怪しい扉の奥に、私はそっと足を踏み入れる。
薄暗い。だが、こちらでも複数の人間たちが作業を行っている気配がする。
私が音を立てないように進むと、そこには思った通りの光景があった。
鍛冶道具を使って、職人たちが鎧を作っている。
そしてその横では、すでに完成した鎧に、魔法技術者たちが何かの魔法を付与していた。
部屋の隅には完成した魔法鎧がずらりと並び、どこかに納品するのか、木箱への梱包作業をしている人間もいる。
そんな中、部屋の中心には見覚えのある透明化鉱石がいくつも、鉄の机の上に置かれていた。
特殊な魔法加工がされているようで、鉄机は透明化鉱石の影響を受けていない。
魔法技術者の中には、透明化鉱石を加工している人間もおり、透明化効果を解除し、純粋な魔力鉱石に変えて、それは鎧の材料になっているようだ。
「……これが非殺傷型の超小型兵器となります。敵に触れると、相手は透明になり、魔法鎧を来ている限り、こちらに危害を加えることはできません」
「だが、それでは我々は透明な敵の暗殺から身を守るため、魔法鎧を着続けなければならないのでは?」
「ご安心ください。この透明化#石粒__せきりゅう__#はきちんと調整済みでして、相手は透明化してから一時間以内に、存在ごとこの世界から消滅します」
「ふむ。使用後、一時間の間気をつけていればよいということか」
「左様です」
部屋の端で話している声。私がそちらに歩いていくと、整った服を着た貴族風の男と黒装束を身にまとった人間がいた。
彼らの前に置いてあるのは、透明化鉱石を砕いて粒状にした石粒だった。
さっきの会話の中で「兵器」という単語が出てきた。
この粒を敵陣に、大量に降り注ぐことでどんな惨状になるかは想像がつく。
貴族風の男は透明化石粒の説明をしていた。おそらくグラズ家の人間。
だが、肝心の買い手の黒装束の正体がわからない。どこかで戦争でも起こす気なのだろうか。
「わかった。購入しよう。この石粒を今すぐに大量生産してくれ。可能か?」
「はい、もちろんです。すでに原材料の発掘場所は押さえてあります」
グラズ家の人間は、商談が成功したことで嬉しそうに言う。
「また、この石粒を扱うためにいくつか装備も用意しました。こちらは全てサービスです。握っても自分が透明にならないようにする魔法手袋、そして万が一、透明化してしまった時のーー透明解除鉱石も」
グラズ家の人間は上機嫌で綺麗な石を取り出した。
そうして、私はずっと探していたものを見つけた。