かなりレアな透明化したモンスターと、縄張りを追われて街道沿いまで逃げてきた肉食獣たちに関係がないとは思えない。
私は『痕跡探知』を発動する。
さっきはたくさんある動物たちの痕跡の中からどれを調べればいいかわからなかったが、今は透明化したモンスターの足跡に絞ることができた。
いくら身体が透明でも、足跡まで透明なわけではなく、しっかりと地面に残っていた。
私が幽霊と戦っていたわけじゃないことはちゃんと証明されたわけだ。
私は足跡を追って、街道から外れ、草原の中へと進んでいく。
すると、足跡は草原の真ん中の地面にぽっかりと空いた穴に繋がっていた。
階段が作ってあり、斜めに降りていけるようになっている。
穴の中を覗くと、しっかりとしたタイルの通路が伸びていた。
「こんなところにダンジョンか……」
ダンジョンとは過去文明の遺跡のことを主に指す。
そのため、この前の洞窟などは狭義のダンジョンからは外れている。
ダンジョンを目にすること自体、久しぶりだ。
人間があまり立ち入らない性質上、モンスターの巣となっていることが多いので、ギルドへのダンジョン内モンスター掃討の依頼は多い。
が、一匹一匹は弱くても、モンスターの数が大量の場合が多いため、その手の依頼は中堅の冒険者パーティーに任されることがほとんどだ。
私みたいな一人行動ばかりしている冒険者には、まず回ってこないタイプの依頼だった。
「とりあえず、入ってみないと原因はわからないよね」
私はポケットから、この前の洞窟でも使った対象追尾型魔法照明を取り出す。
ちなみに魔法は希少なものといったが、このアイテムのようにごく小規模な魔法が内蔵されているものは市販にも流通している。
あまり交流のない大きな貴族家が得意としている魔法工業によって、独占的に大量生産されているものがほとんどだ。
今度一回、生産工場を令嬢モードで訪ねてみて、魔法に触れ、何かしらのスキルを取得できないか試してみるのもいいかもしれない。
ともかく、照明は確保した。
私は冷たい印象がするダンジョンの通路へと足を踏み入れていった。