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第七話 幕切れ 魔を払い善悪を見分ける一族

 縁は再びガッキーン村へと帰ってきたが、怒りが収まらないの村の外側に転移してきた。

 結びが素早く現れて、縁の本気で怒っている事には気付いたが、何時も通りに接する。


「ほいほいお帰り、今回も早かったね~あ、荷物は受け取ったよ」

「……結びさん、ちょっといいか?」

「あらあらどうしたのさ~本気で怒っているたようだけど」

「俺は昔のように戦争を……いや、殺し合いをしようと思う」

「おやおや穏やかじやないね、約束事がある戦争じゃないなんて何があったのさ」


 縁は先ほどあった出来事を話した、結びがは表情を変えずにうんうんと頷いている。。


「なるほどねぇ……いいんじゃない? 私はどんなことがあっても縁君の味方だよ」

「そして……結びさんにはまだ説明していない、俺の力を見せようと思う」

「おお、神様の隠された力というやつだ」


 縁が静かに瞳を閉じて、ゆっくりと目を開けると……

 縁の瞳が白い兎になっていた、それを見ても特に結びは驚きもしない。


「この目は『兎瞳とどう』と呼ばれる目だ」

「あら可愛い」

「見た相手の縁や身の丈等々を見破る力がある、まあ俺の力が増すと思ってくれればいい」

「はっはーん? 便利だねぇ」

「ついでに言っておくと」

「ん?」


 縁は結びの右手を両手で包み、そして目を見て話を始める。

 それは今まで不安に思っていた事の告白だった。


「俺は……結びさんには自分の力を使った事は無い、俺の行動と言葉で関係を――」

「ほっほっほ、んな事はわかっているよ? この私が神の力程度で惚れるとでも?」


 結びが笑った後に目を閉じ、そして縁を見る瞳が赤色の兎に変わっていた。

 縁はうおっと声を上げ、ビックリしながらも目をそらさずに見る。


「私が惚れたのはちょっとだらしなくて、甘いセリフを当たり前のように話す……いつもジャージで最高にいい男だ」

「その瞳は?」

「ああこれ? これは『界牙流瞳映し』って技」

「本当に何でも出来るんだなぁ」

「縁君って男女問わず一定の距離とってるんだ」

「ああ、ちなみに恋愛対象になる女性は君だけだ、安心したか?」

「ふっ」


 包まれている右手に左手をそえて、自信たっぷりで言い返した。

 もはや縁が裏切ならければ、ずっと味方という力強さがある。


「こんな力じゃなく、私は縁君の言葉と行動を信じるよ」

「ありがとう」


 縁の瞳が元に戻ると結びの瞳も元に戻った。


「でまあ話を戻して……戦争もとい殺し合いするなら根回しだね」

「確かに……だが、地獄谷さんの実家を破壊した犯人は許せん」

「お、もうわかってるの?」

「ああ」

「流石神様だねぇ」

「まずはその犯人に仕立てられそうな神の家に行く」

「お、それは耳にいれとかないとね、よしよし、とりあえず行ってみようか」

「ああ」


 縁は指を鳴らし魔法陣を展開してその場から消えた。

 転移してきた場所は舗装された小道で、いかにもお金持ちが居ますといった感じだ。

 縁達は道を進んでいくと結びが質問をした。


「ここにはどんな神様が?」

「昔世話になった孔雀の神様、孔雀坂ミチルの家だ」

「おお、孔雀の神様」

「ああ」


 小道を抜けると見事なお高そうな日本風の門構えがあった。

 門番もしっかりと居て、縁達に気付いて近寄ってきた。


「お? 縁さんじゃないですか! お久しぶりです! 今日は何の様です?」

東上ひがしかみの地で祀られ、東因幡ひがしいなばを治めている海渡福様の代理できました、要件はここのお孫さんの事で話をしに来ました」

「ちょちょちょちょ! 氷室ひむろ様が何かしたのですか!?」

「ああ、言葉足らずでしたね、氷室さんが厄介な事に――」

「縁さん」


 家の中から威圧感の凄いおじいさんが出て来た。

 和服を着ていてムスッとした顔をしている……様にみえる。

 後ろにはお付きの人達が数人居た。


「お久しぶりです、孔雀坂様」

「いやいや様はやめてください……昔と比べて良き神になられましたな」

「ありがとうございます」

「あがってください」


 居間に通されると、見事な孔雀石の原石が床の間に飾ってあった。

 孔雀坂のお付きの人が、お茶と茶菓子を出してくれた。


「早速ですが……孫は何をしたのでしょうか?」

「はるか昔に地獄に落とされた、猫の一族を知っていますか?」

「もちろんです、私の一族もネズミの一族に抗議しましたから」

「お孫さんは……事件に巻き込まれまれそうになっています」

「なっ!? 何があったのですか?」

「地獄谷家の実家が壊されました」

「それを孫が!?」

「いえ、お孫さんがした様に捏造をするようです」

「……はぁ、とりあえず一安心です」


 孔雀坂は安心した様にお茶を飲み始め、縁達もそれに続いてお茶を飲む。

 一息ついた所で結びが声を上げた、それはもっもとな質問だった。


「縁君、明確な証拠があるの?」

「ああ、犯人は色々と隠した様だが、縁は消さなかったようだ……いや、消し方がわからなかったか?」

「え? それ証拠になるの?」

「『孔雀坂家が気に食わないから、奴に責任をおしつける』と、残された縁から感じた」

「……悪に御大層な理由を求めちゃダメだね」

「縁さん、全体的なお話を伺っても?」

「ええ、何があったかというと――」


 縁は今までの事を簡単に完結に説明をした。

 エンシェントトゥエルヴが、地獄谷の一族に今までした事。

 地獄谷は海渡が保護していて、娘は自分が教師としても神としても見守っている事。

 相手にとって大切な、何者かが孔雀坂に責任を押し付けようとしている事。

 縁はあえて犯人が誰なのかは言わなかった。


「なるほど、何処の誰か知らねぇが……そのクソガキ共に一泡吹かせてやろうか」


 孔雀坂は怒りを表に出すと、緑色のオーラを放ってそれが孔雀の羽の形をしていた。

 それを見た結びがコッソリと縁と話し出した。


「縁君、犯人教えてあげた方がいいんじゃない?」

「それはダメだ、孔雀坂さんはかなり気性が荒い、多分教えたらその日に殴り込みに行く」

「おおう……大事になりそうだね……あれ? 私達も同じ事しようとしてない?」

「位の高い神って合法的にさ、ここぞとばかりに自分の力を見せようとするんだよ、とても面倒くさい事になる」

「あ~力を振るう機会が無いのね? 神様って大変」

「ま、俺にはかせになるような位は無い」

「だから好き勝手出来ると」


 縁はわざとらしく咳を一つして孔雀坂を見る。


「俺が言えた事じゃありませんが、孔雀坂さん落ち着いてください」

「客人の前ですみません……して、今回の解決の為に縁さんが海渡殿の代理を?」

「ええ、見て見ぬふりをするから好きにしろと、上位の神々には話しておくと言ってました、後日海渡様から連絡があるでしょう」

「俺も歳か……現場で暴れてぇんだがな? しかし、縁さんが代理を務めるとは」

「あくまでも代理ですけどね」


 代理とはつまりその人物の代わり、つまり今の縁は海渡の言葉と同じなのである。

 何時もの縁は位が低いと常々言っているが、任されるということはそれだけの力があるということだ。


「……おう! 氷室はどうしている? ここに連れて来い」

「はっ!」


 お付きの人が居間から居なくなり、しばらく雑談をしていると。


「おじいさま、遅くなって申し訳あり――」


 居間に好青年が入って来た、立ち振る舞いがしっかりとしている印象がある。

 そして入ってくるなり、縁に対して三つ指を付いて頭を下げるのだった。


「高貴な縁の神とお見受けする、私は孔雀坂氷室と申します」

「これはご丁寧にありがとうございます、私は縁、こちらは私の妻で風野音結びと言います」

「風野音結びです、よろしくお願いいたします」

「孔雀坂さん、いいお孫さんですね」

「ええ、私に似なくてよかったですよ」

「しておじいさま、お話とは?」

「ああ」


 孔雀坂は縁から聞いた話を簡単に氷室に伝えた。


「エンシェントトゥエルヴの者達が!? というか私を犯人に見せかけようと!?」

「最近お前その十二支に入ったと言っていたな」

「はい、ですが活動らしい活動はしていませんでした、名前だけの集まりといいますか……私は友にお願いされたから一緒に入っただけです」

「氷室さん、私が見て来たのは犬は直接地獄谷の娘さんを襲う、龍は人の世で災害を起こしてましたよ」

「犬と龍……? ああ、顔合わせの時に、素行の悪い奴らが数人ほど居ましたね」

「氷室、おめぇは悪い事してないよな?」

「もちろんです、孔雀坂家の名に泥を塗るような事はしていません」

「確かおめぇの友達は熊月くまづきの一族の奴だったか?」

「はい、よしおはいいやつですよ」

「ふむ……おめぇから見て素行の悪い奴ってのは誰だ?」

「犬、虎、龍、鶴、象ですね」

「なるほど、俺が見た縁の通りだ」


 縁は一人で納得した後に、釘を刺す様に孔雀坂の目を見た。


「孔雀坂さん、今回は大人しくしててくださいね」

「はっはっは! あの時は孫が居なかったからな、疲れたから言葉崩させてもらうぜ、縁達も遠慮すんな」


 孔雀坂はそう言うと姿勢を崩したが、縁達は正座したままだ。


「縁君、孔雀坂さんとはどんな関係なの?」

「俺の戦争を全線で手伝ってくれた神様だよ」

「おお、貢献者じゃん」

「今だから言えるが……俺は暴れたかっただけだ、無駄に力はあましていたからな」

「待ってくださいおじいさま、力を見せたかっただけではないでしょう?」

「ほう、どうしてだ?」

「孔雀坂の家紋は孔雀石です、善悪を見分け魔を払い、保護する意味があります、おじいさまは家紋の通りに行動しただけでは?」

「おめぇ縁の事知ってるのか?」

「はい、名前を聞いて思い出しました、大切な妹を助ける為に立ち上がった神だと」


 氷室は尊敬の眼差しで縁を見るが、本人は深いため息をした。


「結局は色んな人に迷惑をかけてしまった、褒められたもんじゃないよ」

「ほっほっほ、次に同じ様な事があったら私に全てまかせなさい」

「はっはっは! 流石は界牙流四代目だな」

「あら、孔雀坂さん知ってたの?」

「界牙流と言えば神すら殺す技術を持っている一族だぜ? 知らないはずないだろ」

「おおう……知られていた」

「って縁、さっき妻と言ってたがお前さん達は結婚したのか?」

「いえ、正確に言えばまだ彼女です、今は結婚式の準備をしています」

「ほうほう、そりゃ何かお祝いを……ふむ」


 孔雀坂は少し天井を見て考えた後に、縁達の方を向いた。


「この一件が終わったら、孔雀坂家からは孔雀石をお祝いとして送るか、加工して装飾品にするのもいいだろう」

「おおう縁君、これは気合い入れて頑張らないとね」

「ああ」

「頼むぜ縁、孔雀坂家に泥塗る奴らにちゃんとやってくれよ?」

「ええ、俺も手加減は出来ませんよ」

「不謹慎だけどさ、縁君の本気がみられるのか」

「嫌いになるなよ?」

「なるわけないじゃん、神っていうお仕事するだけでしょ」

「はっはっは! 神を職業として見るか、ある意味では間違っちゃいねぇんだが……氷室、今のうちに2人から聞きたい事は聞いておけ」

「え!? あ、あの……」


 いきなり話を振られた氷室だったが、しどろもどろになりながらも質問をする。

 当たり障りの無いような質問や、自分が興味ある事を縁達に質問をしたのだった。

 これから始まるのは神々の戦い、いや、世間知らずの神に縁の神が天罰を与える。

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