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第42話 姿が消えた赤フード

 触れるだけで存在が消されてしまう、危険な透明化鉱石が大量にある。


 その事実を早く冒険者ギルドに伝えなければならない。


 私は道を塞ぐ男たちを倒すため、本気で斬りかかったのだが。


「残念だな。この魔法鎧には効かねえよ」


 男は私の剣を避けることなく、鎧で受け止めた。奇妙な感覚が全身を走り抜ける。


 私のスキルが効果的に発動していない感覚。


 鎧にかけられた魔法という別体系の超常的な力が、私のスキルを抑え込んでいる。


 しかし、それが具体的にどんなものなのか、知識がない私には把握できなかった。


 そして。


「ほらよ」


 私は思い切り、後ろへと突き飛ばされた。


 その先にはーー透明化鉱石。


 背中に鈍い痛みが走って振り返ると、私は透明化鉱石に触れてしまっていた。


「……消えたな」


 男は言う。私と目線を合わせることなく、男は続けた。


「俺たちグラズ家は、全員が自分に防御魔法を付与していてな。魔力に侵食された人間からの干渉を受けないようになっている。つまり、透明になったお前がどれだけ危害を加えようとしても、全ての攻撃を弾く、というよりもなかったことにする。だから、報復も無駄だ。諦めろ」


 男の視線は定まらない。私がまるでどこにいるのかわからないみたいに。


「まぁ、安心しろよ。ずっとそのまま生きていくってわけじゃねえ。一日か二日すれば、存在ごと消えてなくなるからさ」


 どうやら、私は透明化鉱石の被害者の一人になってしまったようだ。


 口を開こうとしても、喋ることさえできない。


 グラズ家は思っている以上に、魔法を自由に操れるようだ。


 透明化鉱石に『沈黙』などのスキルのような追加効果をつけていてもおかしくない。


 貴族同士の交流の中では、グラズ家がここまで危険な力を保有しているという情報は得られなかった。


 ということは、グラズ家は意図的に、保有している魔法戦力のことを外部に対して隠している。これはかなり危険なことだ。


 男の言葉から推察するに、何もしなければ、私の存在はあと数日で消えるらしい。


 しかし、これは魔法だ。


 あくまでこの世界に存在する現象のひとつであり、スキルではどうにもならなくても、他の魔法ならどうにかなるかもしれない。


 私は男たちの横を駆け抜け、ダンジョンの外を目指す。


 急いで城下町に戻ろう。


 どうにかして、姿を元に戻す方法を探さなければ。

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