「じゃあ、『服従』を解除するね」
私はビッグの首元の紋章に手を当て『スキル解除』を発動した。
これでビッグは完全な自由の身となり、ランガ山脈で今まで通り穏やかに生きていくだろうーー。
と、思っていたのだが。
「キュウッ!」
目の前にいる巨大な黒鳥は、『服従』が解けても動く気配がなかった。
「……えーと?」
「キュウッ!」
残念ながら、ビッグが何を言ってるのかわからない。
『動物会話』というスキルがあれば、意志疎通も可能なはずだが、残念ながら、私もこの世の全てのスキルを取得済みなわけではない。
ビッグは自分の首を捻り、くちばしで自らの背中を指し示す。
「乗れってこと?」
私がおそるおそるビッグの背中に乗ると、大きな両翼を思いきり動かして、ビッグは空へと飛んだ。
「キュウッ!」
ビッグの鳴き声はとても楽しそうだ。ぐるりと空中を一回転して、再び地上に戻ってくる。
私を下ろしても、ビッグは離れる様子はなかった。それどころか、頭をすりつけてくる。
「あら、仲が良いですわね。ビッグウィングは自分と性格が合うと感じた場合のみ、人間にとてもなつくことがあるんですの。ビッグは赤フードさんを選んだんでしょうね」
「そうなの?」
「キュウ!」
私が聞くと、ビッグはすぐに嬉しそうに鳴いた。
『服従』なしで、ビッグと仲良くなれるとは思っていなかった。
この感じだと、ビッグは私の後ろをついてきそうだ。しかし、家で飼うわけにもいかないし……。
だが、これもせっかくの縁。
城下町の近くに何かしら巣を作れる場所を確保しよう。
アルメダは自分の馬車を操って帰るというので、私は彼女の馬車に『高速移動』をかけた。
二倍の速度で駆けていれば、また誰かに捕まるということもないだろう。
そして、私は。
「行くよ、ビッグ!」
巨大な黒鳥の背に乗って、城下町を目指す。
ビッグの本気のスピードはかなり速い。
適度にスキルをかけてあげれば、日帰りで家に帰ることができるだろう。