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第8話 〈リンデンの森〉~突然美少女魔族と出会ったので当然エッチします~

 あらかじめ買っていた〈リンデンの森〉の地図と、ギルドで得ていた情報から、俺はスムーズにがおがおの生息する地域の近くまで移動する事ができた。

 この間はレミィたんと競争するだけですっかりへとへとになっていた俺の肉体だが、レミィたんのステータスをコピーして強化された今の肉体は、複雑に凸凹とした森の地形を小一時間移動し続けても、まったく疲労感を感じない。これがステータスの力かと、異世界の仕組みに驚かされる。

 足元は岩や土などが枯葉に覆われており、移動するにつれてかさかさという足音が静かな森に響き渡る。あちこちに木の根が道の邪魔をしており、それをくぐったり飛び越えたりしながら移動していると、やがてがおがおの生息域にいよいよ入ったらしく、気配を感じた。

 トミヒコの知識によれば、気配を感じる能力はステータスでいうと敏捷に分類されるらしい。俺の今の敏捷の数値は58。一般人の数値が1~5程度である事を鑑みると、ちょっとした化け物といっていいスペックであり、俺の肉体は何十メートルも先のがおがおの移動する音を、耳元で聞かされているように感じとる事が出来た。

 がおがおは群れを作らない生き物らしく、森の中では単独行動をするらしい。

 だがその危険度はC級とかなり高く、そんじょそこらの冒険者は、その俊敏な動きから繰り出される牙の一撃、あるいは特殊なバッドステータスの篭もったがおがおの雄叫びで、けちょんけちょんにやられてしまうらしい。

 俺はそこで、ショップで購入した戦闘用ぬいぐるみのうち一体を取り出し、がおがおの方へと先行して浮遊させ向かわせる。

 このぬいぐるみの持つ効果は、〈デコイ〉である。

 敵の注意を優先して引き、敵の攻撃はまずこのぬいぐるみに向かうように出来ている。

 俺はこのぬいぐるみを30メートルほど先に浮かせた状態で、がおがおと接敵する。

 がおがおは、コミカルな3頭身くらいの狼人間といった感じのモンスターであり、毛色は茶色を基調にしたものに白のラインが何本か要所に入っていて、耳が丸っこく伸びており、顔は可愛らしいつぶらな瞳をしているが、口元は獰猛な牙が光っているのがどこか不気味だ。

 初手、がおがおは案の定高らかに雄叫びをあげるが、その対象はぬいぐるみであり、耳の無いぬいぐるみに雄叫びは不発に終わる。俺は距離が離れていたため、耳を塞ぐだけで雄叫びをやりすごす事ができた。

 がおがおは次の一手として、ぬいぐるみに向かって突進するが、俺はぬいぐるみをぷかぷかと宙高く浮かせてその攻撃を回避、その隙に静かに背後を取るように突進し、取り出した色欲の魔剣で斬りつける。

 がおがおは素早い動きで回避しようとするが、俺の肉体のスペックが高すぎるせいか、その動きはまるでスローモーションのように遅く見えてしまい、俺はすぐさま剣の軌道を変えて追撃し、がおがおをそのまま一刀両断してしまう。

「え、よわ……」

 がおがおの肉体は光となって消えて、後に残ったのは〈がおがおの魔石〉だけだった。この世界では、モンスターと動物の違いとして、モンスターは死んだら魔石とドロップアイテムだけになってしまうというのがあるらしい。ゲームらしい都合のいい設定だななんて思うが、俺はこの世界で生きていくわけなので、ありがたく魔石を回収させてもらう。

 そのまま俺はがおがおの生息域で、依頼の頭数を討伐するまで、がおがお狩りを行った。

 〈デコイ〉のぬいぐるみ以外にも試したいぬいぐるみがいくつかあったので、わざとがおがおの牙を受けてみてから〈回復〉のぬいぐるみを使ってみたりとか――肉体のスペックが高すぎてそもそも牙があまり通らなかったが、わずかな傷はぬいぐるみの治癒で完璧に癒えた――〈煙幕〉のぬいぐるみを使ってがおがおを混乱させて、この煙は俺だけは中の様子を見る事ができるようになっているため、背後からばっさりとがおがおを斬りつけて、あっさり討伐したりと、ちょっとした戦闘の練習会みたいな事を一通り済ませた。

 そうこうしているうちにがおがおの魔石が10個溜まり、俺は今日の狩りを終了する事にする。

 帰宅の道につき、〈リンデンの森〉を通る街道に出たところで、少し離れたところから少女の悲鳴が聞こえた。

 ゲームであれば当然助けに行くところだが、ここは現実となってしまった異世界であり、俺の命は一つだけ。助けに行くかは悩ましいところだ。

 だが忘れてはいけない事が一つある。

 それは、俺は異世界でエッチをする事を至上命題に置いており、女の子を助けるなんておいしすぎるイベントを、わざわざ見逃すなんて選択肢は初めから無い事だ。

 俺はデコイのぬいぐるみを先行して飛ばし、自らも全力で走って女の子の声がした方に向かう。

 次第に見えてきたのは、横転した馬車と、それを襲う人型の魔族だった。

 その姿は羊のように丸まった角が生えている、地球でいうバフォメットに似た魔族であり、だがその頭部や身体は華奢な少女の物になっており、真っ黒なビジネススーツのような恰好に身を包んでいる。

 俺はトミヒコの記憶を検索し、その魔族が〈メェメット〉という種族である事を把握する。

 羊のような角を持つ女の子の頭部と、スーツを着た少女の身体を持つ種族であり、その武器は闇魔法と呪術である魔法使いタイプの魔族だ。

 ちなみに、魔族というのは、モンスターとは違い、人間とか天使とかエルフと同じ、人型の種族の一つである。魔族はかなり多様なたくさんの種族が存在するが、どれも他の種族と交配可能であり、交配の結果生まれるのはハーフではなく魔族であるが、要するにエッチする事ができるのはここでは重要な点だ。

 一つ懸念があるとしたら、〈メェメット〉は危険度B級に分類される非常に強力な魔法使いであり、うっかりすると俺が殺されてしまうところだが、俺はせっかくなので、この女の子型魔族、メェメットとエッチをする事に決める。

 〈デコイ〉持ちのぬいぐるみが〈メェメット〉に接敵したところで、〈メェメット〉は闇弾を数発ぬいぐるみに向けて発射し、かなりの速度で発された闇弾たちを、俺が圧倒的な動体視力と反射神経でぬいぐるみを操作しすべて回避する。

 俺がここで取り出したのは、こんな事もあろうかと高い金を払って購入した、〈魅了〉の力を持つぬいぐるみである。

 デコイに集中し攻撃を続ける〈メェメット〉の側面から〈魅了〉のぬいぐるみを飛ばし、俺がある程度近くまで接近したタイミングで、妖しげな桃色の光が〈魅了〉のぬいぐるみから発される。

 その〈メェメット〉は美少女といっていい可愛らしい顔をした少女だったが、〈魅了〉の光を浴びてうっとりと頬を赤らめ、すぐ近くにいる俺に向かって発情した眼差しを向け、目をギラギラとさせて襲い掛かってくる。

 俺はこのままだと危険があるため、ここで〈束縛〉の力を持つぬいぐるみを取り出し、ぐるぐるとした黒い〈束縛〉の光をぬいぐるみから〈メェメット〉に飛ばし、俺に気を取られた〈メェメット〉はあっさりその手足を〈束縛〉される。

 それが〈メェメット〉の性癖に突き刺さってしまったのか、メェメットは大変発情した様子ではぁはぁしながら、ゆっくりと近づいていく俺の股間をガン見してくる。

 と、油断していた俺に、そこで〈メェメット〉は呪術を起動した。

 あっさり呪いにかかってしまった俺は、なんだか急に〈メェメット〉を襲いたくて襲いたくて我慢できなくなってしまう。それは鑑定によれば〈性欲10倍〉の呪いであるが、もうそんな事すらどうでも良くなってしまった俺は、ばっちこい状態の〈メェメット〉の衣服を〈色欲の魔剣〉で切り裂き、裸状態に近くなるまでひん剥いて、そのまま舌でメェメットの秘所を愛撫し――

 ぱこぱこぱこぱこ……

 横転した馬車に乗っているはずの女の子の事も忘れて〈メェメット〉との野外束縛えっちを楽しんだ俺は、「ふぅ……」という賢者モードに至り、そこで〈メェメット〉の束縛が解けてしまう。

 メェメットも性的に満足していたらしく、そのまま恥ずかしそうに宙を飛んで逃げ出しながら、最後にウインクをパチリと決めて俺の胸にほのかな恋心を残していったのだった。

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