さてさて、あれから数時間たったけど……今は朝かしら?
サンタニールさんは凄いわね、ずっと私の相手をしている。
油断もしていないし……流石は王様の側近。
「ガールズトークしてたら朝になったわね、寝なくて大丈夫?」
「ふっ、三日三晩戦場で敵を斬った私だぞ?」
「あら、それはごめんなさい」
あら……この足音は大臣さん? ついに事態が動きそうね。
って捕まってから1日……はたってないわ。
さてさて? どんないちゃもんつけるのかしら?
受けて立つわよ? かかってくるといいさね。
「ご苦労だったサンタニール、こやつの処分が決まった」
「処分が決まった? どういうことですか?」
「うむ、イワン様の優秀部下が罪状を調べ上げた」
「どんな罪なのですか?」
「こやつはここより離れた小さな島国で、召喚された異世界人だ」
「なんですって!?」
サンタニールさん、迫真の演技すぎますよ? 知ってるくせに。
それよりも……本当に優秀な部下ですわね?
どうせ拘束を解いた暗部の方々が話したのでしょう?
本当に優秀に部下達ですわね、お腹が痛くなりそうですわ?
おほほほほほ……あーあ、馬鹿らしい。
「それで、この者の処遇は?」
「ああ、死刑だ」
「死刑!?」
「うむ、詳細は言えんが他国で大暴れしたらしい、この国で暴れられたら取り返しがつかん」
「……」
サンタニールさんそんな初耳です! みたいな顔しなくても。
やはりここに居た暗部の方々が話したようさね。
ま、話した所で何も変わらない、私を殺せる者はこの世界には居ないさね。
さて……どうやって大暴れしてやろうかね?
「ハナース様は知っているのですか?」
「無論だ、ハーナス様もこの話には同意している」
「……わかりました、ではどの様な刑にするのですか?」
「首を切り落とすのが一番だろう、イワン様はそう考えている」
「それでこの者は死にますか?」
「仮にそれで死なずとも、執行人数名が片付けてくれるだろう」
「王が決めた事なら致し方ありません、決行は何時に?」
「うむ、午後12時より行う!」
あらあら、本当に急なお話ね?
ふーむ……多分、ハーナス様はこの程度で私が死なないとわかっている。
何故ならこの私を最初に見た時に、気づかれないようにニヤリと笑ったからよ。
あの笑みはおもちゃを目の前にした子供の目、悪い意味じゃなくてね。
何というか、コイツをほっといたら面白い事をしそうという目さね。
これはご希望にそえなきゃ……ふふふ。
「わかりました、では時間になりましたらこの者を連れて行きます、場所はどこでしょうか?」
「地下の第七魔法研究所だ」
「……わかりました」
あらあら、小躍りな足音で大臣さんが帰って行ったわね。
ふふ、おもしそうじゃない。
さて、サンタニールさんに聞いてみようかしら?
「第七魔法研究所ってどんな所?」
「国で許可された者達が禁術を研究している」
「なるほどなるほど、私の力に興味があるのね?」
「お前、冷静だな」
「あら? 私は別に力を分け与えてもいいのよ?」
「やめてくれ、国が滅ぶ」
「あらあらあら? 私の責任じゃないわよね? 得体の知れない力を欲しがる馬鹿共のせいよ?」
「本当にやめてくれ」
「仕方ないわね、友人の頼みなら加減はするわよ?」
「何!?」
何か今日一番驚いているけど……まあ私も言われたら驚くか。
……いや、本当に驚いているわね、そんなに衝撃的かしら?
おーい、大丈夫かー?
「そんなに衝撃的?」
「当たり前だろ! たかが数時間話しただけだぞ?」
「私も貴女も噓偽り無く話をした、これは信頼関係において一番大切な事よ?」
「うむ……まあそうだが」
「もちろん貴女の言っている事もかわるわ、こんな得体の知れない異世界人を信用出来ないわよね?」
「あ、いや……貴女は信用出来るとわかるんだが、こんな簡単に友になれるものなのか?」
「ふふ、人によって考え方は色々とあるけれど……自然となるものかしら」
「ふむ……自然と」
そうそう、友達って案外すんなりと出来るもんよ。
子供の時って出来やすいのよね、全力で言い合うからかしら?
ま、新しい友人に今後の事を聞きましょう。
「んじゃ、確認ね? 私はこの後処刑されるのよね?」
「ふっ……大人しくされるのか?」
「いえ? 貴女の為にこの国のゴミ掃除をするわ」
「……頼むから一般市民に危害は加えないでくれよ?」
「それはしないわよ、危なくなったら私の魔法でほほいのほいさね」
「はぁ……本当に大丈夫なのか?」
「ふふ、行き当たりばったりもいいものよ? ああ、王様の側近のお友達にはこう言えばいいのか?」
「何だ?」
「物事はマニュアルの様にはいかないわよ?」
「ふっ」
あ、今のは本当に楽しそうに笑った。
うんうん、彼女とも打ち解けたようさね。
んじゃ、ちゃんと友人の為に動きましょうかね。
「お願いできるかしら?」
「何をだ?」
「最後の晩餐……いえ、昼食?」
「ふっ、今度私が何か奢ってやろう」
「あら、最後の食事にはならないわね」
「ああ」
とりあえず次から事が動きそうね。
ふふ……黒幕の神様を引きずり出してやろうかしら?
それともイワン様かしら? 別にいいか。
行き当たりばったりを楽しみましょう。