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3 アホウドリナイト

 「……つまり、君は突然ここにやってきた、違う世界の人間ということか?」


 鎧のイケメンは顔をしかめながらも、なんとか理解しようとしてくれていた。

 やはり、真面目な良い人なんだろう。

 異世界にきて最初に会った人物が彼で良かったとミチルは心底そう思う。


 立ち話もなんだからと、鎧のイケメンは草原の小高い場所に建てられた東屋に連れてきてくれた。そこで向かい合って座りながらミチルの話を聞いてくれている。


「まあ、はい。多分そうだと思います。でないとこの状況は説明がつかないんです」


「うーん、私の勉強不足だが、ここではない別の世界があると言うのは初めて聞いた」


「それはボクも同じですよ。作り話ならポピュラーですけど、実際自分の身に起こった人なんて知りません」


「そうか……君は大変な身の上になってしまったのだな」


 鎧のイケメンは親身になって聞いてくれている。

 なんてお人好し──と言ったら失礼だ。

 そういう好感の持てる人のことは知っておきたい。


「あの……お兄さんはどんな職業の人なんですか?」


 見た目の年齢は二十代前半だろう。鎧を着て、街外れに一人。獣を一発で倒せるほど強い。

 人並みにRPGゲームもやってきたミチルはなんとなく想像はついていた。だが、これは現実の話で知らない世界の話だ。ミチルの常識とは違う可能性もある。


「む。これは失礼した。私の名前はジェイ・アルバトロス。ヴィオラの街の下級騎士である」


 名前、かっこいい!

 そして予想通りの職業!


 ミチルは心の中で指を鳴らした。


「君の名は?」


 イケメンに聞かれたら答えない訳にいかないよね!


「ボクは坂之下ミチルです。あ、そちら風に言うと、ミチル・サカノシタです」


「では名前がミチルだな。私はジェイと呼んでくれて構わない」


「わかりました、ジェイさん。でもなんで騎士の人がこんなところにいたんですか?」


 ミチルの常識では騎士はお城を守るヒーローだ。こんなに強くてこんなにイケメンなら、王様の側にいるべき人材のはずだと思った。


「それは、ここが私の持ち場だからだ。街の外の警備は下級騎士の当番なのだ」


 ああ、そう言えば下級ってつけてたな。

 この人が下級なら、上級の騎士はどんだけイケメンなんだ?


「一人で警備してたんですか?」


「いや、部下の兵士が二人いる」


「どこに?」


「それが一人は数日前に高熱を出したとかで、それから出勤していない。もう一人は昨晩夜逃げしたと風の噂で聞いた」


「……」


 ミチルは言葉につまってしまった。

 つまり、この人は部下にとばれたのか?

 ダメ上司ってこと?


 いや、運が悪いだけかもしれない!

 ミチルはそう思い直してもう少し聞いてみた。


「それなら部下を補充してもらえないんですか?」


「うむ。申請はしているのだが、何度も書類不備で差し戻されてしまってな。なんか面倒くさくなった」


 あ……ぽんこつなんだ、この人。

 ミチルは急に目の前が真っ暗になった。

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