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37.エッグバード


 土曜日。


 本日も朝食を済ませて俺とミーニャとラニアで、森を探索する。


 先に草原で今日、明日分ぐらいの葉っぱを採って、森に入った。


 森の入り口でいつもの祝福をミーニャにしてもらう。

 いつ見ても幻想的だけどこれで実際にステータスアップになるので、かなりお得だ。

 これができる人はかなり貴重だと思われる。

 ミーニャに感謝をしつつ先へ進む。


「こちらエド。森探索を始めます。ミーニャ隊員、ラニア隊員、いいかな?」

「ミーニャ隊員、了解」

「ラニア隊員、了解、です」


 森へ入っていく。

 途中、フキを採取する。

 フキは生えまくっているので、別に探すまでもない。

 煮ものにすると美味しい。アク抜きさえすれば、一度に煮てしまって、ちょっとずつ毎日食べることができるのもいい。


 そういえば昨日採れたウスベニタケはスープに入れたけれど、美味しかった。

 キノコごとにその味は違うが、それを言語で表すのは難しい。


 今日も昨日と同じくらいまで森に潜ろう。


 スプーン作りなどで使う木の枝もいくつか確保した。


「あっ」

「コケッ」


 鳥だ。地上を走る鳥。緑青ろくしょうと茶色のような模様の体長40センチぐらいの鳥。

 心当たりがある。


 か、鑑定。


【(名前無し)

 2歳 メス C型 エッグバード

 Eランク

 HP192/198

 MP118/159

 健康状態:A(普通)


 おお、モンスター表示だ。

 そして「エッグバード」ときた。

 こいつはこの世界の知識として知っている。

 ニワトリとは別に、モンスターとして卵を毎日産む習性のある益鳥、それがエッグバードだった。

 ただしこいつは家畜ではなく野生として森などにんでいる。そして数があまりいないため、レアモンスター扱いを受けている。


「絶対、逃がさない。捕まえる。生け捕りね」

「は、はいにゃ」

「わかったわ」


 俺、ミーニャ、ラニアが少し間隔をあけて、エッグバードを囲う。

 ちょっとずつ、範囲を狭めていく。


 こいつはメスだ。モンスター表示さまさまで、雌雄の判別はありがたい。

 さあよいこちゃん、こっちおいで。


「コッココ」


「おいで~。一緒に暮らそう」

「鳥さん、お肉」

「鳥さん、来るですよ」


「いや、ミーニャ、肉にはしないぞ」

「そうなの?」

「ああ」


 ミーニャが少ししょんぼりしているけど、いいんだ。

 肉は食ったら終わりだけど、卵なら餌を与えて、産んだら産んだぶんだけ、食べられる。

 それに肉の伝手つては他にあるけど、卵はない。


 城壁内でもニワトリは飼育されているから、卵の供給はあるものの、やはり野菜以上に需要に追いついていなくて、かなり高い。


 スラムの子には縁がないくらい、卵は高い。


 それからエッグバードという名前は伊達でなく、ニワトリの卵よりも美味しいらしい。

 金のなる木でもあるけど、どちらかというと自分用にしたい。


「ちちちち」


「コケ」


「いまだっ」

「おりゃあああ」

「はいですううう」


 みんなでエッグバードを囲って捕まえる。

 逃げそうになったけど、なんとか取り押さえた。


「よし、このまま、しゅ、収納」


 生き物が生きたまま入るのはエビで確認済みだ。

 どんな世界が中に広がっているかは人間を入れないとわからないけど、エッグバードには犠牲になってもらおう。


「やったあああ」

「はい、やったね。でも、お肉……」

「やりましたね」


 さてミーニャの誤解を解かないと。


「ミーニャ、卵ってわかるよな?」

「うん。カエルの卵とか、カマキリの卵とか」

「そうそう。それで鳥の卵は食べると美味しい」

「美味しい……」

「そうだ。肉にしちゃわないで、飼うんだ。それで卵を産ませる」

「産ませる、ああ、なるほどぉ」


 理解したようで、ぱっと一転、明るい顔になった。かわいい。

 エッグバードはほぼ毎日卵を産む。

 モンスターなので鳥よりも丈夫だという話も聞いた。ただ卵を産むくせに繁殖させるのが非常に難しく、家畜化まではいっていないとか。


「たまご、たまごぉ、たまごおお」

「そうだ、そうだ」


 ミーニャもご機嫌だ。

 さらに探検を進める。


「あ、キノコ。ウスベニタケ」


 ミーニャが発見する。

 うん、鑑定、確かにウスベニタケだ。ナイス、ミーニャ。

 回収っと。


 これで出汁も取れるから、卵料理を考えたい。

 明日の朝ご飯にしようかな。


 この後、ゴブリン3匹と戦闘になった。

 今回は余裕だった。ケガもしない。


 家に戻ってくる。


「ただいま~」


 家の中に入り扉を閉めたら、エッグバードを取り出す。


「コココッ」


「メルンさん、ギードさん、エッグバードです」

「おおお、これが噂に聞くエッグバードかい」


 家の中で飼うことになった。

 台所の土間を中心に、座敷犬ならぬ、座敷鳥。

 庭に小屋を建てるのは無理だし、柵などで囲っても、盗難の可能性がある。

 スラムはさすがに鳥の放し飼いができるほど治安は良くない。


 採ってきた普通の草を出して、一角に巣っぽいものを作ってやったら、よろこんで座っていた。


「こうやっていると、かわいいね」

「ああ」


「ココッコケコ」


「ロックバードだっけ?」

「エッグバードです」

「そっか、エッグバードね」


 そうですよ、ミーニャちゃん。


 さて無事に卵を産んでくれるでしょうか、結果は明日待ちになりそうだ。

 豆より美味しい夕ご飯を食べて、布団を並べて寝る。


 おやすみなさい。


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