警備長は若くて、顔の綺麗な青年だったが、その両脇にいたのは、人相の悪い男たちだった。
「兄貴! 侵入者ですよ! 計画は完璧だったんじゃ!?」
「どうするんすか、兄貴!」
「おら、ここで兄貴って呼ぶなって言っただろ!」
警備長は整った顔立ちを醜く崩すと、仲間二人を叱責し、はぁ、とため息をついた。
「エルスさま、ここにはあなたを含めて、誰も入れてはならないと進言しておいたはずですが」
『敵意把握』の認定は深紅。じゅうぶん殺す気がある色だ。
「嘘だと言って……わたし、あなたのこと信用していたのに!」
エルスは警備長に向かって叫ぶ。
「ああ、あんたが研究所を任されてるってご令嬢か! 兄貴言ってたぜ、貴族の娘は若い男性に免疫がないから、すぐに取り入ることができて楽だってな! ギャハハ!」
「そ、そんな……」
エルスの表情が絶望に曇る。少し距離があるとはいえ、知り合い、いや友達のそんな表情は見たくなかった。
「それで。言い訳をする気がないのなら、ここであなたたちを斬るけど、いい?」
私は少し怒気を込めて言う。
「三人相手に勝てるってか? やってみろよ、冒険者風情がよ!」
人相の悪い二人はやる気満々のようだが、警備長の反応は鈍かった。
「お前ら、あいつはただの冒険者じゃない。赤フードだ。油断していたら、間違いなくやられる」
「え、あ、アイツが赤フード!?」
「そう。それでもかかってくるというのなら、容赦はしない」
普段は赤フードという、噂に尾ひれがたくさんついた通り名を自分では積極的に使わない私だけど、こういう相手には名乗った方が効果的な場合もある。
だが、さすがに簡単に投降する気はないようだ。
「ここまで全てバレちまったら、俺たちにも逃げ場はないんでな。赤フードも、エルスさまもまとめて殺す」
警備長はそう言って、剣を引き抜いた。
ひっ、とエルスは小さく悲鳴を上げる。いつも自分を守ってくれていた剣が、今度は自分に向けられているのだ。無理もないだろう。
「私は死なないし、エルスも守り抜く」
私はエルスを守るため、彼女の前に立つ。
「あ、赤フードさん……!」
「安心していいよ、エルス。あなたのことは守ってみせる」
そうして、警備長たちとの戦いが始まった。