無事に紫獣人たちを討伐した私とアルレアは、洞窟の外まで戻ってきた。
「僕は君のことが気に入った。また僕らだけで手に負えない事件が発生したら声をかけても良いかい?」
私の仕草などの特徴をつかまれると厄介なので、あまりアルレアと長時間いるのは良くないと思いつつも、手を貸してくれと頼まれれば断れない性分だった。
元々、冒険者になったのも、自分の力で誰かを助けられたらという気持ちからだったし、助けを求められたら、できるだけ応じてあげたかった。
「わかった。その時はギルドに連絡をしておいて。ギルドに顔を出したときに伝言を受けとる」
「ギルドも君の直接の連絡先を知らないのかい? 君ほど有名な冒険者なら住んでいる場所なども伝えてあるものかと思っていたよ」
「私は赤いフードを被った謎の冒険者。正体は誰にも明かさないし、居所も教えない。でも必要なときには力になる」
「うん、それだけで十分だ。ありがとう」
そうして、私はアルレアとは別々に城下町へと戻った。
町を一回りしてから、冒険者ギルドに顔を出すと、すでに依頼達成の報告をアルレアが済ませてくれたようで、報酬金が用意されていた。
金貨が大量に入った袋を出してきて、受付のお姉さんは目を輝かす。
「大量! 大量ですよ、赤フードさん! 騎士団長さんが報酬金を提示額よりも上乗せしてくれました! 赤フードが活躍してくれたからだそうです!!」
「あ、ありがとう……」
正直、お金には困っていない……というか、使い道が思いつかないため、報酬金は自室に貯め込んである。
何か必要なものは使用人が持ってきてくれるのが当たり前になっていて、自分で何かを買ってきたりすれば逆に怪しまれる可能性があった。
贅沢な悩みだとはわかっているけれど……まぁ、今は貯金しておいて、そのうち何か大きなことにまとめて使うのも悪くないだろう。
報酬金は基本的に冒険者とギルドで山分けだ。比率は8:2。仲介手数料を二割ほどギルドが持っていく形となる。
だから報酬金が増えれば、そのぶん、受付のお姉さんの目も輝くのだ。喜んでくれたのなら、それでいいだろう。
「今日はもう帰るね」
私はお姉さんに言った。
「あれ、新しい依頼を見ていかないんですか? そこの掲示板にも新規の依頼の張り紙、いっぱい張ってありますよ?」
「実はこの後、人と会う約束があるんだよね」
「へえ、どんな生活をしているのか謎に包まれている赤フードさんにもプライベートが……」
「それはあるよ、なんだと思ってるの……」
そんな感じで呆れながら、私は別れの挨拶をしてギルドを出た。
今日は約束がある。
それはある意味ではバトル。
ーーそれはご令嬢たちが集まる、お茶会だった。