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43.大イノシシ


 休憩もしたし街から出る。

 城門を通ってそのまま森へ向かう。


 いつものお祈りをしてもらって、準備はOK。


 森探索だ。


 さっそくウスベニタケを一つ発見。

 この森には結構このキノコが生えているようで、見つけやすい気がする。


「そういえばウスベニタケは食べてしまってるけど」

「あっ」


 美味しいから気にしていなかった。


「そうそう、冒険者ギルドに持ち込むといくらかなって」

「そうだよね!」


 ミーニャも今気が付いたという顔をしている。

 比較的発見しやすいから安いかというと、ムラサキキノコは高いらしいという話を以前したと思う。

 あれの再来だ。


「もしかしたらウスベニタケも高いかもしれないね」

「うん」


 体をクネクネして嫌がるミーニャ。


「ふふっ」


 それを見てちょっと笑顔なラニア。


 うむ、どうしようか。


「また冒険者ギルドへ行くのは面倒だしな、うん」

「そうだよ、うん。食べてしまおう」

「ふふっ」


 ミーニャは食べる派らしい。

 ラニアはまだ笑ってる。


「なんだかちょっと今日は森の雰囲気が違うね」

「えっ、あぁ、うん」

「そうですね、心配です」


 いつもなら鳥の鳴き声とかはしている。

 まったくの無音になったりはしない。


 今日は妙に静かだ。


 そうして歩くこと10分くらい。


「ぶぅぶぅ、ぶぶぶぅ」


「おっ、おう」

「イノシシ……ですね、でかいです」

「はい、大きいですね」


 俺たちの目の前には大イノシシがお出ましだった。


「森の主、ではないけど」

「ゴブリンの比じゃないほど強いですね」


 はい鑑定。


【(名前無し)

 5歳 オス A型 メルリアイノシシ

 Cランク

 HP458/458

 MP98/98

 健康状態:A(普通)


 ステータス的には脳筋らしいが、Cランクか、Cランク。

 今までで最強かもしれない。

 メルンさんとギードさんならBランクだけれども。


 さてどうしたものか。


 少し後ずさって下がってみるが……。


 絶妙な距離をあけて近づいてくる。

 向こうもなかなか慎重だ。

 そして俺たちを明確に敵と認識している。


「エドぉ、お肉だよね」

「まあな、負けたら俺たちがお肉になりそうだけど」

「大丈夫、私のエドなら勝てるよ」

「そっ、そうか?」

「うん」


 よくわからないがミーニャに信用されてるらしい。

 ラニアのほうを見るとあきれているかと思ったら、笑っている。

 余裕というか、こちらも俺を信用しているらしい。


「そっか、じゃあ、やってみるか」

「うん」

「はい」


 そうして俺たちは剣をしっかり構える。

 彼女たちは杖だ。


 こういうときのために防具を強化したが、さっそく利用することになるとは。


「うぉおおおおおおお」


 俺は注目を集めるように声を上げつつ、突進する。


「ぶぅぶううう」


 向こうも対抗してくる。

 イノシシの牙と俺の剣が交差する。


「ぶぅぶぅ」


 あっさりと牙で剣ははじかれ、失敗に終わった。


 ミーニャが杖で加勢してくれるが、ぶぅぶぅの威圧に負けてしまう。


 再び俺が剣で攻撃するがかすり傷を与えただけだった。


「ぶぅぶうう」


 俺は牙の攻撃をもろに受けてはじき飛ばされる。


「うぉおおお」


 しかし幸いにも胸のブレストプレートに命中したため、牙が突き刺さることもなく、軽傷で済んだ。


「あっぶねぇ」


「精霊と妖精たちよ、我の声を聞き届けたまえ、燃え盛る炎よ――ファイア」


 ラニアの本気詠唱の入ったファイアが飛んでいく。


「ぶぅぶうううううう」


 火の玉がイノシシに命中、炎で焼かれていく。

 これはさすがにたまらないだろう。


 まだぎりぎり生きているように見える。

 炎が収まった頃合いで、俺が接近、剣でおもいきり突いた。


「ぶぅうぅううう」


 剣が深々と突き刺さった。

 さすがに血が出る。


「うぉおおおおおおおおお」


 俺はさらに突き刺すと、ついにイノシシは息絶えた。


 バターン。

 大きな音がして倒れていく。


「ふぅ、終わった……」


「お肉、やったエド。お肉ゲットだにゃ!」

「イノシシ、強かったです」


 ゴブリンよりもかなり強かった。

 これが群れで出てきたらひとたまりもなかった。


 イノシシは収納して持って帰る。


「よし、今日の探索はここまでにしよう」

「うん」

「はい」


 ぼちぼちの収穫で森を出る。

 帰りには幸い、エンカウントしなかった。


 そしてドリドン雑貨店に到着した。

 ここはスラム街の入り口なので、ついでに寄る。


「どうした。帰りにしては早いな」

「ああ、ちょっとイノシシと遭遇してな、倒してきた」

「持ってきてるか? それとも放置してきた?」

「いや、マジックバッグに入ってる」


 アイテムボックスのスキルは秘密なのでマジックバッグという道具ということで。

 さすがにアイテムボックスだとは思わないだろう、たぶん。


「そうか、うちで引き取ってもな。すまん、ギルドへ行ってくれ」

「またかよ。でもそうだと思ってたから大丈夫」

「まあな、デカいの解体できるほど余裕はない」

「そうだよね。んじゃあ、行ってくる、ありがとう」

「ああ、いってらっしゃい」


 ドリドンさんと手を振って別れる。しょうがない冒険者ギルドへ行こう。


 そそくさと城門を入って、街の大通りを通って冒険者ギルドへ向かう。

 俺たち自身は、大イノシシを倒して凱旋がいせんパレードのような気分だったけど、周りはただ眺めてくるだけだ。

 しっかり装備を固めた子供は珍しいからな。


 もちろん貴族や商人の子供が冒険者ごっこで本格的にやってる子も皆無ではない。

 そういう人が多いので、たぶん関わらないようにしているのだろう。


 下手に手を出して問題になると、親の首も怪しい。


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