私達は洞窟の入り口まで戻って来た。
ふむ、出入口はふさがれているね。
「おらぁ!」
あーあ、蹴破ったよ。
これ人集まってくるんじゃないか?
「カオス、何で蹴ったんだよ」
「ん? そりゃ出入口が無いからさ」
「ほら……人がわらわらやってきたじゃないか」
あーあーあーあ。
何か凄い顔の人達が来たね?
「き! 貴様ら! 何故生きている!」
「へ? いや、生きているからでしょ」
「村長さんの言いたい事は、そういう事じゃないさね」
「はっはっは、あの程度の神に俺が殺されるとでも? 安心しろ村長さん『中にいる奴』をちゃんと依頼……あ、殺してないや」
「どういう事だ!」
「もういい! 『ウラギラール』様の供物になれ!」
少年がナイフで突撃してきたね。
あらあら? ナイフの使い方がしっかりとしている。
何人も殺してきてるねアレは。
「お、いいぞ少年! 急所だ!」
「はっ!? な、何で生きているんだよ!」
「ん? いやいや、頭使って考えろ……っても子供にゃ無理か」
あらあらカオス? 胸にナイフ刺さって言うセリフじゃないわね。
「あのな? お前が拝んでいる神より強いだよ俺は」
「う! 噓だ!」
「うんうん、現実は受け入れられないよな? で、聞くけどさ」
あらあら、カオスが本気で殺す顔を子供にしたよ。
まあこの世界の……ってか大陸か、倫理感とか法律とかは関係ない。
そんな物で今の状況は覆せない。
簡単さね、力でどうこうするしかない。
暴力で解決しようとしたのは……そっちだ。
「お前、自分が殺される可能性は考えたか?」
「ひっ!」
「はっはっは、大丈夫大丈夫、殺しはしないよ、ほら返す」
「あ……あ……」
カオスは、自分の胸に刺さったナイフを子供に返した。
ふむ、子供はもう恐怖で震えているね。
あらあら、村の人達も固まっちゃった。
「おいおい、落ち着いてくれよ? ふむ……村長さん、細かい事を言うと俺はあの神を殺しちゃいない」
「は? こ、殺してはいない?」
「そうそう、俺はあのイキリ散らしの神様にさ、力を分け与えたんだよ」
「ち、力? 何を言っているんだ?」
「んん? いや、お前達の目的は、あの神を強くする事だろう? んで、自分達の生活を良くしたてんだよな? 金、酒、男、女、都合のいい召使い、いろいろ欲望があるようだな?」
「……」
あらあら、村の人達がそっぽを向いた。
まあ普通の人間てか、クズの願いなんてそんなものか。
「だから俺がお前さん達の手伝いをしようとね、嬉しいだろう?」
「なっ!? 手伝い!?」
「そうそう手伝い、数時間後にお前達の神は復活する、パワーアップしてな? 何が起こるか想像出来るか? この国の神と戦える……くらい?」
お、村長の顔が変わったね?
ふむ、クズはクズでも人をまとめている立場。
理解した顔をしている、村の人達は首を傾げているが。
さてはて、どうする?
「……ま、待て! そんな事をしたら! 国を相手にする事になる!」
「お、流石村長、わかる?」
「そ、村長、どういう事ですか?」
「何で国と戦う事に?」
ふむ、村の人達が困惑しているね?
さて、村長さんはこの状況をちゃんと説明出来るかな?
「ま、まず……こいつらの言っている事が本当だと……いや、おそらくは本当だろう、そして……ウラギラール様は間違いなく調子に乗る!」
「え? ウラギラール様が?」
「そんな感じの神ではないよな?」
「お前達の前ではそうだろう、信者だからな……何時だったか、強力な魔術師を捧げた時だ、ウラギラール様は調子に乗る発言をした」
「いやいや村長、力が増えたら喜ぶんじゃないか?」
「その時は良かったが、今回はその力が問題なんだ! いきなりこの国を治めている神に喧嘩を吹っかけてみろ! 私達は終わりだ!」
ふーむ、いまいち伝わってないね。
まあ村長さんの説明も間違ってないんだけど。
シンプルに言えばいいのに。
「村長さん、もっと短くハッキリと言ってやれよ? 『力に溺れたウラギラール様は、間違いなく国の神に喧嘩売る! その争いに私達も巻き込まれる!』ってさ?」
おお、カオスがハッキリと言ったね、うんうん分かり易い。
やっぱり短い言葉で伝えるって大事さね。
お、村の人達に伝わったらしいね。
カオスの言った事を言い換えれば、神と一緒に戦って革命を起こそう!
だからね、そりゃ嫌だろう? 楽して儲けたいと考えていた奴らは。
「そ、村長! 俺は戦争に巻き込まれるのはごめんだ!」
「そうだ! 死ぬならお前だけにしろ!」
「だはははははははは! ぐはははははははは!」
あらあらあら? カオスが大爆笑しているね?
「いやいやいや、あんたらあの神の加護……いや、呪い……いや、祝福と言っておこうか? それがある限り、裏切れないよ? ま、大人しく国と喧嘩してくれ」
あーあーあーあーあ、カオスの一声で、取っ組み合いの喧嘩が始まったよ?
ま、楽しめたからいいか、ふむ、カオスも満足しているようだ。
「カオス、次は何処に行くのさ」
「ふーむ、武力国家の『ブキッサ』を目指すか」
「んじゃ行きましょう」
「ああ、直ぐに国境を越えよう、もちろん合法的にな?」
「え? 通行書とかは?」
「関所で発行してるとさ」
「何時の間にそんな情報を?」
「船の中で聞いた」
私達は阿鼻叫喚のダマッス村を出た。
裏切りなんてしないで、仲良くクーデターを成功させてくれ?
お前達の願いを叶えられるさね?