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第6話 蛮族より良いかも

「んじゃ、行ってきます」


「あぁ、行ってらっしゃい」


「問題無いとは思うが、気を付けてな」


イシュドに学園に入学してほしいと頼んだアルバ、そして妻であるヴァレリアと従者たちがイシュドの出発を見送る中……そこに兄弟たちの姿はない。

何故ならば、全員既にモンスターの討伐に向かっている。


もしくは、早くその戦場で活躍出来るようにと強さを求め、鍛錬を行っている。


(まっ、それが我が家らしいよね)


特に目の前の光景に不満はなく、イシュドはピクニック気分で試験が行われる王都へと向かう。


「……暇だな。ちょっと次の街まで走って向かわないか?」


「イシュド様。暇をつぶすためにこうしてボードゲームを行っているではありませんか」


「いや、それはそうなんだが……ちょっと飽きてきた」


少々長い旅が始まってから数時間、本当に何もない。

貴族の馬車など、一定以上の戦闘力を持つ盗賊たちからすれば金塊の塊に近い存在。


しかし……現在イシュドが乗っている箱を引く馬は、バトルホース。

通常の馬ではなく、馬のモンスター。

ランクはCと決して弱くはなく……下手なタンクが蹴りを食らえば、盾ごと骨をバキバキに砕かれてしまう。

そんな怪物が二頭。


そして馬車を護衛する兵士たちも全員屈強な肉体を持っており、襲い掛かれば自分たちが肉塊にされるのが目に見えている。


「はぁ~~~~……お前たちが屈強過ぎるのも問題だな」


「でしたら、盗賊を見つけ次第、暇つぶしにでも行きますか?」


「…………どうせこの辺にはもういないだろうから、もっと離れた場所でそういう馬鹿がいたら、動くとするか」


「かしこまりました」


当然のことながら、レグラ家で過ごしてきた約十五年間……モンスターだけではなく、盗賊など人を相手にも戦闘を繰り広げ、何人もの盗賊を殺してきた。

そして最初こそ戦闘を終えてからがっつり昼食を吐いたイシュドだが、それ以降は特に問題無く屑共を斬り捨ててきた。


「イシュド様、どうやら手頃な輩が近くにいるようです」


「よし。それじゃ、行くか」


後一日もあれば王都に到着する。

それぐらいの距離まで進んでから……イシュドは馬車を降り、本当に探索が得意な騎士と一緒に情報の盗賊団を探し始めた。


「イシュド様、あちらに居ますのが情報の盗賊たちです」


「数は……二十程度か。王都からそこまで離れた場所ではないのを考えると、意外と多いのか?」


「かもしれません」


「そうか……まっ、やることは変わらない。正面突破だ」


アホ丸出しである。

探索が得意な騎士たちが非常に優秀なこともあり、まだ盗賊たちはイシュドたちの存在に気付いていない。

全員遠距離攻撃の手段があるため、まずは全員で遠距離攻撃を行い、生き残った者たちを始末していく。

それがオーソドックスな討伐方法であり、その選択を取らない理由がない。


真正面から堂々と殴り込むなど、愚の骨頂とも言える。

とはいえ、転生者であるイシュドはそんなこと言われずとも理解している。


ただ……相手のレベルや職業、所有スキルなどを視ずとも明らかに自分たちよりも格下であることが解かる。


「ッ、敵襲だっ!!!!!」


見張の一人が叫び、アジト全体に襲撃の知らせが届く。


盗賊たちは堂々と真正面からやって来たイシュドたちをバカだアホだと笑いながら襲い掛かるが、基本的にワンパンで沈められてしまう。


「やっぱりこうなるか……今まで被害にあってきた者たちのことを考えると、あまり大きな声では、言えないが。もっと活きの良い奴はいないのか?」


退屈そうな表情で独り言を呟きながら、襲い掛かる盗賊たちにカウンターを決め、全員が首を切断、もしくは心臓破裂、頭蓋骨粉砕といった形で命を落としていく。


「あ、悪魔かお前ら!!!!!」


「悪魔か……なぁ、どう思うお前ら? 野蛮な蛮族よりは良いと思わないか」


「存在としては忌避すべき対象ではありますが、呼び名であれば……まだ悪魔の方が良いかもしれませんな」


「はっはっは!! そうだよな。ってな訳だ……別に俺たちはお前らにとって、悪魔でも構わねぇよ」


言葉を言い終える直後には動き出し、最後の生き残りが両腕をあげるよりも早くイシュドの右腕が通り過ぎた。


「まぁでも、悪魔なんて言葉をお前らが同業者以外に使ってんじゃねぇよとは言いたいな」


「それもそうですね」


殲滅が完了後、捉われた人たちがいないことを確認。

一人の死体だけ回収し、残りの死体を焼却。


溜め込んでいた財産なども回収し、途中の街で降り……冒険者たちが所属するギルドに立ち寄った。


「こいつが頭領だ」


切断した頭を鑑定のスキルを持つ職員に見せる。


「……なるほど。確かに確認させていただきました」


「そりゃ良かった。んじゃ、これはそっちの好きにしてくれ」


そう言うと、イシュドは見た目以上に物を収納する袋、アイテムバッグから大量の硬貨と武器などを取り出した。


「あの、そちらは盗賊たちを討伐して回収したイシュド様たちの物になりますので」


「生憎だが、金には困っていない。この金や武器は冒険者たちの育成に使ってほしい」


イシュドとて、自分たちが回収した金をギルドの上役たちの懐に入れたい訳ではない。

同じモンスターや盗賊と戦う彼らの事を、イシュドは少なからず気に入っている。


そんな彼らの懐事情などは決して温かくないことを知っているため、彼らの成長の手助けになればと思っての行動。


「解っているとは思うが……時々情報は仕入れるからな」


「は、はい!!! 育成の為、全力で使用させていただきます!!!」


話せば、決して辺境の蛮族と呼ばれる様な者ではないと解かる。しかし……その迫力はまさしく辺境の戦場を生き抜いてきた猛者が放つ重厚なもの。


他のギルド職員たちもレグラ家の話は大なり小なり耳にしている為、少しぐらい自身の懐に入れてしまおう……などと考えるバカは一人も現れなかった。


そして翌日……ほぼ予定通りに王都へと到着。


「あれが王都の外壁か……中々立派だな」


「ふふ、レグラ家が治める街の外壁と比べれば、そういった感想になるのも無理はありませんね」


従者の一人は初めて王都の外壁を見た時、開いた口が塞がらなかった。

しかしイシュドの場合……自分が攻めれば、何分ぐらいでボロボロに破壊出来るかを考えていた。

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