やっとの思いでいけふくろうを探し当てた俺。だったが、ついてきた235に「ナビモードが搭載されています」と着いた後で言われ、脱力感に襲われた。わかっていればそれを使ったのに。
司はしばらく待っているとやって来た。今日は私服なので、ラフなイメージを周囲に与えている。
「ごめん、待った?」
「いや、今来たところだ」
典型的なやりとりを行った後に、とりあえずアニメショップへ行こうという話になった。司も俺もオタクだからだ。そして、全ての始まりは俺たちが東口へ向かおうとした時に起こった。見慣れない青い髪に、二つのリボン。その後ろ姿は、さながら俺がハマっているゲームの
「マリー……?」
推しにそっくりだった。思わず、彼女の腕を掴んでいた。振り向いた彼女の顔も、マリーに瓜二つだ。まるで、ゲームの中から出てきたかの様だ。時間がゆっくりに感じられる。
「そこの貴方、体調は大丈夫ですか?」
それが彼女の第一声だった。可愛らしい声だ。声までそっくりとは恐れ入る。
「こ、これはその……色々ありまして」
「色々……」
彼女は困った表情でこちらを見ている。性格までマリーに似ているのだろうか。司が「秋、何やってんの……腕離してあげなよ」と冷静に言ってくる。だが、ここで腕を離す気にはなれなかった。なんせこの人混みだ。また会える確証もない。
「実は、私はアンドロイドなのです。こんなこと言っても信じられないと思いますけど……」
マリーは表情を崩さず、俺の目を見て言った。
「信じよう。俺自身、アンドロイドな訳だし」
しかし、そうなると当然疑問が思い浮かぶ。235は企業秘密と言って、教えてくれなさそうな質問が。
まず、マリーを模倣したアンドロイドを造った理由だ。何のメリットがあって行っているのだろう。俺にも言えることだが、アンドロイドにすることによるメリットは何なのだろうか。それに、何処のグループがそんなことをやっているのだろうか。目的が全く推察できないのは恐ろしい。
「あの……大丈夫ですか?」
「え、あぁ……大丈夫です」
彼女に惹かれかけている俺が居る。司と235は何も言わず俺たちを見つめている。
「……もしかして、マリーってお名前ではないですか?」
彼女は目を見開き
「どうしてわかったのですか?」
と不審者を見る目で俺のことを見てきた。
「あ、俺がやってるスマホゲーにあまりにもそっくりな女の子が居たから……」
思わず早口になってしまった。マリーは驚きを隠せないのだろう。目を見開き、
「そうだったのですね。……もしよろしければ、私もこのお散歩? に同行してもよろしいでしょうか。今は身寄りも何もない状態ですので、お金は払えないのですけれど……」
「構わない。一人分くらいなら司が出す」
「ありがとうございます」
「待って、出すなんて言ってな……まぁいいか。金は天下のまわりものとも言うし。それにしても、秋ってそういうキャラだっけ?」
「わかんねーよ。ただ……マリーが気になったから」
正直な感想を吐露すると、「まぁ、いいや。アニメショップは東口を出てサンシャイン通りを……」
道案内を始めた司。もう言うことはないな、と思い黙ってついていく。池袋は頻繁に行かないので、司が頼もしい。