さてはて、晩御飯の時間になったわ。
サンタニールさんが何か持ってきてくれるらしい。
……戻って来たわ! まあまあ! パンと水!
やっぱり牢獄と言えばこれ! 豪華絢爛はいらない!
時と場合によるけど、このみすぼらしいのがいい!
こう貴重な体験よ、まあ本当投獄されている人達には申し訳ないけど。
「セイント、食事を持って来たぞ? 本当これでよかったのか? もう少し色々とあったぞ?」
「あらあらお手数をおかけします、罪人の為にと持ち出すなら……この位が丁度いいでしょ?」
「まあな、特に疑われもしなかった」
そりゃそうでしょう、たかが……いえ、食べ物と水を悪く言えないわね。
感謝していただきましょう、いただきます。
……うん、流石城のパンと水だわ、高級品。
「で、これからどうするんだ?」
「そうですわね? 一番いいのはこの状態かしら?」
「ほう?」
「王の側近の貴女は、発言権が間違いなく高いでしょ?」
「まあな」
「つまり貴女が私を見張ってくれていれば、私は安全ですわね」
「ずっとこのままという訳にもいかんだろ」
「そうですわね、ま、黒幕はわかっていますし」
「そうなのか? いや、お前の実力なら当たり前か、で、誰なんだ?」
あらあら、簡単に信用されましたわね。
私の実力もわかっているから?
ま、とりあえずお話をすすめましょう。
「この国の主神は2人……人じゃないから、2神かしら」
「ああ、シンラル様とウラル様だ」
「で、多分そのウラルって神様が主犯ね、理由は簡単よ? シンラルに代わってこの国の主神になりたいから」
「ウラル様も主神なのだが?」
「ほら、二番じゃ納得出来ない人って居るでしょ? それよ」
「……この国の神が黒幕だというなら、人の身ではどうしようもない」
「そうね、なら人の身でどうにかなる相手を、貴女は相手にすればいい」
「どういう事だ?」
「さっきあった王様には兄弟はいるかしら?」
「ああ、イワン・カミカミ・カミッニ様だ」
「その人が神にそそのかされているのよ、多分ね」
「ふむ……」
あらあら、どうやら思い当たる所があるようね。
多分怪しいけど確定ではない、そんな所かしら?
ふむふむ、やはりこの人は優秀ね。
「もちろん私の話を信じなくてもいい、だって私の妄言の可能性もあるし? たかが数時間話した間柄よ」
「ふむ……だが私はお前を信じると決めた」
「あらあら? いいのかしら?」
「ああ、私は相手が正しいかわかる力がある」
「あらあらとても便利ね?」
「詳細は言えないがな」
「必要ないわよ、ま、私は数日の間に処刑されるでしょう」
「は?」
あらあら今度は豆鉄砲を喰らった顔ね。
予想外の事には弱いのかしら?
いや、予想外だからこそこの反応よね。
「簡単よ? 強硬手段でくるでしょうね?」
「いくらなんでも無理だ」
「あら? 私を殺せる理由はあるじゃない?」
「もしかして先日の現れた神か? あれはお前が?」
「いいえ? 私の知り合いね、簡単に言えば……力が欲しかったから渡してやった、俺を恨むのは筋違いだろ? こんなのを野放しにしている国が悪い、とね」
「ふむ、先程も聞いたが……ソイツとは後で詳しく話をしたい、今は目の前の問題だ」
「ああそうそう、直接的な原因は私に無くとも私もその場に居たし? あ、これも言ったわね」
「ふむ……」
まあ文句の一つも言いたいでしょうね、何かしらの被害は出ているはず。
カオスの自由奔放な行動にめんどくさいわね。
ま、私も私で好きにさせてもらいましょう。
「ま、今はそれは置いといて流れとしては? 大臣がそれらしい理由を付けて死刑宣告、で、貴女がもちろん反発するけど聞き入れてもらえない」
「なるほど……イワン様の命令か」
「ええ、それで私を殺して色々な事が解決ね? 頭の可笑しい女が? この国が異世界召喚を街中で叫んでいた、国を混乱させたから処刑ね? ふふふ」
「いや、お前楽しそうに話をするな」
「当たり前でしょ? イキリ散らし野郎をイキリ散らす、最高の場所じゃない?」
「なるほど、処刑の場での大逆転か」
「ま、私の行動は間違いなく国をかき回すわね? どうする? 私を処す?」
「無理だな止められない、というかお前は強すぎる」
「あらあら」
「だから私はお前の行動に乗る事にした」
あらあら? こっちに肩入れするの?
ま、いいかもでもどういう事かしら?
「えぇ? 貴女の仕えている王様はそれでいいのかしら? てか貴方側近でしょ?」
「ふっ、今でこそ落ち着いているが、昔は馬鹿な事をしていた人だ」
「どんな?」
「成人する前の話だが、異世界召喚に興味を持ってやろうとした」
「どうなったの?」
「私が全力で止めた、が、全力で実行した」
「あらあら? 結局は成功?」
「いや、直前で止めた」
「何で?」
「『俺は王位を継ぐ人間だ、これは万が一国の緊急事態の時の為にした、予行練習だ……それにどう妨害すればいいかも練習にもなっただろ?』と」
「あらあらたくましいわね?」
「色んな人を巻き込んで、予行練習の一言で終わらせました」
「面白そうな話じゃない、聞かせて?」
「……ふっ、どうせ処刑されるから話せと?」
「あらあら、死ぬつもりはないけどね」
ふっふっふっ……私には全てお見通し。
今大臣がイワンって人と話をしているのもね。
ま、私が処刑される日を楽しみにしていましょ。