「レミィたんね、孤児院の出なんだ。だから親とかいなくってさ、毎日毎日、寂しいな、お父さんやお母さんがレミィたんにもいたらなって、そんな事ばっかり考えてたんだ」
レミィたんの話は、意外にも本当に重いトーンで始まった。
俺は背中に乗るレミィたんの頭の重み、身体に巻き付くレミィたんの肉体の柔らかさを感じながら、レミィたんの"病み"トークを聞き続ける。
「孤児院は、辛い事が多くってさ。いじめっ子も多いし、院長のシスターはすっごく厳しくって、何かあるとすぐレミィたんに暴力をふるうようなダメシスターでさ。レミィたん、怖い事だらけで、毎日なんでも怖がってるような、そんな今からは想像もつかない、弱い女の子だったんだ」
レミィたんは、見かけによらず悲惨な子供時代を過ごしていたらしい。それがどうして今ではあんなフリーダムガールに進化したのか気になるところではあるが、それはきっとこの後語られるのだろう。
「ある日、孤児院を卒業する事が決まったんだ。レミィたんを拾ってくれたのは裕福な商人のおじさんでさ。レミィたんは、この人がレミィたんのパパになってくれるんだって、期待と不安が半分半分で、おじさんの家についていったんだ。おじさんはレミィたんにすっごく優しくて、なんでも欲しいものを買ってくれて、レミィたんは、ああ、これが"パパ"なんだ、"パパ"ってこんなに優しいんだって、すごーくテンションが上がっていたんだよね。でも、幸せは長く続かなかった」
レミィたんの話を聞いていて思うのは、レミィたんにとって「パパ」というのが特別な位置を占める存在なんだってことだ。幼い頃から「パパ」の欠落した人生を歩んできたレミィたんは、「パパ」を深層心理で渇望してやまないのかなって、そんな事を思ったのだった。
「レミィの新しいパパは、当時12歳だったレミィの身体を、なんだかじろじろと嫌らしい目で見ている事には、なんとなく気づいてた。でも、レミィたんは、これがパパの愛情というやつなのかなって自分を誤魔化して、パパの視線を受け入れていたんだよね。でもある夜、レミィたんはパパに襲われて、全身をまさぐるように触られて、なんかエッチな薬も塗られて、レミィたんは正常な心理状態じゃいられなくなって、そのままパパとエッチしちゃった」
「えっ」
それは衝撃的なエピソードだった。
レミィたんの初めてのエッチが、そんな悲惨なものだったなんて。
「レミィたんは、衝撃を受けました。パパが娘とエッチするなんて、聞いたこともありませんでした。それ以前に、孤児院で大した教育を受けていなかったレミィたんは、自分がされているのがエッチという行為なんだって事もろくに知らず、ただただ理解できない感覚と感触、"パパ"の醜い裸の肉体に、恐怖し、嫌悪し、全身がバラバラになりそうな苦痛を感じました。レミィたんは、薬の影響でたしかに自分の身体が未知の快楽を感じている事も確かに気づいていました。でもそれは上から押しつぶすように無理やり与えられた快楽で、レミィたんにはそれが受け入れ難く、逃げ出したい気持ちでいっぱいになったのに逃げられず、苦しい、苦しい、気持ち悪いって、孤児院で敬うように言われた神様を恨んで、神様助けてって、そんな事ばかり考えて、でも神様は助けてくれなくて、結局レミィたんは何度も"パパ"が出した白い液体を身体で受け止めてしまいました」
「……」
俺は想像以上に重いレミィたんの初体験の話に、もうなんといっていいのか分からなくなってしまった。
俺はこんな子に、気軽な気持ちでエッチがしたいなんてお願いしてしまったのか、と罪の意識のようなものを強く感じた。
「レミィたんは、結局そのパパの下から逃げ出して、冒険者という仕事で食っていくことにしました。幸いレミィたんには冒険者の才能があったので、レミィたんはみるみるうちに強くなっていきます。でもレミィたんは、何人もの男に言い寄られても、パパとの初体験を思い出して気持ち悪くなっちゃって、本当は甘えられる人が欲しくてたまらないのに、そういう男の人を全員拒絶しちゃいました。でも、いつまでもそんなんじゃいけないと思ったレミィたんは、冒険者ギルドマスターのおじいさんの教えを受けて、明るくハッピーに生きていくことを決めます。それはすごくレミィたんの身体と心になじむ生き方で、初めて人生が楽しいと思えて、レミィたんは日々をエンジョイするという事を覚えました。それでも時々"病み"モードがやってくるけど、レミィたんは今では概ね楽しく暮らしています。めでたしめでたし」
レミィたんはそこまで話すと、俺の身体にぎゅっと抱き着いて、そのままごろりと俺の身体を回転させて仰向けにします。
改めてレミィたんは俺の身体にのしかかり、見つめあう俺とレミィたん。レミィたんの目にはいつしか涙が浮かび、その涙を見ていると、俺は溢れんばかりに高まっていた性欲が、自然と冷めていくのを感じた。
「トミヒコたん、どうかな? レミィたんの汚れた話を聞いて、ひいちゃったかな? トミヒコたんは、こんなレミィたんでも、大事にしたいって思ってくれるかな? そんなわけないよね、こんな気持ち悪くて暗い女、好きになるわけないよね……そう、レミィたんは、とっても汚くて、とっても汚れてて、とっても暗くて、臭くて、気持ち悪くて、もう終わってる人間で……」
レミィたんは、何か押してはいけないスイッチが入ってしまったかのように、自らを貶めるような発言を繰り返す。
その様はあまりにも痛々しくて、俺はレミィたんを見ていられなくなってしまいそうになる。
でも、ここで目を反らしたら、何か大切なものを失ってしまうって、そう感じた。
だから、俺はレミィたんの泣き顔をまっすぐに見つめて、レミィたんにぎゅっと抱き着いて――溢れる気持ちをぶつけるように、レミィたんにキスをした。
「……っ!?」
レミィたんが目を見開いて驚く。
唇と唇が触れ合うだけのキスは、しかしレミィたんが拒絶しなかった事で長く続き、俺は1分以上もの間、レミィたんと溶けあうようなキスをし続けた。
「……ぷはぁ! はぁ、はぁ……トミヒコたん、どうして……どうしてレミィたんにキスなんてしちゃうの? レミィたんは汚いから、トミヒコたんみたいないい子がそんな事しちゃダメだよ……」
「レミィたんは汚くなんてない!」
俺は気づけばレミィたんの事をぎゅっと強く強く抱きしめて、そんな言葉を叫んでいた。
「レミィたん、俺はレミィたんの事が好きだ! レミィたんに過去何があったとしても、そんなの関係ない! 今のレミィたんの明るいところ、暗いところ、全部全部合わせて、まるまる全部が、好きなんだ!」
「……っ!!」
「レミィたんは綺麗だ! レミィたんと話してるだけで、レミィたんの溢れんばかりの輝きが伝わってくる! レミィたんは光みたいな女の子だ! 明るくて、可愛くて、とっても素敵だ! だからレミィたん、レミィたんの事大事にするから! 俺と付き合ってくれ、レミィたん! 俺がキミの本当の"パパ"になってみせる!」
それらの言葉は、いったい俺なんかのどこから出てきたのか、次々と押し寄せるように、自然と神様に導かれるようにして、俺の魂から発された。
その魂の叫びは、確かにレミィたんに通じたらしく――
「……うあ……うあ……うああああああああああああ……!」
レミィたんは、ただ、泣いた。
「うあ……! うあ……! うああああああああああああああああああ……!」
絶叫するように、絶唱するように泣いたレミィたんの叫びは、俺の魂まで震えさせるような感動とともに、俺の魂にレミィたんという存在を刻み込んだ。
「うああ! うああああ! うあああああああああああああああああああ……!」
俺はそんなレミィたんを、ぎゅっと抱きしめて、ただレミィたんを愛しているんだという思いをレミィたんに伝え続ける。
それは不器用な愛で、童貞の愛で、モテない男の愛に過ぎないが……
それでも、その愛が、レミィたんの心を固める氷を、いつしか融かしてくれると信じて――
*****
「はぁ、恥ずかしいところ見せちゃった! でもトミヒコたん、すごいね! レミィたん、トミヒコたんの事、本当に大好きになっちゃった! だからトミヒコたん、今ならレミィたん、トミヒコたんでエッチの思い出を上書きしてもいいかなって、トミヒコたんとシてもいいかなって、そんな事を思っちゃってるんだけど……トミヒコたんは、嫌じゃないかな……?」
「嫌じゃ、ないです! 俺もレミィたんとエッチしたい! 俺もなんかレミィたんの事を知って、今まで以上にすっごくレミィたんの事が好きになってるんだ!」
「トミヒコたん……」
「レミィたん……」
俺はレミィたんと見つめあい、キスをする。
そのまま一枚一枚、レミィたんの衣服を脱がしていき、自分自身も着ていた服を脱いでいく。
「トミヒコたん…!」
「レミィたん……!」
次第に二人の情欲は盛り上がり、俺はレミィたんの全身を愛撫して、レミィたんも俺の事を喜ばせようといろいろな事をしてくれて、そうして準備のできた俺たちは、やがてついに、ついに、一つになって――
パコパコパコパコ……
気づけば寝てしまっていたようだ。
目覚めた俺の横には、俺の肩に頭をのせて眠る、レミィたんの姿があった。
そうか……
俺はついに、童貞を卒業してしまったのか……
その事実は、あまりにも強い感慨を持って俺を深く感じ入らせた。
エッチ、気持ちよかったな……でもこのエッチが気持ちよかったのは、レミィたんを心から愛して、そしてレミィたんが俺のことを心から愛してくれていたからだって、そんな風に思えた。
であるならば、俺はこのレミィたんを、これからも大切にしていこう。
そう思っていたのだが……
「はにゃにゃー、良く寝たぁ! あれ、トミヒコたんおはよー! 昨日は何してたんだっけ?」
レミィたんは、驚くべき事に、昨日の記憶を一切忘却していたのだった!
「レミィたん"病み"モードの事は忘れるようにしてるからね! もしかしたら、昨日はなんかあったのかな? まあいいよね、今日からまた元気で生きていけば!」
俺は、心を通い合わせたはずのレミィたんがあっさり昨日の事を忘れてしまったという事実に耐える事ができず、静かにレミィたんの元から逃げ出し、そのまま宿に帰って1日ふて寝したのだった――
====================
トミヒコは、レミィと、エッチした!
レミィの能力を、コピーした!
トミヒコは、心の傷、を負った!
====================