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第六話 後説 考察勢のお知らせ

 小休憩も終り、いよいよ奥さんの方の動画を見る事に、旦那さんでアレなら奥さんも騒がしいのでは?

 そんな期待と不安が混ざった顔の長谷川、対して荒野原は目を輝かせていた。


「なかなか凄かったねぇ~で、奥さんはどんな感じなのさ」

「では早速……これだ、ちなみに見ているシーンは同じだ」

「ほほう、あ、活動の名前は?」

「ああ、クラユリって名前だ」

「よしよし、では私のファンとやらの実力を見せてもらおうか」


 斬摩はパソコンを操作して2人の前に置いた。

 画面には地べたに座っている女性と、ふせんだらけのノートが何冊かある。

 旦那と同じく自分のリスナーと同時視聴をしているようだ。


『お、なんだなんだ? 斬銀とやりあう――ば、バカな! 私の推しが一撃だと!? 何故だ!? 私の考察ノートを出すときが来たな!』


 動画はスファーリアがやられたシーン、クラユリは積み上げられているノートを開いた。


『ふむ……そうか、スファーリアと風月に今は分かれているからな、元の状態なら負けんか、ヨシ!』

「え? あれって考察ノート?」

「いや……かなりのふせんと大量のノートだぞ?」

「結びの考察ガチ勢か、面白いじゃん……私が忘れてる設定も書かれてそう」

「ありうるな」

『盆踊りで封じられる神様ってなんやねん……は?』


 動画は縁がスファーリアに告白するシーンなのだが……


『おいまてぇい! 告白するとは聞いてへんでぇ!? 私の考察ノートに刺激与えるとはやるじゃねーか! って! 威勢が良い事言っといて死んどるぞ! 根性見せろ……は? 推しが告白に返事をした!? どうゆうこっちゃ!? おお!? 何か立ち上がったぞ? ここらへんは彼氏に聞いとこー……んんんんんんんんんんん!? 縁と推しが昔会っていただと!? 初情報じゃねーか!? つまり私のノートがまるまる書き換わる可能性が!? ふっははははは! ええぞええぞ! まるで石版を解読しているような楽しみだ! ほほう、界牙流二代目の技を使うとな? なるほど縁結びの神なら凄まじい威力だろう……うんうんなるほどな、これは情報が更新される』


 長谷川と荒野原が何か言う前にクラユリの情報量が多く、2人が何か言う暇が無かった。

 早口言葉の様に喋り、自作の考察ノートとにらめっこをしながら新しいノートに書く。

 事典を見ながら勉強する学生のようだ、やっている事はキャラクターの考察な訳だが。


「クラユリさんは考察勢なのね~」

「いやいや、すげぇ人だな……」

「で? この人達に何をすればいいの? 私達を好きだという熱意は伝わった、自キャラ好きと言われたらねぇ、長谷川君は?」

「俺も同じ意見だよ、まあ俺達が出来る事は少ないが……」

「いや、やってもらう事は簡単だ、サプライズでゲーム内のイベントに出でくれないかとな」

「ほうほうどんなのさ」

「運営が用意したささやかな五周年記念配信ってやつだ、シナリオは運営が用意する」

「ははん? おもしろそうじゃん」

「いいね」

「ってもまだ企画の企くらいしか決まってないがな……ってもこの企画自体半年後くらいなんだけどな」

「ならもうちょい先だね~」

「ああ、詳しい事はまた今度な」


 斬摩はお酒に手を付けると、長谷川君も手を付けた。

 これで運営としてのお願いが終わったからか、少しゆるい顔付きになる。


「ああそうだそうだ、今日のシナリオ誘ってくれてありがとうよ」

「どったのさ?」

「いや……普段の斬銀は殺伐としているんだよ」

「どゆこと?」

「傭兵だから基本的に血生臭い事が多い、大小はあるがな」

「今回は若者達に囲まれて楽しかった?」

「そうそう、簡単に言えば年寄りポジションというか……」

「ああ! つまりは強者感を出しつつ、誰かの助けになりたかったの?」

「……あれ? 斬銀は傭兵の育成にも力を入れてませんでした?」

「ああだが……学生キャラと基本的に交流しないからな」

「ああー基本的に依頼受けて、解決して報酬を貰うから?」

「そうそう、こう未来ある若者と絡む機会がね」

「お、だったら私にいい考えがある」

「んん? 何だ何だ」

「それはね~」


 こうして次に向けての話し合いが続くのだった。

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