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第11話

 231さんの案内もあり、秋さんの家に到着した。秋さんの所有品は私が預かっているので、鍵を探し出しドアを開ける。そこには、寝たままの235さんが放置されていました。

「あ、235じゃん。とっとと起きな……っ、と」

 スリープボタンを押された235さんは、「起動します」という声と共に起き上がった。

「231、感謝します。ミス・マリーは無事だったのですね。マスターは破壊されてしまいましたか」

 無感情な声でそう問いかける235さんへ、首を横に振る私たち。

「お兄ちゃんは損傷しただけで無事だよ。今頃修理されてるんじゃないかなぁ」

 231さんがそう説明すると、「そうなのですね」と納得した様子。何を思っているのかは全く予想がつかないけれど、嬉しがっている様にも見えた。彼女には感情がないのに。

「……という訳で、お兄ちゃんが修理から戻ってくるまでは三人でここで暮らすから。よろしく235」

 231さんは、強引に235さんに握手を求めた。235さんもそれに応じ、奇妙な三人での生活が始まったのであった。


 ***


 生きている。いや、アンドロイドを生きていると表現するのはおかしいが、どうやら俺は一命をとりとめたらしい。真っ白なこの部屋では、技師らしき人物が一人パソコンに向かって何かを打ち込んでいた。

「起動したか。自立式思考型アンドロイドAK-3。異常は無いから、帰るなりなんなり好きにしたらいい」

 技師は俺の方を一瞥し、また作業に戻った。とりあえず、服は畳まれていたのでそれを着る。ナビ機能は正常に機能していたので、「ありがとう」と言い残しここから出る。

 しかし、すぐに俺は重大な事実に気づいた。家の鍵がない。財布もだ。これでは、ビルから出られても家に辿り着けない。どうしたらいいのか悩んでいると、ふと235の存在が脳裏をよぎった。235に連絡すれば、鍵も財布も戻ってくるかもしれない。スリープモードから解除されていますように。その願いを込め235に連絡を取る。しばらくすると、

「何でしょうか、マスター」

 と返答があった。

「俺の家の鍵と財布を知らないか? もし知っているなら届けに来てほしい。場所はkkkビルの手前だ」

「承知しました」

 235は何故か鍵や財布のありかを知っていた。スリープモードから覚めたということは、誰か他の奴も俺の家にいる可能性が高い。警戒しなければ。それにしても誰がスリープをといたのだろう。そんなことを考えていると、誰かが俺の方に走って近づいてきた。青い髪のその女性は、どう考えてもマリーだ。

「秋さん、直ったのですね」

 マリーは泣きながら俺に言った。

「心配かけたな」

 と頭を撫でると、マリーは俺の胸に飛び込んできた。嗚咽のみが、この空間を支配していた。

「……悪いんだが、財布と鍵は持ってるか? 一緒に帰ろう」

 雰囲気が壊れるのはわかっていたが、早く帰りたかった。235の様子も確認しなければならない。

「そうですね……すっかり忘れてました。これですよね?」

 マリーが手渡してきたのは、間違いなく俺の家の鍵と財布。マリーの交通費で多少金額は減っているだろうが、無事に戻ってきたことに安堵する。

「じゃあ、帰るか」

「はい!」

 俺たちはkkkビルに背を向け、地下鉄の駅へと歩き出した。


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