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十八話 喉を奪って自分に移植したんですよ

 それは直樹と雪がティーガンから吸血鬼ヴァンパイア血闘封術師ヴァンパイアハンターについておおよそ聞いた後だった。


「……一つ聞いておくぞ」

「うむ、よいぞ」


 ホテルの一室のベッドの上でもっさもっさと食料を胃に収め、ゴクゴクゴクと甘すぎる缶コーヒーを飲みながら、直樹は鋭く尋ねる。


「なんで生きてるんだ?」

「ちょ、直樹さん。まるで死んでなきゃおかしいなんて言い方は……」

「ユキ、大丈夫じゃ」


 ティーガンは直樹をたしなめようとした雪を静止した。それから直樹に質問の意図を話すように鮮血の瞳を流す。


「お前たち始祖がこっちに来てから、吸血鬼ヴァンパイア――真祖だったか? そいつらが来るまでそれなりに年数があったはずだ。お前たちは吸血鬼ヴァンパイアであることが嫌で、だからこそ吸血鬼ヴァンパイアのいない異世界にすら来た。そして、吸血鬼ヴァンパイアがこっちに来れない様に細工をしたはずだ。……まぁそれは破られたんだろうが」

「うむ、その通りじゃ」


 ティーガンは懐旧かいきゅうを映した微笑みで頷いた。雪はその表情に少しだけ息を飲み、けれど直樹は気にしない。


「何故お前と、あと二人の始祖は『人』にならなかった? 何故、吸血鬼ヴァンパイアとして生きている?」


 それを聞いて雪は直樹の最初の質問の意図が分かった。だが、やはりその尋ね方はないだろう、と思う。


「直樹さん、もう少し柔らかな質問はできないんですか?」


 思って、それを口に出せる雪は豪胆というか、なんというか……もちろんそれを自覚しているから厄介なのだろう。


「できないな」

「なら、これからしてください。会話は大切です」

「……善処する」


 大きく可愛らしい黒い瞳に見つめられ、ここで言い争っても平行線だと思った直樹は、絶対にしないだろ、という返事を返す。


 雪もそれが分かっていたが、流石にこれ以上会話を逸らすのは駄目だと感じ、一度引き下がった。


「で?」

「……そうじゃな、まず、吸血鬼ヴァンパイアを『人』にする秘術は妾が編み出したのじゃ」

「お前が?」

「うむ。妾は生命に干渉する力を持つ。生物の生殺はもちろん、このように自らの体を変成することが可能じゃ」


 そう言いながら、ティーガンは右手を血に包んだかと思うと、いつの間にか人の手ではなく猫の手になっていた。


「じゃが、この力が使えるのは妾が吸血鬼ヴァンパイアじゃからじゃ。『人』になれば、力は落ちる」

「つまり、お前が『人』になるのは最後だと? あと残り二人の始祖が『人』になれば、お前は『人』になるのか?」

「うむ……と頷きたいところじゃが、それはじゃった、というべきかの」

「だった? どういうことですか?」


 ティーガンの猫の手をニギニギしていた雪が首を傾げる。その黒の瞳には、少しだけ悲しそうな色があった。それでも憐れみはなかった。


「ユキ、お主は変なところで察しがよいの。うむ、その通りじゃ。妾は『人』になれなくなってしまったんじゃよ」


 それは異世界に移動するという大それた事をしてまで成し遂げたかった願いが、叶えられなくなったという事。


 それは想像もつかないほどの絶望だったはずなのに、ティーガンは平然としていた。凛としていて、ユキに微笑む。


 その微笑みは、幼さがある容姿とは似ても似つかない年数を感じた。そんな凄みのような雰囲気を湛えながら、ティーガンは直樹を見やる。


「今、現存している始祖は妾を含めて三人、プロクルとクロノアじゃ」

「クロノア? 最強とかどうとか言っていたが……」

「うむ。始祖は世界の根幹に干渉する力を持つと言ったじゃろ? 妾は生命。プロクルは隔たりと虚。そしてクロノアは時、じゃ」


 それを聞いて直樹は、厄介だな……と頷いた。


「時間が固定、もしくは巻き戻しか。『人』にしても、吸血鬼ヴァンパイアに戻るんだな」

「察しが――いや、前にそのような存在にあった事があるのかえ?」

「まぁな。といっても、時というよりは世界そのものに固定されてるっていうのが本質だから、時より強いな」

「ふむ」


 ティーガンはおもんばかるようにその人物に一瞬だけ想いを向け、直ぐに直樹に視線を戻す。


「クロノアは自身の自己防衛機構巻き戻しを制御できん。じゃが、アヤツは本当に優しい普通の女の子じゃ。アヤツを残して逝くなぞできん。じゃからここまで念入りに時間をかけてきた。アヤツを『人』にするために」

「ティーガンさん……」


 雪が思わず息を飲む。とても強く切ない想いがそこには込められていたから。自身をにえに捧げても、それを為そうとする決意があったから。


 けれど直樹はそれを無視して、


「で、それがお前が『人』に成れない理由となんの――」


 矢継ぎ早に尋ねようとした瞬間。


「白桃っ、お面を付けろっ」

「雪って呼んでくださいっ! それとデザインの変更を要求しますっ!」

「はぁっ? それ、カッコいいだろっ! ってか、お前は白桃だっ。名前は呼ばねぇっ!」

「そんな事言っておる場合かっ!」


 スチャッとそれぞれのお面を付けた直樹と雪が、緊張感のないことを言い合いながらベッドから飛び退く。


 ティーガンが日傘を開く。日傘を持つ手が血流へと変わり、日傘を伝って噴き出す。血の壁を作り出す。


 ガキンっと音が響いた瞬間、部屋全体に衝撃波が舞い、ベッドや椅子、机はきしみ、壊れる。壁が剥がれヒビが入る。窓ガラスが割れる。


「チッ。弱っていても超克者。簡単に拘束できねぇか」

「小童如きが妾をどうにかしようなど、千年早いわっ。もっといい男になってから出直してくるんじゃな」


 血の壁がパキパキと音を立てて割れる。そこから見えたのは、病的なまでに肌が白く犬歯が伸び、鮮血の瞳を持つ緑髪の青年。


 つまり吸血鬼ヴァンパイア


「さっき言ってた血界だなっ? 歪みをほぼ無しで転移って卑怯だぞっ! おかげで阻害できなかったじゃねぇかっ!」

「直樹さんっ、その前に外にっ。ここだとホテルがもちませんっ!」

「わーってる。ティーガンっ!」

「うむっ、こっちじゃっ」


 狭い室内で戦うのは不利だと判断したティーガンは、ガラスが割れた窓から外に出る。直樹たちもそれに続く。


 ティーガンの背中からバサリっと黒の翼が生える。飛翔する。


 直樹も足元に作り出した漆黒の障壁を蹴り、空中を駆けようとして気が付く。そういえば、雪は覚醒姿を取らないと――


「おい、しらも――」

「大丈夫です。覚醒しなくても空中くらい走れます」


 と思ったのだが、雪は普通に空中を走っていた。靴の裏に桜を渦巻かせ、それを足場に走っていたのだ。


 直樹は思わずビックリする。


「はっ? おい、白桃、それどうやってやったっ!? それ、エフェクトだろっ? 大輔が遊び半分に付けたエフェクトじゃんっ!」

「どうやったって……教えて貰ったんです」

「はぁっ?」


 黒の翼を羽ばたかせ追ってくる緑髪男吸血鬼ヴァンパイアにクナイや手裏剣を投げて妨害しながら、直樹は不審に雪を見やった。


 神和ぎ社とだってまだ本格的にコンタクトをとっていないはずだ。なのに教えてもらった? 誰に?


 その疑問に雪は笑って答えた。ニィッと反転して、拳を後ろに引いた。


「私は想いを奪ったんですよっ!」

「ッ。おい、抑え込むだけでも精一杯だろがっ! 飲み込まれたらどうするっ! 死ぬぞっ。お前の母親や弟がかな――」


 直樹が馬鹿かお前っ! と言わんばかりに叫ぶが、雪はスゥッと息を吸い込む。


「飲み込まれません! 全てを知って知って知り尽くして、ようやく祓うための一歩が踏み出せるんですっ。だからリスクがあっても、彼女たちの想いと真摯に向き合うために、常にっ! 理解して、誤解して、問い直して、解き直して――」


 四六時中という言葉では片付けてはいけない。食事中であろうが、入浴中であろうが、そして就寝中であろうが。


 雪は常に受け継いだ奪った混沌の妄執ロイエヘクサ想い意識と常に向き合ってきたのだ。だからこそ、桜のエフェクトを応用した魔法を使いこなしているのだ。


 そして想いを少しだけ理解できたからこそ――


「また理解するんですっ!」


 雪は叫びと共に、拳に灰色・・の桜を纏わせる。突き出し、纏っていた桜を吹雪かせる。


「どうぞ、怨んで下さい。〝怨伝〟ッ!」

「ッッッッッッ! アァア”ア”ア”っ、俺は……俺は何をっ!」


 飛んでいた緑髪男吸血鬼ヴァンパイアは桜吹雪を浴びた瞬間、のた打ち回る。己の顔を掻きむしり、罪悪感・・・に塗れた叫びを上げる。


「さぁ、今のうちにティーガンさんを追います」

「あ、ちょっ」


 足止めができたと言わんばかりに、雪は少し離れたところを飛んでいるティーガンへと空中を駆ける。ティーガンに並ぶ。


 ほけ、と目を点にしていた直樹は慌てて二人を追いかける。


「のう、今のは想起かの?」

「いえ、ただ私が知っている想いつぐなえを心の中で再現してぶつけたんです。まぁ懺悔したくなるような『今』でしたら、想起になるかもしれません」


 混沌の妄執ロイエヘクサの怨みを解釈し、それを胸のうちに作り出す。そして≪想伝≫で伝える。それが〝怨伝〟。


 だが、≪想伝≫は過去に想った想いを作り出すことはできない。そこまで便利ではない。≪想伝≫は今想ったことを伝える魔法だ。多少増幅したりはできるが、今その想いを抱かないといけない。


 つまり、人外である吸血鬼ヴァンパイアが思わず人の頃の記憶と精神を取り戻してしまう程の強烈な想い怨みを胸に抱いていたはずだ。


 なのに、雪はフフッと鮮やかに微笑んだ。


 ティーガンは瞠目し、左目をすがめる。


「……お主の怨念かえ?」

「違います。混沌に背反する現実と想いに苦しんだ女性たちの叫びです。私はその喉を奪って自分に移植したんですよ」

「……お主は……お主は、本当に強いの」

「いいえ、違います。弱いです。弱いからここにいるんですよ。……ティーガンさんもでしょ?」

「……そうじゃな」


 感慨深げのティーガンは、会話に入り損ねた直樹に視線を向ける。


「ところで、ナオキ。ユキの体が、いや種族そのものが『人』のそれとは違うのじゃが、お主かえ?」

「ああ、そうだ。色々あってな。あ、もちろん合意だぞ。対混沌の妄執魔法外装ハンディアントっていう非実体の宝珠を核とした『魔法少女』って種族に変成させたんだ。特殊な魔法を手足同然に扱う少女姿の種族だな」

「えっ?」


 雪は驚く。


 別に『人』でなかったことに驚いているのではない。それは覚醒した時に受け入れていたし、軽く直樹たちから聞いていた。今更人ではないと言われても問題ない。覚悟していたし。


 なのだが。


「あ、あの。ちょっと、直樹さん。少女姿の種族ってどういう事ですか?」


 雪は少しだけ青ざめながら直樹に尋ねる。直樹はあれ、言ってなかったか? と首を傾げながら答える。


「そのまんまだ。死ぬまで少女姿ってことだぞ? 覚醒したときにな、対混沌の妄執魔法外装ハンディアント自体にその姿形が登録されたんだ。だから、対混沌の妄執魔法外装ハンディアントがあれば、肉体や魂魄が消失しようと復活できるぞ。傷が癒えるのも早いし、女子なら喜ぶと思うが肌が荒れる事もない。あ、だが、普通に痛覚はあるし、今のところ寿命は地球の『人』と変わらないな。まぁ修練を重ねれば寿命は伸びるが」

「ちょ、ちょっと待ってください」


 雪が慌てる。青ざめ、胸の辺りに手を当てながら、ガクガクと震える。


「せ、成長はしないんですか?」

「ああ、未成熟なのを気にしてるのか。なら、大丈夫だぞ。大人として、女性として必要な機能はキチンと――」

「そうではなくっ、身長が伸びたりとかっ?」

「しないぞ? 言っただろ? それで登録されてると」

「……そうですか」


 雪はこの世の全てに絶望したと言わんばかりに、項垂れる。今なら、心のうちにいる混沌の妄執ロイエヘクサの手を取ってしまいそうだ。


 暗黒面に堕ちた表情で、ブツブツと「胸が小さい、このまま、小さい」と呟く雪を尻目に、ティーガンが直樹を見やる。


 知りたかったのはそれではない。


「お主、もしくはお主らと言った方がいいか。反動はどうなのじゃ?」

「……なるほど、『人』に成れない理由は――」


 直樹がティーガンが『人』に成れない理由に思い当たった瞬間。


「東洋の女ァッ、我に何をしたッ!?」

「思い出をプレゼントしただけですよ? どうでしたか、『人』だった時の思い出をプレゼントされて。ああ、お代はいりませんよ。私はその罪悪感に満ち溢れた顔が見れただけで結構ですので」


 緑髪男吸血鬼ヴァンパイアが直樹たちの上空に転移してきた。一度空間が圧縮された血界に入り再び血界から出る疑似的な短距離転移だ。


 表情が抜け落ちていた雪は、けれど怒る緑髪男吸血鬼ヴァンパイアの殺気を感じ、切り替える。瞬時に周囲を把握した後、ニィッと嗤って挑発する。どっかの誰かを思い出すような挑発の仕方だった。


「ッッッッ!」


 緑髪男吸血鬼ヴァンパイアは怒り狂う。吸血鬼ヴァンパイア特有の傲慢さえも消え去り、最初から全力全開で雪を殺そうとする。血の巨槍を作り出し、それに紫電を纏わせていく。


 それでいい。≪想伝≫で緑髪男吸血鬼ヴァンパイアの強烈な殺気を直に受け取りながら、雪は頷く。死が救いとなるほどの殺意の嵐に冷や汗を掻きながら、雪は人差し指を立ててクイクイする。


「あ、もう一回。プレゼントしましょうか?」

「キサマァァァッ!」


 紫電では足りない。雷雲が血の巨槍纏わりつく。


 そしてそれが投擲される瞬間。 


「なるほど、周りに生きた血が多いほど、血界自体に揺らぎがなくなるのか」

「なっ!?」


 直樹の得意とする隠形で気配姿存在感全てを隠し、背後を取ったのだ。


 もちろん、それだけで万全でない直樹が背後を取れるわけではない。雪が挑発し、緑髪男吸血鬼ヴァンパイアの注意を全て引き付けたからだ。雪は瞬時に自分が囮になるのが最善だと確信し、動いたのだ。


 直樹が緑髪男吸血鬼ヴァンパイアを下へと蹴り飛ばす。雪が慌てる。


「直樹さん、下はっ!」

「いや、こっちでいいんだ」


 雪は豪速で落ちる緑髪男吸血鬼ヴァンパイアを止めようとする。雪が緑髪男吸血鬼ヴァンパイアを挑発したのは、直樹が背後を取るためもあるがもう一つあった。


 それは下が住宅街なのだ。


 雪は≪想伝≫で思考を読み取り、緑髪男吸血鬼ヴァンパイアが住宅街を無差別に攻撃し、悦に浸ろうとしようと知った。


 だから、その悦に浸る余裕を失わせる意味でも挑発したのだ。


「クッ」


 緑髪男吸血鬼ヴァンパイアは黒の翼をはためかせ、落下速度を落とす。落下軌道を住宅から道路へと変更する。


 そんな道路には呆然と上を見上げている通行人がいて。雪は桜吹雪で止めようとするが、直樹が止める。


 その瞬間。


「ガーデニングは好きかえ?」

「なっ、やめ――」


 血界を利用した疑似的な短距離転移で、緑髪男吸血鬼ヴァンパイアの横に現れたティーガンは、日傘を振りかぶり緑髪男吸血鬼ヴァンパイアを殴り飛ばす。


 とある住宅街の庭に緑髪男吸血鬼ヴァンパイアが叩きつけられる――


「ガァァァァッッッッッッ!」


 その前に、緑髪男吸血鬼ヴァンパイアが一瞬で燃え上がり、灰となる。キュルキュルと音を響かせながら灰が赤に染まる。


 そして凝縮して、卵みたいな形になった。


 直樹がやっぱりな、と呟き、雪が唖然あぜんとする。


「……どういうことですか?」

「呪いだ」

「へ?」

「ほら、吸血鬼ヴァンパイアは招かれないと家に入れないって伝承、聞いたことないか?」

「……あるような、ないような……」

「それが事実だった。そも俺たちに迷惑をかけないために逃げようとした奴だ。なんの考えもなしに住宅街に来ない」


 そうだろ? と卵型に凝縮した赤の灰を回収したティーガンに視線を向ける。


「うむ、そうじゃ。これは妾が施した呪いじゃ」

「そして吸血鬼ヴァンパイアに幾重にも、いや、始祖たちを『人』にしたのもその一種だろ。で、呪いを多用しすぎた反動で『人』になれなくなったと」

「そうじゃ。世界の理に、一つの種の合理に反する力を行使するのじゃ。反動はあるじゃろう。むしろ、お主がユキを変成させた反動がないのが不思議でたまらんのじゃが」


 直樹は手元に小さな漆黒の光を出しながら、肩をすくめる。


「それは血力と魔力の違いとしか言いようがないな。お前がやった呪いを魔力でやれば、四倍程必要になる」

「……そうじゃな。血力は本来己に干渉するのが得意なエネルギーじゃ。世界法則や他者への干渉には優れておらん」


 むむむ、と雪が首を傾げる。二人の会話への理解が少しだけ追いついていないのだ。


「結局、吸血鬼ヴァンパイアは建物内に入れなくて、その呪い? を掛けたティーガンさんは反動で『人』に成れなくなったという事ですか?」

「うむ。じゃが、建物ではなく家じゃ。『人』が生活している敷居じゃな。庭も入る」


 そう言いながら、ティーガンは卵型に凝縮した赤灰を持つ手を血液の手へと変成する。


「ガルレウェアラケラカラ。……永久とわに眠るのじゃ」


 そして血の手から人を出し、卵型の赤灰を包み込んでいく。


「……封印か。しかも、その中だけ永久、いや停止か」

「うむ。クロノアの性質を参考に妾が編み出した封印術じゃ。血闘封術師ヴァンパイアハンターでこれが使えるのは妾の血楔の仲介人エピストレーとバーレンだけじゃ……と、ちょっとここからの説明は戦闘しながらでもよいかの? 時間がそこまでないのじゃ」

「分かった」


 ティーガンは自ら作り出した血界の門に消えた。直樹も雪もそれに続いて、その門の中に入っていった。




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公開可能情報

〝怨伝〟:≪想伝≫を応用した技。混沌の妄執ロイエヘクサ想い怨み再現し思い出し、特定の対象に植えつける事によって、行動を不能にする。再現する際、自身にもその想い怨みが襲い掛かるため、常人では使った時点で暴走をする。

     また、一口に怨みといっても、元は混沌とした存在の想い。全く同じ〝怨伝〟はなく、それ故に雪は状況状況によって想いの偏りを変える。それができるのは、雪が混沌の妄執ロイエヘクサと向き合い、理解し続けようとしているからである。


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