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第二十一話 ま、私は黒幕を知ってるんだけどね 

 さてはて、晩御飯の時間になったわ。

 サンタニールさんが何か持ってきてくれるらしい。

 ……戻って来たわ! まあまあ! パンと水!

 やっぱり牢獄と言えばこれ! 豪華絢爛はいらない!

 時と場合によるけど、このみすぼらしいのがいい!

 こう貴重な体験よ、まあ本当投獄されている人達には申し訳ないけど。


「セイント、食事を持って来たぞ? 本当これでよかったのか? もう少し色々とあったぞ?」

「あらあらお手数をおかけします、罪人の為にと持ち出すなら……この位が丁度いいでしょ?」

「まあな、特に疑われもしなかった」


 そりゃそうでしょう、たかが……いえ、食べ物と水を悪く言えないわね。

 感謝していただきましょう、いただきます。

 ……うん、流石城のパンと水だわ、高級品。


「で、これからどうするんだ?」

「そうですわね? 一番いいのはこの状態かしら?」

「ほう?」

「王の側近の貴女は、発言権が間違いなく高いでしょ?」

「まあな」

「つまり貴女が私を見張ってくれていれば、私は安全ですわね」

「ずっとこのままという訳にもいかんだろ」

「そうですわね、ま、黒幕はわかっていますし」

「そうなのか? いや、お前の実力なら当たり前か、で、誰なんだ?」


 あらあら、簡単に信用されましたわね。

 私の実力もわかっているから?

 ま、とりあえずお話をすすめましょう。


「この国の主神は2人……人じゃないから、2神かしら」

「ああ、シンラル様とウラル様だ」

「で、多分そのウラルって神様が主犯ね、理由は簡単よ? シンラルに代わってこの国の主神になりたいから」

「ウラル様も主神なのだが?」

「ほら、二番じゃ納得出来ない人って居るでしょ? それよ」

「……この国の神が黒幕だというなら、人の身ではどうしようもない」

「そうね、なら人の身でどうにかなる相手を、貴女は相手にすればいい」

「どういう事だ?」

「さっきあった王様には兄弟はいるかしら?」

「ああ、イワン・カミカミ・カミッニ様だ」

「その人が神にそそのかされているのよ、多分ね」

「ふむ……」


 あらあら、どうやら思い当たる所があるようね。

 多分怪しいけど確定ではない、そんな所かしら?

 ふむふむ、やはりこの人は優秀ね。


「もちろん私の話を信じなくてもいい、だって私の妄言の可能性もあるし? たかが数時間話した間柄よ」

「ふむ……だが私はお前を信じると決めた」

「あらあら? いいのかしら?」

「ああ、私は相手が正しいかわかる力がある」

「あらあらとても便利ね?」

「詳細は言えないがな」

「必要ないわよ、ま、私は数日の間に処刑されるでしょう」

「は?」


 あらあら今度は豆鉄砲を喰らった顔ね。

 予想外の事には弱いのかしら?

 いや、予想外だからこそこの反応よね。


「簡単よ? 強硬手段でくるでしょうね?」

「いくらなんでも無理だ」

「あら? 私を殺せる理由はあるじゃない?」

「もしかして先日の現れた神か? あれはお前が?」

「いいえ? 私の知り合いね、簡単に言えば……力が欲しかったから渡してやった、俺を恨むのは筋違いだろ? こんなのを野放しにしている国が悪い、とね」

「ふむ、先程も聞いたが……ソイツとは後で詳しく話をしたい、今は目の前の問題だ」

「ああそうそう、直接的な原因は私に無くとも私もその場に居たし? あ、これも言ったわね」

「ふむ……」


 まあ文句の一つも言いたいでしょうね、何かしらの被害は出ているはず。

 カオスの自由奔放な行動にめんどくさいわね。

 ま、私も私で好きにさせてもらいましょう。


「ま、今はそれは置いといて流れとしては? 大臣がそれらしい理由を付けて死刑宣告、で、貴女がもちろん反発するけど聞き入れてもらえない」

「なるほど……イワン様の命令か」

「ええ、それで私を殺して色々な事が解決ね? 頭の可笑しい女が? この国が異世界召喚を街中で叫んでいた、国を混乱させたから処刑ね? ふふふ」

「いや、お前楽しそうに話をするな」

「当たり前でしょ? イキリ散らし野郎をイキリ散らす、最高の場所じゃない?」

「なるほど、処刑の場での大逆転か」

「ま、私の行動は間違いなく国をかき回すわね? どうする? 私を処す?」

「無理だな止められない、というかお前は強すぎる」

「あらあら」

「だから私はお前の行動に乗る事にした」


 あらあら? こっちに肩入れするの?

 ま、いいかもでもどういう事かしら?


「えぇ? 貴女の仕えている王様はそれでいいのかしら? てか貴方側近でしょ?」

「ふっ、今でこそ落ち着いているが、昔は馬鹿な事をしていた人だ」

「どんな?」

「成人する前の話だが、異世界召喚に興味を持ってやろうとした」

「どうなったの?」

「私が全力で止めた、が、全力で実行した」

「あらあら? 結局は成功?」

「いや、直前で止めた」

「何で?」

「『俺は王位を継ぐ人間だ、これは万が一国の緊急事態の時の為にした、予行練習だ……それにどう妨害すればいいかも練習にもなっただろ?』と」

「あらあらたくましいわね?」

「色んな人を巻き込んで、予行練習の一言で終わらせました」

「面白そうな話じゃない、聞かせて?」

「……ふっ、どうせ処刑されるから話せと?」

「あらあら、死ぬつもりはないけどね」


 ふっふっふっ……私には全てお見通し。

 今大臣がイワンって人と話をしているのもね。

 ま、私が処刑される日を楽しみにしていましょ。

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