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51.ギョウザとすいとん


 水曜日。


 朝ゆっくり起きる。


「エドぅ、すきぃ」

「あーうん、はいはい、ミーニャ」

「にゃっ、エド、おはよう」

「ミーニャ、おはよう」


 ミーニャの好き好きエド攻撃を受けたあと起きる。


 今日はまだ外が静かだ。

 エドのうんち一週間戦争が終わったのだと実感する。


 最近は朝からなにやら声が聞こえていたからな。

 みんな無駄に早起きなんだから。


「朝はギョウザにしよう」

「ギョウザ?」

「うん」


 小麦粉は購入済みだ。

 小麦粉を水で練って丸めておく。


 少し置いておく間に具を作る。


 イノシシ肉を細かく刻んでおく。

 しかし細かすぎないようにするのがポイントらしい。

 ちょっと形が残ってるくらいのほうが食べ応えはある。


 それにネギ、タマネギ、タンポポ草、少量のショウガと塩を入れる。


 タネを混ぜる。


 小麦玉から一つ分をちぎって丸めたあと押しつぶして広げてギョウザの皮にする。

 そこにタネを適量乗せて、包んでいく。


 それからギョウザっぽい耳を作って、はい1個できた。


「なにこれ、面白い形」

「そうだな」


「ミーニャ、そうだ、まだ食べてないといいんだけどラニア呼んできて」

「はーい」


 家は近所だし大丈夫だろうたぶん。

 ミーニャを一人で行かせるのは若干不安だけど、日が昇った後だし治安はそこまで悪くない。

 1年以上前なら奴隷目的の誘拐などもあったけど、今はなくなった。


 この前のイノシシ戦で俺たちはレベルアップを3つした。

 今レベルいくつなのか忘れちゃったけど、その辺のザコよりは強いと思う。

 ミーニャだってそうだ。


 いろいろ考えているうちにどんどんギョウザを作っていく。


「よし、焼くぞ」


 鍋に水を入れて蒸しギョウザと焼きギョウザの中間くらいの仕上げにする。


「ギードさん、どうです?」

「なんだか昔食べた料理に少し似ている。あれは高級料理だったと思う」

「そういうご身分なんですか?」

「えっ、ああ、まぁ、昔のことだ」

「ほーん」


 ギードさんたちは貴族か何かなのだろう。

 エルフの貴族といえば超上流階級だ。

 なんでそんな人が最底辺のスラム街などに流れ着いたのか。


「ただいまぁ」

「おかえり」

「おじゃまします」


 ラニアがやってきた。

 朝から明るい青髪が美しい。

 笑顔もまぶしい。

 この笑顔が俺に向けたものだという事実に、胸がドキドキしてくる。


「どうしたのエド君?」

「いんや、なんでもない」

「うふふ」

「にゃぁ」


 二人ともかわいいから俺はお得だ。


「はい、ギョウザできました」

「なにこれ」

「面白い形してますね」


 みんなで地面に車座になる。


「ラファリエール様に感謝して、いただきます」

「「いただきまーす」」


 スプーンでギョウザをひょいっとすくって口に放り込む。

 ん~~。


 醤油はないので、タレは塩とオリーブオイルに香草を入れたものだけど、なかなかに美味しい。

 中から肉汁と肉の旨味と野菜のハーモニーがあふれ出てくる。


「美味しいぃ」

「美味しい、です」


 二人ともご満悦。

 向こう側ではギードさんとメルンさんもよろこんでいる。


 小麦粉があるだけで、いろいろできると思い出してよかった。

 小麦粉なんてパンかパスタにするくらいだと思っていたけど、ギョウザもできるのだ。


 今日は休憩も兼ねてお出かけはなしで、家でスプーン作りに集中しよう。

 ミーニャとラニアには籠作りをしてもらう。

 治療のお客さんがいないときにはメルンさんも籠を作っている。


 みんな集中しだすと部屋の中に作業の音だけがする。


 俺はこういう雰囲気も結構好きだ。

 職人というか手工業はこの世界では主力産業なので、これが世界を支えていると思うと、なんかファンタジーのロマンのような気分になってくる。


 やるかはともかく鍛冶作業とかにも憧れがある。


 さてお昼になった。


「んじゃお昼はスープにしよう。『すいとん』なんだ」

「すいとん?」

「うん」


 ミーニャが聞きなれない単語を復唱するがいまいちピンとこないようだった。


 塩とキノコと野菜の出汁のスープを作る。

 さらにやはり小麦粉と水を混ぜて丸めたものをちぎって一口サイズの団子にしてスープに入れていく。


「これがすいとんなの?」

「面白いですね」

「あぁ」


 スープに小麦粉のすいとんが投入されて具だくさんに見える。

 うちのスープはこの前から具だくさんだがその辺は気分の問題で。


「ふぅん」


 ミーニャが関心があるんだかないんだかわからない返事をする。


「「いただきます」」


 お昼を食べる。


「もちもちとして美味しいね」

「そうね。これがすいとんというんですね」


 もっちもっちとよく噛んですいとんを食べる二人。

 小麦粉を練っただけだけど、ちょうどいい茹で加減で美味しい。


 パンともパスタとも違う。

 ギョウザの皮に少し似ているがすいとんはそれ自体がメインの具だ。


「こういうのもいいね」


 ミーニャの素直な感想だった。

 豆以外の主食は俺たちにはわりと新鮮だ。


 この日、ギョウザとすいとんの小麦粉料理が俺たちの食卓に追加された。

 小麦粉を手に入れてからすぐにやるんだった。


 こうしてまた少し食生活が豊かになった。

 やったぜ。


 午後もスプーン作りだ。


 いかに少ない作業で綺麗な削り出しができるか、試行錯誤が続く。

 まだまだこの作業に関しては素人同然なので頑張っていきたい所存。


 材料の拾ってきた枝はまだまだある。


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