金貨が大量に入った袋を見て、受付のお姉さんは目を輝かせる。
「このお金欲しい……じゃなくて、これは今日、赤フードさんにお渡しした報酬袋……」
「あの、さっきから仰っている赤フードさんって……?」
「ああ。うちのギルドの中でも最強クラスの冒険者さんなんですよ。リンさまと関係のあるところだと、エルスさまのスキル研究所、アルメダさまのランガ山道事件なんかを解決していますね」
その説明で、リンはお茶会でのエルスとアルメダの話を思い出したようだった。
「お茶会で話に出ていたあの方ですか……! ご活躍は聞いています! 私も一度会ってみたいです」
というリンだが、いつも会っているし、なんなら今ここにいる。
「それで、ですね。今の会話の流れから、赤フードが机の上に現れ、私が『誰かいるか』と尋ねたら、今度は私の大好きなお金……すみません、本音が出ました。赤フードさんにお渡ししたギルドの報酬袋が出てきました。ということはーー」
受付のお姉さんは私の姿が見えていないはずだが、こっちの方向を見て。
「そこにいますね、赤フードさん」
ご名答。さすが受付のお姉さんだ。
「え? え??」
リンは目を白黒させているが、お姉さんは話を進める。
「あの依頼があった草原近くで、赤フードさんは透明になってしまった。しかも、意志疎通ができないみたい。しかも、冒険者が消えた話をしていた時に介入してきた。となると、赤フードさんとアルトバルト家の冒険者は同じ状況に?」
私はもう一つ、懐からアイテムを取り出した。
ダンジョン探索用として予備で持っていたグラズ家製の魔法照明だ。
机の上に置くと、魔法照明は二人に見えるようになる。
「これは……よく見るタイプの魔法照明ですよね?」
お姉さんはその意図に気づかなかったようだが、今度はリンが気づく。
「グラズ家……」
「え?」
「これはグラズ家が生産しているものです! そして、冒険者の方たちはグラズ家の市場に行って姿を消しました!」
「なるほど……」
受付のお姉さんは頷く。
「赤フードさんが訪れた草原の周辺とグラズ家の調査を行いましょう。事情を説明して、王国騎士団の助力を得ます」
事態は動き出した。これで透明化鉱石が発見され、事件の全貌も掴めてくるだろう。
あとは……私自身の透明化を解く方法を探すだけだ。たぶん、あまり時間は残されていない。
「赤フードさんは待機しててください。どうにかして、元に戻す方法を……って、どこ行くんですか!?」
私は部屋を出ていく。二人には扉が自動で開いたように見えているに違いない。
事件の解明は冒険者ギルドと王国騎士団に任せた。
私は元に戻る手がかりを掴むため、これからグラズ家の魔法工場に潜入する。