目次
ブックマーク
応援する
1
コメント
シェア
通報
第19話 RE始まりの日

第19話 RE:始まりの日





 それは、ほんの少し前。

 とある少女が軍隊に入る、およそ一月前ほどの出来事。


 アジア連合の都市、上海の郊外に位置する極秘の研究施設にて、緊急アラートが発生していた。




『緊急事態発生。施設内にて、魔獣と思わしき反応が確認されました。職員は直ちに避難を、警備担当の魔法少女は急ぎ対処に当たってください』




 混乱に包まれた、そんな施設の中を、1人の少女が歩いていた。

 真っ白な髪をした、1人の少女が。


 歩行機能に難があるのか、壁を伝いながら歩いている。


 するとその場所へ、避難中と思われる職員が2人。

 偶然にも、少女と鉢合わせとなってしまう。




「おいこいつ、リインカーネーションの」


「なんで、動いて。……って、おい」




 研究員たちは、少女を見て驚きをあらわに。

 むしろ、恐怖に近い顔へと変わっていく。


 なぜならその少女の左目は、人間のそれではなかったから。




「魔獣反応って、まさかこいつから? 被験体の中に、魔獣が潜伏してたのか?」


「いいから、首輪を起動させろ!」




 研究員の1人が、手に持っていた機械を作動させると。

 少女の首に着けられていた、首輪の機能が作動。


 少女は苦しむように、その場へと倒れ込んだ。




「まいったな、こりゃ。実験の内容的に、上に報告するのも」




 とりあえず、少女が動きを止めたことで、安心する研究員たちであったが。

 それも、つかの間。


 バキッと、何かが壊れるような音がして。

 研究員たちが振り向くと。


 少女は首輪を破壊し、ゆっくりと立ち上がっていた。




「嘘、だろ」


「……やっぱり、人間じゃねぇ。こいつは完全に、魔獣に寄生されてやがる!」




 覚悟を決めた様子で、研究員は懐から拳銃を取り出すと、迷うことなく発泡。

 銃弾は、少女の腕を貫通した。



 だがしかし、まるでビデオを逆再生するかのように、貫かれた少女の腕は元へと戻っていき。

 わずか数秒後には、傷が完全に塞がっていた。


 明らかに、人間の治癒能力ではない。その事実に、研究員たちが恐れ慄いていると。


 少女は思いっきり、施設の壁を拳で殴り。

 すると、恐るべき威力によって壁は破壊され。



 そのまま逃げるように、壁の外へと駆けていった。











 必死に、裸足のまま、白髪の少女は山の中を下っていく。


 とても常人には出せない速度、人間離れした身体能力で。


 研究所から、距離を取る少女であったが。




「ッ」




 何かを察知して、足を止め。

 すると上空から、エネルギーの塊のようなものが地面へと着弾した。



 紛れもない、攻撃行為である。

 少女が上空に視線を向けると、そこにあったのは飛翔する1つの人影。



 魔法少女と呼ばれる存在が、逃亡者である少女の姿を捉えていた。




「こちら、シャドウ1。山の中を走る少女のような人影を発見、威嚇射撃をしました」




 上空の魔法少女。

 その腕に着けられた装置が、赤く反応を示している。




「ええ、確かに。レーダーは反応しています。しかしどう見ても、あれは人間の少女です。それを攻撃しろと?」




 魔法少女は、インカム越しに誰かと話しているのだろう。


 彼女自身は、この攻撃命令に不服を感じているようだが。


 現実は、止まらない。




「……了解しました。納得はいきませんが、命令ですので」




 覚悟を決めたのか。

 魔法少女は右手をかざし、攻撃態勢へと移行する。


 標的は、白い髪をした少女。





「これより目標、個体名パラサイトの殲滅を行います」





 放たれた攻撃は、少女へ届いたのか。


 事件の結末は、果たしてどうなったのか。



 それがおよそ、一月前の出来事。

 決して表沙汰にはならない、始まりの日である。






コメント(0)
この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?