結局、日曜日の午後は、森探索をしてゴブリンを3匹仕留めた。
あとはサトイモ、ウスベニタケなどを少し確保して探索を終えた。
夜の料理は野草と干し肉多めのレパートリーで先週と同じ感じだろうか。
そうして月曜日。
朝ご飯を食べて、ラニアを連れてきてから、ドリドン雑貨店に向かった。
「ドリドンさん、どうですか?」
「あぁ、ジャムは少しだけ残っているがほぼ完売だな。高いが数は多くないから買う人がいればすぐ売れてしまうな」
「そうですか」
「少し残ってるが、清算していくかい? 売れるのは確実だし、今日でも問題ないよ」
「じゃあ、お願いします」
ということでノイチゴと完熟ブドウのジャムを清算する。
ノイチゴ 20個 5,000ダリル 金貨十枚
ブドウ 10個 6,000ダリル 金貨六枚
「えっと両方合わせて金貨十六枚だね」
「ありがとうございます」
へへぇ、と頭を下げて両手で金貨を受け取る。
「じゃあ俺とミーニャで金貨十枚、ラニアに金貨六枚でいいかな?」
「あっ、でも」
「いいのいいの、でははいどうぞ」
ラニアに金貨六枚を渡す。
俺たちもずいぶん稼ぐようになったものだ。
もっともジャムは季節もので臨時収入なので、これで生活するというのは難しい。
特に冬はジャムにできる果物とかも少ない。
あくまでボーナスであってこれは給料に換算しちゃだめだ。
「それじゃあ、ギルド行こうか」
「はい」
「魔石も溜まってきましたものね」
「うん」
いつぞやのスライムとかゴブリンの魔石は未換金のものがいくらかあった。
東門を通ってトライエ市内に入る。
ついこの前までは雑用のアルバイトをするために毎日のように市内を徘徊していたが、あれは今思えば徒労だった。
スラムの子にさせてくれる仕事なんて非常に安いかキツいかのどっちかと相場が決まっていた。
実質的に子供のお小遣い程度のもので、仕事とすら認識されているか怪しいところがあった。
道を歩いて様子を見ると、そういう子が井戸の近くで洗濯や、荷運びなどの雑用でこき使われているのも何度か目撃する。
もっと単価の高い仕事を斡旋してあげたい気持ちも皆無ではないけど、彼らには彼らの仕事があるし、押しつけがましいのも好みではない。
仕事の斡旋、それも安定しているものとなるとまだまだ俺なんかでは大して思いつかない。
高くて安定した仕事があるなら俺が紹介してほしいくらいだ。
冒険者ギルドに到着する。
いつものようにカウベルが鳴る。
なんだか懐かしい感じがするし安心する。
そうして受付嬢、まあいつも世話になっているしエルフのお姉さんのところに並ぶ。
並ぶといっても昼近くなので2、3人だ。
「はい、お待ちどおさまです。エルフ様」
エルフ様であるミーニャも少しは慣れてきたのか、頷いて返事をした。
「魔石の換金を」
「はいっ、すぐ処理いたします」
きびきびと事務処理をしてもらう。
こういう事務ってもう少し簡略化とか、ささっとできないのだろうか。
お役所仕事も大変だ。
そうして金貨一枚と銀貨を数枚いただいた。
ジャムが金貨なので感覚がおかしくなってしまいそうだが、これくらいなら銀貨が普通だ。
「ご利用、ありがとうございました」
「こちらこそ、ありがとう」
受付嬢のエルフのお姉さんにお礼を言って、横のいつもの売店に向かった。
「さて、今日の本題、防具を買おう。あと欲しければ服」
「やったっ」
「わかりました」
そうして陳列されている防具などを見て回る。
一応おさらい。
俺は雑なシャツと七分丈のズボン。
ミーニャは普通の膝丈のワンピースだ。色は茶色。これが一番安い。
そしてラニアは青と白のワンピースで、お貴族様のおさがりだ。
魔法付与物で攻撃魔法アップのエンチャントが掛かっている。
ただ防御アップではないので防具としては弱い。
生地からして違うので俺たちの中古の服よりは強い。
これはラニアの一張羅なので、森へ行くときにはほぼ着ている。
武器もそこそこ高いが、防具もかなりのお値段だ。
子供用は小さい分安いはずなのだが、実際ところはあまり違いはない。
生地や素材は少なく済むが、手間は全く同じなので、これはしょうがない。
異世界で主流の家内制手工業では加工賃が安くなる理由がない。
「まずはミーニャの服だな」
「にゃっ」
ミーニャが耳の先までピンと伸ばして、顔を赤くした。
「エドが選んでくれるの?」
「え、自分で好きなの選んでいいよ」
「そ、そっか、うん。わかった」
くそ高いドレスとかは最初から買わないだろうから大丈夫だろう。
なぜかある子供服コーナーをじろじろ見ている。
数はそれほど多くはないが、それなりのものが揃っているようだ。
すべて中古服のようで値段も高くはない。
「この辺は貴族様や商人のお子さんのおさがりが多いですね」
店員のお姉さんが説明してくれる。
なるほど、そういう流通ルートがあるのね。
「んにゃ、これにする!」
ミーニャが選んだのは薄緑の地に濃い緑のアクセントが入ったワンピースだ。
女の子はほとんどオールシーズン用のワンピースなのである。
色とかは割合いろいろある。
そして貧乏人は量産品の茶色一択なので、色がついているだけでも、十分いい服なのだ。
ミーニャがその辺で着替えて見せてくれる。
試着室とかいう便利なものはない。
いや、よく見ると向こうの隅のほうにある。
本人はまったく気にしていないからいいか。
この辺の感覚は当たり前だけど現代人とは全く異なる。
「うんうん、似合ってるよ」
「やったっ」
さて今度は本命の防具だ。