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おしとやかな令嬢だと思われていますが、裏では最強冒険者として暗躍しています!
月海水
異世界ファンタジー冒険・バトル
2024年08月01日
公開日
53,312文字
連載中
表の顔はおしとやかな公爵令嬢。
でも、裏の顔は赤いフードを被った謎の最強冒険者!?
エルバルク家の令嬢、キリナは他に誰も持っていない激レアスキル『スキル枠無限』の適正があった。
この世界では普通なら、スキル枠はどんな人間でも五枠。
だからできることが限られてしまうのだが、スキル枠が無制限のご令嬢は適正のあるスキルを全部取得していく!
そんなことをしているうちに、王国最強の人間となってしまい、その力を役立てるため、身分を隠してこっそりと冒険者になったのだった。
正体がバレないよう、こっそり暗躍する毎日です!!

第1話 公爵令嬢と赤いフードの冒険者

「キリナさまはいつお会いしても、とてもお美しいですな」


 いろんな人から何度も聞いたお世辞が、また繰り返された。


 周辺貴族たちが集まる定例のパーティー。それは私の父上が開催しているものだ。


 そのため、娘の私はやってくる貴族たちに挨拶をして回らなければならない。


 目の前にいるのは、どこかで見た気がする中年の下級貴族だ。


 彼の賛辞の言葉が本気のものなら、私だって嬉しく思うけれど、小さい頃からパーティーに出るたび、色々な人から同じような定型文を言われ続ければ、それが本心からのものでないことに気づく。


「ありがとうございます。パーティーをゆっくりお楽しみくださいね」


 私は心の内を隠して、にこやかにそう言うと中年貴族から離れた。


 ……パーティー、つまらないな。


 そうやってぼうっとしながら、まだ挨拶していない人はいないかと会場を探し歩く。


 するとその途中、正面をきちんと見ていなかったせいで、ドン! と誰かにぶつかってしまった。


「きゃ! ごめんなさい!」


 私はあわててすぐさま謝った。


 お客様にぶつかってしまうなんて、大失態だ。万一、転ばせて怪我でもさせてしまったら、それこそ大変なことになる。


 しかし、相手は私がぶつかっても、全くバランスを崩す気配がない。


 不思議に思って見上げると、そこには私よりも頭一つぶん、背の高い若い男の人がいた。


 白銀の鎧をまとったその姿は、王国騎士団所属であることを示している。


 金髪のその青年騎士の名前を、私は知っていた。


 アルレア・イーグトラン。


 若くして、王国騎士団の騎士団長になった優秀な騎士だ。彼もパーティーに呼ばれていたらしい。


 普段は凛々しい顔つきのアルレア、しかし今はとても焦った顔をしていた。


「お怪我はありませんか、キリナさま!」


 彼も私の名前を知っていたようだ。


 キリナ・エルバルク、それが私の名前だ。


 エルバルク公爵家の一人娘。おしとやかな令嬢。周囲からはそう呼ばれている。


「え、ええ…! 不注意だったのは私の方ですから、お気になさらず…! アルレアさまこそ大丈夫でしたか?」


「僕は問題ありません。いつも鍛練を重ねていますから。キリナさまのような、可愛らしいお嬢様にぶつかられて倒れているようでは、騎士失格です」


「そ、それもそうですね。騎士さまは本当にお強くて尊敬します」


「僕たちが剣の腕を磨き、体を鍛えるのは、王国民たちを守るために必要なことだからです。僕はただ、己の義務を果たしているだけですよ」


 アルレアはそう言って、


「キリナさまに何かあっても、僕が駆けつけてお守りします。ですから、安心して王国での生活をお送りください」


 私に笑顔を向けた。


 ◇◇◇


 パーティーが終了した後。深夜。


 会場だったエルバルク公爵家の大屋敷の屋根に、一人の人影があった。


 赤いフードを被ったその人物はーーキリナ・エルバルク。


 そう、さっきまで令嬢として笑顔を振りまいてた私である。


「こんな高いところにいるのを使用人に見られたら、みんなきっと卒倒するわね」


 王国の城下町にある冒険者ギルドでは、赤いフードを被った謎の最強冒険者の話をみんなが知っている。


 だが、その正体が私であることは誰一人として知らなかった。


「さて、今日も冒険者家業を始めますか!」


 私は三階建ての屋根から一息に飛び降りる。しかし、スキル『落下ダメージ無効』により、ふわりと着地した。


 そう。


 私が冒険者として活動することになったのは、ある時にたまたま自分が大量のスキル適正を持っていることが判明したからだった。


 今では『落下ダメージ無効』以外にもたくさんのスキルを所持している。


 それでは、語り始めよう。


 表向きはおしとやかな公爵令嬢であり、その実、最強の冒険者である私ーーキリナ・エルバルクの物語を。

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