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第34話 思わぬ展開

「じゃあ、『服従』を解除するね」


 私はビッグの首元の紋章に手を当て『スキル解除』を発動した。


 これでビッグは完全な自由の身となり、ランガ山脈で今まで通り穏やかに生きていくだろうーー。


 と、思っていたのだが。


「キュウッ!」


 目の前にいる巨大な黒鳥は、『服従』が解けても動く気配がなかった。


「……えーと?」


「キュウッ!」


 残念ながら、ビッグが何を言ってるのかわからない。


『動物会話』というスキルがあれば、意志疎通も可能なはずだが、残念ながら、私もこの世の全てのスキルを取得済みなわけではない。


 ビッグは自分の首を捻り、くちばしで自らの背中を指し示す。


「乗れってこと?」


 私がおそるおそるビッグの背中に乗ると、大きな両翼を思いきり動かして、ビッグは空へと飛んだ。


「キュウッ!」


 ビッグの鳴き声はとても楽しそうだ。ぐるりと空中を一回転して、再び地上に戻ってくる。


 私を下ろしても、ビッグは離れる様子はなかった。それどころか、頭をすりつけてくる。


「あら、仲が良いですわね。ビッグウィングは自分と性格が合うと感じた場合のみ、人間にとてもなつくことがあるんですの。ビッグは赤フードさんを選んだんでしょうね」


「そうなの?」


「キュウ!」


 私が聞くと、ビッグはすぐに嬉しそうに鳴いた。


『服従』なしで、ビッグと仲良くなれるとは思っていなかった。


 この感じだと、ビッグは私の後ろをついてきそうだ。しかし、家で飼うわけにもいかないし……。


 だが、これもせっかくの縁。


 城下町の近くに何かしら巣を作れる場所を確保しよう。


 アルメダは自分の馬車を操って帰るというので、私は彼女の馬車に『高速移動』をかけた。


 二倍の速度で駆けていれば、また誰かに捕まるということもないだろう。


 そして、私は。


「行くよ、ビッグ!」


 巨大な黒鳥の背に乗って、城下町を目指す。


 ビッグの本気のスピードはかなり速い。


 適度にスキルをかけてあげれば、日帰りで家に帰ることができるだろう。

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