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第3話 レミィたんとの出会い~レミィたんぱふぱふ~

 首都リンデンの貧民街の外れに、その家はあった。

 よく言えば歴史ある、悪く言えばボロボロな感じのその一軒家は、幽霊屋敷とでも呼べそうなほど雰囲気ある洋館で、広さだけなら一級品と言えそうだが、どう見ても内部は手入れされておらず、人が住むには長い年月を要しそうな感じだった。

 ここが、こここそが、俺が今求めてやまないレミィたんの住むお屋敷である。

 場合によっては俺とレミィたんの愛の巣になる可能性だってある場所であり、俺は期待と緊張を持って、ゆっくりとその庭へと通じる門の扉を開ける。余談だがインターフォンは壊れていて使えなかった上に、門の扉は開けたら取れてしまいこれも壊れたので、とりあえず近くに扉を立てかけておいた。

「もしもーし! レミィ・パンナコッタさん、いますかー?」

 時刻はまだ早朝といっていい時間。寝ている可能性もあるなと思いながら、俺は庭から屋敷の中に向かって大声を上げる。

 扉の前まで辿り着いてもうんともすんとも言わなかったので、俺はその扉をガンガンとノックする。

「もしもーし! レミィさん! いないんですかー?」

「はにゃ? どしたのー?」

 と、ついに中から声がした。

 その声は実に可愛らしいふわふわした萌え声で、声を聴いただけで俺の興奮は高まり、恋心すら感じてしまう。これが名作エロゲのメインヒロインの力というものか。

「要件があるので、扉を開けてください」

「はにゃにゃ、ちょい待ちー」

 パタパタパタ、と中から足音が聞こえ、扉の前まで足音が辿り着くと、一切の迷いを感じさせないスピードでバーンと扉が両開きに開き、目の前にいた俺は慌てて後ろにジャンプして扉を避ける事になった。

「はにゃっほー! 今日もレミィの世界は平和でいっぱい! あなたの世界は平和かな? レミィたんだよー!」

 自分でレミィたんっていうんかいな、と思わされるセリフを叫びながら、扉の中から飛び出すようにジャンプしながら現れたのは、眩いほどに可愛らしい絶世の美少女とでもいうべき可憐な女の子だった。

 明るいライムグリーンの髪をふわふわとウェーブさせたミディアムヘア、その髪に囲まれた顔の輪郭はあり得ないほどに小さく、瞳はオレンジ色の可愛い猫のような目が太陽のように明るく輝く。

 その一方で身につけたファッションは、現代日本でいうと地雷系少女、とでも表現できそうな甘ロリ系のファッションで、黒いレースに彩られたピンクのブラウスからは元気よく大きな胸が張り出しており、その下の黒のひらひらしたミニスカートからは、エロすぎるふとももが惜しげもなく晒されている。ふとももには魔法使いの杖が括りつけられており、反対側の腰には一振りの剣が下げられている。少女が魔法剣士である事がそこから伺える。

 まとめると、明るい、可愛い、エロい、と3拍子揃った素晴らしい美少女キャラクターである。いささかテンションが高すぎるところは気にかかる人もいるかもしれないが、今の俺は盲目にもレミィたんに早くも恋してしまっているため、いっさい気にならなかった。

「あ、あ、あの、初めまして! トミヒコと申します!」

 俺はあまりのレミィたんの美少女っぷりにすっかり舞い上がってしまい、借金取りという立場も忘れて下手に出てしまう。

「おートミヒコたん! はろーはろーはにゃはろー! 会えてうれしーよー!」

 レミィたんは言葉の勢いのままに俺にがばっと飛びつくように抱き着いて来て、その高いジャンプ力のせいで、レミィたんの大きな胸に俺の顔が埋もれるようになってしまい、俺はもう何を言っていいのか分からなくなるような天国の中に一気に叩き落されて困惑してしまう。

「もが……ふが……ふがふが……」

「あはははは! 何言ってるのか分かんないー! レミィたんのおっぱいがくすぐったくなっちゃうから静かにしてー! ほら、むぎゅー!」

 レミィたんは俺を静かにさせたいという意思表示がどうズレたらそんな事になるのか、思いっきり俺の顔面を自分の豊満な胸の中にうずもれさせて、ぎゅーっと圧迫するように息を止めてくる。

 俺は幸せすぎて嬉しすぎておかしくなりそうな心理状態の中、ドキドキと心臓が高鳴り、息が物理的にも精神的にも苦しくなり、完全に平常心を失ってまともではいられなくなってしまう。

 ああ、なんかめっちゃいい匂いする! パンナコッタみたいな甘い匂いだ! これがフェロモンという奴なのか!?

 俺はこんな思いが出来ただけでもこの世界に来て良かった、一遍の悔いなし、なん

て思いながら、俺は全身全霊を込めて今の天国を味わい尽くす。

 だが何事にも終わりは来る。

「そういえば、トミヒコたんはなんか用事があるって言ってたけど、なんの用事なんだっけ?」

 俺に用事がある事をふと思い出したらしいレミィたんは、俺を胸の中から解放すると、きょとんと首をかしげてクエスチョンマークを浮かべてみせる。

「はぁ……はぁ……えっと、俺の用事は、ずばりこれ」

 俺はやっとのことで、鞄から用意して置いた借金証書のコピーを取り出し、レミィたんの前に突き出す。

「レミィちゃん、借金は返さないとダメだよ。利子が溜まりに溜まって全部で2億イェン。レミィたんはA級冒険者だから、返せる当てがあるってことで放置されてたけど、流石に限界超えたら奴隷落ちだからね?」

 トミヒコの記憶を頼りになんとかセリフを言い切る。

 だが、レミィたんは目をぱちくりとさせて俺を見つめてから、こう言い放った。

「よくわかんないけど、とりあえずお茶いこーよトミヒコたん! 平民街に美味しいケーキの喫茶店があるんだ! レミィたん、はにゃにゃーってお腹空いちゃったから、そこで朝ご飯にケーキ食べるね! あ、せっかくだしおごってくれちゃおう!」

 朝ごはんにケーキ、借金を無視して借金取りをお茶に誘う、しかもおごりを要求する、というあまりのフリーダムっぷりに、今更になって俺は思い出したフレーズがあった。

 このゲームのウィキにおけるレミィ・パンナコッタの項に書かれていた、ファンがつけたとある異名である。

 それは「あたおかフリーダム地雷系地雷」というレミィたんのような美少女につけるにはあんまりすぎる異名だった。

 だが今となっては、俺はこの異名にある程度の正当性を認めざるを得なかった。

 この少女、あまりに魅力的過ぎるが、同時にあまりにも頭がおかしい。

 フリーダムすぎるほどにフリーダムな精神をしており、地雷系の外見をした地雷少女と言われても文句が言えない、あまりに常識のない精神性をしているのだ。

 俺はこの後この少女を相手にエッチを要求しないといけないという想定手順に、大きく困難が横たわっている事を感じながら、ひとまずルンルンとスキップして歩き出したレミィたんの後ろについて、レミィたんおススメの喫茶店を目指すのだった。

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