鎧姿の大きな男性はミチルに手を差しのべて言う。
「立てるか?」
「あ……どうも」
反射的にその手をとって立ち上がる。そうして近づいた人物を見上げ、ミチルは驚いた。
超絶イケメン!
涼やかな目元と端正な顎のラインが印象的だ。
サラサラの黒い短髪は固そうな髪質で、実直そうな表情にとても合っている。
ミチルはテレビも動画も沢山見るけれども、こんなに目が醒めるほどのイケメンは初めて見た。
同じ男なのにドキドキしてしまう。
「どうした、やはり怪我をしたのか」
「い、いえ、違います!」
見とれてましたとは言えず、ミチルは慌ててその男性から離れた。
「こんな街外れに来てはいけない。昨今ベスティアが大量発生しているのを知ってるだろう」
「べ、べす……なんですって?」
「知らないのか?もしかして君は外国人か?」
そう言われてミチルは自分の状況を思い出した。あの危険から助けてくれたこの人なら頼ってもいいかもしれない。いや、頼るならイケメンがいい!
「そ、そうなんです!あの、ここはどこですか?」
「ヴィオラだが」
「は?どこの国の?」
「カエルレウムのヴィオラだ」
「はあ?」
聞いたことのない単語の連続にミチルは目眩がした。思わずふらついたので鎧のイケメンは心配そうにこちらを見ている。
「どうした?君はどこから来たのだ?」
「ええと、日本ですけど」
「ニホン?知らないな」
「ジャパンとも言いますけど」
「勉強不足ですまないが、どこら辺なんだ?」
はい!通じてません!
向こうに見えてる城、目の前の鎧の人。
どう見てもファンタジーの世界じゃん。
と言うことは言葉が通じるだけ奇跡では?
ミチルはそう思い直して、この浅はかな妄想を現実だと認識するために、重要な質問をした。
「えっとお、ここは地球ですか?」
「チキュウとはなんだ?」
キタキタ。ヤバいヤバい。
「あのー、なんて言うか……この世界全体のですね、名称なんかあったら教えて欲しいんですけど」
「この世界はカエルラ=プルーマだ、もちろん」
はー……
なんだよ、それ
ゲームかよ
わかったよ、そういうことね
「あのー、お兄さん。驚かないで聞いて欲しいんですけど……」
「うむ、なんだ」
「ボク、こことは違う世界からやってきたみたいなんです」
「──うん?」
鎧のイケメンは首を捻って立ち尽くした。
ミチルも愛想笑いするしかない。
相互理解は遠そうだ。