色鳥からの連絡を受けて、縁達は神社へと向かう。
「……ほう? これはまたひでーな?」
「罰当たり」
「どういう神経してるのでしょうか?」
縁達が見たのは、見るも無残な神社の姿であった。
「縁!」
先に来ていた色鳥が縁達に近寄って来た、その場にはグリオードと麗華、いずみが居た。
「俺がここに来た時にはもう壊れていた」
「色鳥、何か用だったのか?」
「お前と絆の事だ、また神社が雑草だらけになつてるんじゃないかと、グリオード達と来たらこれだよ!」
「ま、いずみは知ってそうだがな」
「はい、先に教えた方が良かったですか?」
しれっとそう答えたいずみ。
「いやいい、神が人間の手のひらで踊らされてたまるか」
「おやおや――」
「縁! 縁は居るか!? 色鳥から連絡を貰ったんだが!」
階段の方から声が聞こえて来て、この凄い勢いで斬銀が走ってきた!
斬銀は神社の悲惨さを目の当たりにした後、縁が目に入った。
そのまま縁に近寄って、目の前で土下座をした!
「縁! いや!
あの斬銀が涙を流し震えている、その様子を見たスファーリアは絆にコッソリと聞いた。
「あの斬銀君が本気で怖がってるんだけど、どうして?」
「この神社はお兄様の怒りを鎮める為に建てられました」
「壊れたって事は……あ、約束が破棄されたって事?」
「ええ、原因がどうであれですわ、そして、今のお兄様が暴れたら手がつけられません」
「なるほど」
縁は悲しそうな顔して、斬銀の目の前でしゃがんだ。
「止めてくれ斬銀さん、恩人の貴方に、神として脅えらると……悲しくなる」
「……元々の約束は俺がここで、神社を守る事だった」
「それは俺が、もういい好きにしろって言ったでしょ?」
「……」
「俺はこの神社のおかげで変わったんだ、いや、貴方が俺を正しい方向へと変えてくれたんだ、だから、土下座は止めてくれ、頼む」
「……わかった」
斬銀は力無く立ち上がった。
「この神社をぶっ壊した奴だけは……絶対幸せにしてやる」
縁は今まで見せた事ない、世界の全てを恨んでいるような顔をした。
「俺と結びさんが幸せを祈った神社だ、その神社を潰すって事は……俺達の願いを潰すっ事だ」
「……お兄様」
「それに俺の恩人になにさててんだ……人間の愚かさには感心する」
右手が全ての怒りを表すかのように、震えている。
スファーリアは無表情でその手を両手で包んだ。
「待って、縁君」
「……何?」
スファーリアに対して睨みを効かせる縁。
「神社をぶっ壊した奴らは絶滅するとして、後の事考えないと」
「……後?」
「お祭りするんでしょ? 神社復興しないと」
「ああ? ああ……そうだね」
「よし! ここの土地は誰名義?」
「え!? グリオードに任せているよ?」
縁は予想外の質問に、豆鉄砲をくらった顔をする。
それを聞いたスファーリアは、グリオードに近寄った。
「グリオードさん、保険とか入ってる?」
「あ、ああ、もちろんだとも」
「よし、だったら拝殿だけじゃなくて、本殿も建てて、お土産売る場所とか、参拝者の手を洗う場所とか、由来の立て看板とか立てましょ!」
「ほう? 由来の立て看板? これは私の出番では?」
いずみは自信満々にメガネをクイっとした。
「色鳥君!」
「今度は俺か? どうしたよ?」
「お祭りってどんな事してるの?」
「普段は露店出して、花火打ち上げて終わり……かな?」
「多分今年は普段より沢山人が来ると思う」
「ははーん、俺に催し物を考えろと」
「そそ、必要な物が有れば言って? ポケットマネーで出す」
「いやいや、大丈夫だスファーリアさん、予算は我が国で用意してある」
「国家予算で好き勝手!」
「それは流石に問屋は下ろしません、スファーリア様」
「ほら、斬銀君もこっち来て」
「俺もかよ」
和気あいあいとお祭りの準備の話をするスファーリア達。
あっけに取られている縁に絆がフッと笑った。
「助かりましたわね? お兄様?」
「ああ、また皆を巻き込む所だった、怒りは敵にぶつければいいからな」
縁はゆっくりと深く深呼吸をする。
「ここは斬銀さんが俺を変えるきっかけを作ってくれた神社で、結びさんと幸せになるって約束した場所だ、ここで怒り狂うのはダメだな」
「お兄様、今回はお任せしても?」
「ああ、皆についてけ」
「承知いたしましたわ」
絆は優雅に一礼するとスファーリア達の方へと歩いた。
「よし、これからグリオードさんの応接室で会議だ!」
「スファーリア様、急ではありませんか?」
「まあいいじゃないか麗華さん、鉄は熱いうちに打てだね」
「承知いたしました、グリオード様」
いずみがひょっこりと縁に近寄った。
「ここを襲ったのは、隷属の神を信仰していたあの3人です」
「あいつらか」
「まずは、私の教育が無意味に終わった人物がいいかと」
「名前は忘れたが、アイツか」
以前縁と麗華といずみで幻の街に行った時の話。
麗華とルナの真剣勝負に水を差し、いずみに自分がどれだけ愚かか叩き込まれたはずの人物。
隷属の神を信仰している、
「場所はわかります?」
「運よくな」
「そうですか、そちらは任せました、こちらは任せて下さい」
「ああ、任せたぜ」
いずみは軽く会釈をしてスファーリア達の元へ。
縁に挨拶も無しにスファーリア達は、グリオードの国へ転移魔法を使って移動をしたようだ。
ほぼ同時に縁の後ろに風月が現れる。
「来ていたのか? 風月」
「そりゃね~スファーリアとは一心同体だしね~? 何が起きたかは知ってるし、今すぐ暴れたい」
「んじゃ行くか? 暴れに」
「お、ノリノリだねぇ~」
「ああ、報いを受けて貰う」
縁は黒いジャージを取り出して、早や着替えのマジックショーのようにパッと着替えた。
「おっ黒いジャージ縁になった」
「これは俺が昔、神としてイキり散らしてた時に使ってたモノだ」
「いいじゃん! 私と縁の願いを潰した奴らに容赦はいらないよ~ついでに斬銀」
「風月もやる気満々だろ?」
「もちろん! 界牙流四代目として同行するよ」
「わかった、なら俺も神として行くかね」
2人は互いの顔を見て笑った後、真面目な顔になる。
「さあ、人間達よ……幸せの時間だ」
そう言うと縁はその場から消え、風月もそれを追って消える。