和えたのがタルタルソースなんだよね、たぶん。


 エッグバードの茹で卵を作ったら1センチ角くらいに切って荒く潰す。

 キュウリのピクルス、これはこの前密かに作った。酢漬けだからお酢に漬けただけ。

 さらにみじん切りにしたタマネギを投入。

 そして塩、コショウで味付けをする。

 それらをマヨネーズとまぜまぜしてはい、完成。


「これがタルタルソース」

「うん」

「はい。美味しそう」

「みゃう」


「味見してもいいけど、唐揚げにつけて食べると美味しいので、唐揚げを作ろう」

「「「やった」」」


 お肉を塩、コショウ、ニンニク、ショウガの専用タレにつけて揉みこんでおいた。

 さてお時間になりましたので、これを料理していくぞ。

 小麦粉の衣につけて、油へ投入。

 とまあ作り方は以前と同じだ。

 コショウが増えたのは違うね。


 アツアツの唐揚げが完成した。


「マヨネーズでもいいし、そのままでもいいし、タルタルでもいい。みんなはどうする?」

「ミーニャは、一個はそのまま。あとはタルタル!」

「私はタルタルで、お願いしますっ」

「わわ、私は一つマヨネーズ、あとはタルタルで、お願いしみゃう」

「はいはーい」


 お皿にもって、タルタルとマヨネーズを注文通りに添える。


「「「いただきます」」」


「もぐもぐ、おいちぃ」

「これ、これ美味しいです!」

「美味しいみゃう!」


 こうしてタルタルソースもうちのレパートリーになった。

 どんどん心の料理手帳に追加していくぞ。

 料理ゲームをしていてレシピの解放をしているようだ。


 さて少し時間が空いている。

 たまには夜にせこせこスプーン作りの続きをやろう。


 ギードさんも喫茶店が始まってしまったので、スプーンは夕食後しか作る時間がない。

 喫茶店とスプーン作り、どちらが時給がいいかはちょっとわからない。

 ちゃんと統計を取ってないので、なんともいえなかった。

 喫茶店の売り上げも悪くはない。


 一応、喫茶店だけやっていても、ご飯そのものは食べていける。

 あとはどれだけ贅沢するかだな。

 というか領主だったんだから何か今後の動きも考えがあるのかもしれないし。

 ミーニャが大きくなるまでは平和で居たいとか。


 エルダニアを見に行ったということは、もしかしたら領主として立つ可能性もある。

 再興するのだエルダニアを。

 支援に出たエルフ騎士団は敗北してしまったけれど、今度こそは。


 なんてね。実際のところはギードさん次第だ。


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