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第4話 レミィたんとデート~なんでも言う事聞いてあげる!~

「はにゃにゃぁ! ケーキ美味しい! おごってくれてありがとう、トミヒコ! 大好きだよ!」

 童貞がレミィたんのような絶世の美少女に大好きなんて言われてしまったものだから、俺は大層デレデレとしながらレミィたんがショートケーキを口に運ぶのを満面の笑みで見守ってしまう。

「れ、レミィちゃんが喜んでくれて良かったよ。いっぱい食べてね」

「うん! やっぱこの店のケーキ最高だなぁ! おかわりしよー、店員さーん、ショートケーキもう一つ!」

 ここは平民街の一角に存在する純喫茶の店で、朝ご飯を食べていた俺もチョコレートケーキをオーダー。二人でケーキを食べながら、「こ、これはひょっとするとデートなのでは!?」なんてドキドキとしてしまっていたが、ショートケーキの追加オーダーに、財布の痛手を思い起こしてしまい、若干頭が痛い。なんで俺は借金取りにきてお金を失っているんだ?

 店の中は暗めの照明に茶色の木材を基調にしたインテリアが映えており、どこかムーディーな雰囲気が漂っている。あちこちに半分個室のような仕切りが設けられており、いまいる席も、隣の席は見えないようになっていた。

 レミィたんは運ばれてきた二つ目のショートケーキもパクパクと食べてあっという間に完食する。

「はにゃぁ、落ち着いたー! やっぱ朝ご飯はこの店のケーキに限るぅ!」

「レミィちゃん、今更だけど、もうちょっと栄養のバランスを考えた食事をとった方がいいんじゃ……」

「はにゃ? 食べたいものを食べたいだけ食べるのが、一番健康にいいんだよ? そんな事よりこの後どこいく? レミィたん今日は1日遊ぶって決めてるから、トミヒコと一緒に動物園でも行きたいなー」

 そ、それはもう、完全にデートじゃないか! と興奮してしまうのが童貞の悲しいところだが、今の俺はこの少女とエッチがしたくてここに来ているという初心を思い出し、俺はいったん深呼吸する。

「れ、レミィちゃん、あの、実はお願いがあって……」

「ほらほら、行くよトミヒコたん! はんにゃりふんわり、リンデン動物園にゴー!」

 俺が勇気を出してエッチの話を切り出そうとするも、まったく人の話を聞いていないフリーダムガール、レミィたんはまだチョコレートケーキを食べ終えたばかりで珈琲を飲み終えていない俺と腕を組むように立ち上がらせると、そのまま店の外に直行しようとする。「お、お客様、お会計を済ませていただきませんと!」

 店員のメイド服を着た女の子が、慌てた様子でそんな俺たちに話しかけてくるが……

「はにゃにゃ~、はにゃにゃにゃ~、動物園♪ るんるんるんるん動物園♪ はにゃりんぱっ♪」

 とご機嫌で歌いながら店の入り口を通過するレミィたんを止める事ができず……

「こ、これ、お代です! おつりはいりません!」

 俺は慌てて財布から1000イェン札を2枚取り出して店員さんのいるカウンターに押し付けると、そのままレミィたんの勢いに飲み込まれるようにして店を出て、俺は動物園のある首都リンデンの自然区と呼ばれる地区にまで連行されていくのだった。

 動物園に入園料を払うと――これも当然のように俺がおごらされたが、レミィたんの笑顔を見ているとおごってよかったな、なんて思ってしまうのが絶世の美少女の恐ろしいところだなと思った――俺はレミィたんに手を引かれながら、動物たちの暮らす檻があちこちに建ち並んでいる広場のようなところを歩いていく。

「うわぁ! 竜馬さんだ! ねぇねぇトミヒコ、レミィたん竜馬さんに乗りたいな! あそこで竜馬体験やってるみたいだから、レミィたんが乗れるようにお願いしてきて~?」

 動物園にいる動物は、普通に現代日本の動物園にもいるような、猫犬猿、レッサーパンダやオオカミ、ライオンやキリンなどといった面々の他に、このファンタジー世界ならではの独特の動物も存在しているようだった。

 今目の前の小牧場のような所にいる竜馬なる生き物――歴史上の人物しか思い起こさない名前だが、れっきとした動物であるらしい――も、その一つであるようだ。

 馬のようなシルエットながら、そのその外見は竜種の顔に鱗のある胴体、頑丈そうな足と、この世界独特の生き物であるこの竜馬、なにやらプライドの高そうな顔でレミィたんの事を「ふん……」とでも言いたげに睥睨している。

 俺は竜馬体験なるアトラクションに追加で1000イェンを支払わされ、レミィたんは「はにゃー! 竜馬さんに乗って英雄ごっこだー!」と大喜びで竜馬さんに向かっていく。

 レミィたんは元気よくその超身体能力でジャンプして竜馬さんに飛び乗ると、鞍に跨って「どうどうどうどうー!」なんて言いながら手綱をつかんで竜馬さんを走らせる。

「はいよー! ダッシュダッシュダッシュだぁ!」

 急加速していく竜馬さんで狭い小牧場をぐるぐると超スピードで回転していくレミィたんは、「くぅっ、このフィールドはレミィたんには狭すぎる! レミィたん、外の世界に出ます!」なんて叫びながら小牧場を出ると、慌てて避ける一般客の事も顧みず、ぐいぐいとどこか遠くまで走り去ってしまって、見えなくなってしまった。

「あ、あのーお客様! 困ります! 竜馬さんは小牧場から出してはいけません! すぐに連れ戻してきてください!」

 俺は慌ててレミィたんを追いかけ、なんとか見つけたレミィたんに正気を取り戻してもらおうと叫びかけるも、「ふぅうぅ! サイコー! レミィたんは風なのだぁ! はにゃにゃにゃー!」と猛スピードで暴走するレミィたんを止める事は出来ず、結局レミィたんが満足するまでその竜馬がストップする事はなかった。レミィたんの超運動神経のおかげか、けが人は奇跡的にいなかったが、あとで竜馬体験の職員さんにしこたま怒られて、罰金として1万イェンを取られた。この罰金まで俺が支払う事になるのは流石に理不尽すぎると思ったが、「はにゃぁ、楽しかったぁー! ありがとね、トミヒコ! 大好きだよ!」なんて超絶美少女フェイスでぺかーっっと笑われた日には、「生きてて良かった」とまで一瞬にして思わされてしまうのだから、一流エロゲのメインヒロインというのは恐ろしい存在である。

 結局俺たちはその後も動物園の各所で他の来園客や職員の皆様に迷惑をかけまくりながら、一通り動物園という場所をかつてない方法で満喫しきったのだった。

「次は知的に頭を使いたいなー。最近レミィたん騎士棋にハマっててぇ、レミィたんの家に盤があるから、そこで勝負しようよ!」

「騎士棋?」

「騎士たちを操作して、盤上で戦うボードゲームだよ! ルールはシンプルだけど、戦略はすごく深くて、おっもしろいんだから! もしレミィたんが勝ったら、借金半分にしてね!」

 その有り得ない提案に、

「……いやいやいやいや、そんな事できるわけ……」

 と慌てて全否定しにかかるが……

「もしトミヒコたんが勝ったら、レミィたんがなんでも言う事聞いてあげる!」

 という圧倒的誘惑を前に、言葉が止まってしまう。

「な、なんでもって……本当になんでもいいの?」

「レミィたんの出来ることなら、なんでもしてあげるよ!」

「……そ、その、エッチな事とかでも?」

「えートミヒコたんレミィたんとエッチな事したかったんだー! トミヒコたんのえっちすけっちはにゃにゃっちー! あははーうけるー」

 童貞ゆえに、女の子にエッチな事の話をするというのは非常にハードルが高く、かなり勇気を出して話を切り出したのだが、意外にも軽すぎる反応が帰ってきて、拍子抜けしてしまった。

 レミィたんのような女の子にとって、エッチというのはそれほど重すぎない事なのだろうか? 女心が分からない……

「よーし、じゃあ勝負、勝負だよぉ! まずはレミィたんの家までどっちが早く帰れるか競争だー!」

 突然走りだしたレミィたんを慌てて追いかけて走り出した俺は、身体能力が高すぎるレミィたんを前に息をぜぇぜぇ言わせながら競争には大敗を喫する事になる。

「競争はレミィたんがはにゃっと勝ったから、騎士棋の先行ははにゃにゃっとレミィたんが貰うね!」

 レミィたんの自宅のリビングに腰を下ろした俺は、まだルールも説明してもらってないのにゲームを開始しようとするレミィたんを前に、これ負けたら借金自腹する事になるのかなと戦々恐々としながら、騎士棋の良く分からない盤面を眺めるのだった。

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