縁と結びは桜野学園へとやって来た、校門の入口にはシーナが立っている。
「縁、結び、やっと来たか」
「どうしたサンディ?」
「お前ん所の未来のおかけで知ってたとは言え、こっちはちょっと大変だったんだぞ?」
「ん? 結びさん何か聞いてる?」
「ああ、未来ちゃんに頼んでちょいとだけ未来を見てもらったのさ」
「その結果は?」
「
「いや危ないだろ、他の生徒が」
「未来ちゃん曰く、関わったその先に縁君と関わった人物が居るとか」
「ふむ……サンディ、その襲撃者は?」
「お前達のクラスに居るよ」
「行こうか縁君」
「ああ」
縁達は自分達のクラスの前へとやって来た、教室に入ると絆と襲撃者達が居る。
いかにもな襲撃者の姿をした者達は、鹿の女性と兎の男性の亜人だった。
そして場違いなほどお茶会セットが机に置かれている、絆が用意したのだろう。
「お兄様、お待ちしておりました」
「ひっ!」
「大丈夫ですわ
「……」
鹿雲は縁を見た途端取り乱したが、何も起きない事に安堵しているようだった。
そんな態度を取られたら、何があったの確認したくなるのが当たり前の行為である。
「彼女はどうしたんだ絆」
「脅されて爆弾にされてましたわ」
「おいおい、特攻ってそういう意味かよ」
「ええ、雑な術だったので私が解除しておきました」
兎の男性は意を決した目をして縁を見る。
相変わらず鹿の女性は怯えているようだった。
「……俺達はこれからどうなるんだ?」
「大丈夫ですわ
「いや……襲撃者を普通保護するか?」
「もちろんですわ、お兄様は名の通り縁を守る神ですから」
「ふむ……」
縁はウサミミカチューシャを外して、何時もの神様モードへと変化する。
その姿を見た鹿雲と煙月は息をのむ、自分達はこの神に何かされるのではないかと。
「鹿雲とやら、俺は別にお前達に対して攻撃的な事をすることは無い、そしてお前達の事情はわかった」
「は!?」
煙月は驚いた声を上げた、これは普通の反応だ。
初対面でお前の事情は知っていると言われ、驚かない者は居ないだろう。
「これこれ縁の神様や、一人で納得してないで私にも教えてちょ」
「こちらは施設育ちのお嬢さんだ、そちらの青年も同じだ」
「ほうほう」
「簡単に言えば施設の秘密をバラされたくなければ……だな、そして施設には小さい子供達も居るらしい」
「ほほう、そこまで言えば手に取る様にわかるね」
施設が悪い事をしていて、この2人はいやいや従っていた。
理由が自分達より小さい子供達が居るから、止めるにやめれない。
秘密をバラされれば、子供達は何処かに保護されるだろう。
だが後ろ指を刺される人生になりかねない。
この2人はそれを考えて、縁達を襲撃に従ったのだろう。
「お兄様? どうしましょうか?」
「無論助ける、この2人も施設の子供達もな」
「ま、待ってく――」
「捧げる物が無い者達に何かを貰おうとは思わん」
「で――」
「助ける理由か? 俺が助けたいと思った者を助け、障害になる者は排除したいからだ」
「……」
「おお……縁君にしては神様らしい横暴だねぇ」
「いつもと変わらんだろう」
「言葉には出してなかっただけか」
縁はふっと笑うと絆の方を向いた、絆は兄が何を言うかわかっている様だった。
「絆、この方達の施設に向かい障害を排除してくれ」
「承知いたしました」
「いやいや、待ってくれ! 普通に考え――」
「普通が通じないのが神だ」
「……」
2人に何も言わせない圧を出す縁。
その態度からは『もう黙って保護されていろ』と言っているようだった。
そもそも議論の余地は無いのかもしれない。
「とりあえず君達は――」
「縁君、ここは縁君の神社で働いてもらうってのはどう?」
「それは良いんだが……彼らの意見も聞いとくか? いやその前に建設中だ」
「おおう……ならカジノだね、あそこってゲーセンみたいなもんでしょ?」
「ああ」
「んでどうする2人共?」
「……俺達に選択肢はないのでは?」
「え? 選べばいいじゃん、何で自分から選択肢放棄してんのさ」
結びの言葉は正しい、議論の余地が無くとも選択肢は自分達で選ぶべきだ。
早い話、助けて欲しいなら助けてというべきなのである。
いくら縁でも言葉を言わない者に救いを施すほどの事はしない。
「……助けて下さい、私は……もう悪い事をしたくありません」
鹿雲は泣きながらそう答えた、縁は助けを求める者を捨てない。
だが、何でもかんでも救ってくれるとは思ってはいけない。
まさに保護はするが、これからのこの2人の幸せは――
身の丈にあった選択肢が出来るかどうかだ。
「絆、後は任せた」
「ええ……ああお兄様、2人を脅した奴は少し離れた所に置いときましたので……ご確認を」
「わかった、行くぞ結びさん」
「よっしゃ」
縁と結びはその場から消えた。
この2人の選択肢が正しかったのかは今はわからない。
どんな結果になろうとも、結局は自分達が納得するしかないのだ。