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第二十二話 あらあら優秀な部下ですこと

 さてさて、あれから数時間たったけど……今は朝かしら?

 サンタニールさんは凄いわね、ずっと私の相手をしている。

 油断もしていないし……流石は王様の側近。


「ガールズトークしてたら朝になったわね、寝なくて大丈夫?」

「ふっ、三日三晩戦場で敵を斬った私だぞ?」

「あら、それはごめんなさい」


 あら……この足音は大臣さん? ついに事態が動きそうね。

 って捕まってから1日……はたってないわ。

 さてさて? どんないちゃもんつけるのかしら?

 受けて立つわよ? かかってくるといいさね。


「ご苦労だったサンタニール、こやつの処分が決まった」

「処分が決まった? どういうことですか?」

「うむ、イワン様の優秀部下が罪状を調べ上げた」

「どんな罪なのですか?」

「こやつはここより離れた小さな島国で、召喚された異世界人だ」

「なんですって!?」


 サンタニールさん、迫真の演技すぎますよ? 知ってるくせに。

 それよりも……本当に優秀な部下ですわね?

 どうせ拘束を解いた暗部の方々が話したのでしょう?

 本当に優秀に部下達ですわね、お腹が痛くなりそうですわ?

 おほほほほほ……あーあ、馬鹿らしい。


「それで、この者の処遇は?」

「ああ、死刑だ」

「死刑!?」

「うむ、詳細は言えんが他国で大暴れしたらしい、この国で暴れられたら取り返しがつかん」

「……」


 サンタニールさんそんな初耳です! みたいな顔しなくても。

 やはりここに居た暗部の方々が話したようさね。

 ま、話した所で何も変わらない、私を殺せる者はこの世界には居ないさね。

 さて……どうやって大暴れしてやろうかね?


「ハナース様は知っているのですか?」

「無論だ、ハーナス様もこの話には同意している」

「……わかりました、ではどの様な刑にするのですか?」

「首を切り落とすのが一番だろう、イワン様はそう考えている」

「それでこの者は死にますか?」

「仮にそれで死なずとも、執行人数名が片付けてくれるだろう」

「王が決めた事なら致し方ありません、決行は何時に?」

「うむ、午後12時より行う!」


 あらあら、本当に急なお話ね?

 ふーむ……多分、ハーナス様はこの程度で私が死なないとわかっている。

 何故ならこの私を最初に見た時に、気づかれないようにニヤリと笑ったからよ。

 あの笑みはおもちゃを目の前にした子供の目、悪い意味じゃなくてね。

 何というか、コイツをほっといたら面白い事をしそうという目さね。

 これはご希望にそえなきゃ……ふふふ。


「わかりました、では時間になりましたらこの者を連れて行きます、場所はどこでしょうか?」

「地下の第七魔法研究所だ」

「……わかりました」 


 あらあら、小躍りな足音で大臣さんが帰って行ったわね。

 ふふ、おもしそうじゃない。

 さて、サンタニールさんに聞いてみようかしら?


「第七魔法研究所ってどんな所?」

「国で許可された者達が禁術を研究している」

「なるほどなるほど、私の力に興味があるのね?」

「お前、冷静だな」

「あら? 私は別に力を分け与えてもいいのよ?」

「やめてくれ、国が滅ぶ」

「あらあらあら? 私の責任じゃないわよね? 得体の知れない力を欲しがる馬鹿共のせいよ?」

「本当にやめてくれ」

「仕方ないわね、友人の頼みなら加減はするわよ?」

「何!?」


 何か今日一番驚いているけど……まあ私も言われたら驚くか。

 ……いや、本当に驚いているわね、そんなに衝撃的かしら?

 おーい、大丈夫かー?


「そんなに衝撃的?」

「当たり前だろ! たかが数時間話しただけだぞ?」

「私も貴女も噓偽り無く話をした、これは信頼関係において一番大切な事よ?」

「うむ……まあそうだが」

「もちろん貴女の言っている事もかわるわ、こんな得体の知れない異世界人を信用出来ないわよね?」

「あ、いや……貴女は信用出来るとわかるんだが、こんな簡単に友になれるものなのか?」

「ふふ、人によって考え方は色々とあるけれど……自然となるものかしら」

「ふむ……自然と」


 そうそう、友達って案外すんなりと出来るもんよ。

 子供の時って出来やすいのよね、全力で言い合うからかしら?

 ま、新しい友人に今後の事を聞きましょう。


「んじゃ、確認ね? 私はこの後処刑されるのよね?」

「ふっ……大人しくされるのか?」

「いえ? 貴女の為にこの国のゴミ掃除をするわ」

「……頼むから一般市民に危害は加えないでくれよ?」

「それはしないわよ、危なくなったら私の魔法でほほいのほいさね」

「はぁ……本当に大丈夫なのか?」

「ふふ、行き当たりばったりもいいものよ? ああ、王様の側近のお友達にはこう言えばいいのか?」 

「何だ?」

「物事はマニュアルの様にはいかないわよ?」

「ふっ」


 あ、今のは本当に楽しそうに笑った。

 うんうん、彼女とも打ち解けたようさね。

 んじゃ、ちゃんと友人の為に動きましょうかね。


「お願いできるかしら?」

「何をだ?」

「最後の晩餐……いえ、昼食?」

「ふっ、今度私が何か奢ってやろう」

「あら、最後の食事にはならないわね」

「ああ」


 とりあえず次から事が動きそうね。

 ふふ……黒幕の神様を引きずり出してやろうかしら?

 それともイワン様かしら? 別にいいか。

 行き当たりばったりを楽しみましょう。

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