「最近、城下町で店が襲撃される事件が多発してまして」
昼下がりの冒険者ギルド。
何か新しい依頼はないかと掲示板の張り紙を見ていたところ、ちょうど休憩時間だという、いつものお姉さんに捕まった。
最近、掲示板から一般冒険者向けの依頼を受けていない気がするなぁ……とため息をつくが、お姉さんは気づかない。
「それでどんな事件が多いの?」
「大方、店が荒らされるケースが多いみたいです。接客をしていたら店の裏口から侵入されて、商品をめちゃくちゃにされたり、閉店後の店が狙われたり」
「お金目的?」
「いや、それがどうやら違うみたいなんですよね。ただ荒らされて終わりみたいです。被害の規模も大きくなってきたので、王国騎士団も調査を始めるとか」
「なら、今回は自分の出番はないね。商会同士の争いとかそんな感じだと思うし」
私はほっと息をつく。最近は特殊な依頼が多すぎた。
気楽の依頼をこなす日々を過ごしても、バチは当たらないだろう。
「騎士団の調査で解決するといいんですけどね。この事件はもっと……何か裏があるような……」
「やめてよ。そういう不吉なこと言うの」
私はお姉さんとの会話をしながら、また掲示板に目を通していく。さっさと何か依頼を受けてしまおう。
「今日はこの依頼にする。街道沿いに出現するモンスター討伐」
「ええー、そんな普通の依頼でいいんですか?」
「他人の命がかかるような依頼はしばらく控える。少し疲れたから」
「そうですか。まぁ、そういう時もありますよね。わかりました。その依頼の受注処理はこちらで行っておきます。久しぶりのモンスター狩りで息抜きしてきてください!」
モンスター討伐も危険がないわけじゃないから、息抜きにはならないんだよな……と思いつつ、訂正するのも面倒なので、私はギルドを出る。
久しぶりの通常依頼だ。
いつもよりは気楽な足取りで依頼地点に向かう私だったが、そこで待っていたのは、ただのモンスター討伐任務ではなかった。