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第七話 演目 約束と予期せぬ出来事

 過去の父の旋を待つ事数分、血相を変えて走ってやって来た!


「あ、お父さんだ!」

「縁、何があったんだ!?」


 縁はスファーリアにアイコンタクトを送る。


「絆ちゃん、音楽は好き?」

「うん、絆はこれでも神様だから、音楽とは深い関わりがあるんだよ!」


 スファーリアに慣れたのか、少々小生意気な事を言っている。

 が、本人はよくわかってはいないだろう。


「私、音楽の先生をしているの」

「音楽の……先生!?」


 絆は目を輝かせてスファーリアを見ている。

 スファーリアはマラカスを召喚して、絆に渡した。


「これなーに?」

「絆を奏でるマラカス、マラカスっていう楽器ね」

「絆? 私と同じ名前だ!」


 マラカスを受け取った絆は、しっかりと握りしめて振った。

 シャッシャッと、楽しそうな音が鳴る。


「面白い!」

「いい音よ絆ちゃん」

「褒められた~」


 和気あいあいとしている2人から離れて、縁と旋は話していた。


「父さん、絆が通っている学校は大丈夫なのか?」

「ああ、教職員のほとんどが俺の古い知り合いで、訳ありの子供達を熱心に教育してる奴らだ」

「て事は、外部の人間の仕業か」

「何があったんだ?」

「絆の筆箱が盗まれた様だ、生徒か教職員に変装したかは知らんが……絆を殺す為にここまでするか」

「……縁、俺は親としてお前に、人は殺すなって言ったんだよな?」

「ああ、俺が子供の時にね」

「お前、今子供は居るか?」

「居ないよ」

「将来授かる予定は有るか?」

「そうなったらいいね」

「親はな、大切な子供の為なら何だってするんだ、容赦するなよ」


 旋は自分の心意気を託す様に縁の肩に手を置いた。


「ああ」

「安心しきってた、出掛けるんじゃなかったぜ」

「用事?」

「ちょいとお祝いの品を手渡しにな、ま、その話は置いといて……絆を助けてくれてありがとうな」

「いいよ、ここで助けてなかったら、間違いなく道を外れていた」

「どういう事だ」

「そこの伸びてる男を見てみ」


 旋は縁に首を掴まれた男を調べた。


「確実殺す気で首を絞めてるな」

「道を外れなくてよかったよ」 

「こりゃ途中で止められたな? じゃなきゃ生きてるはずがない」

「スファーリアさんに止められた」

「絆の前だからか」

「ここに誘い込んだ元凶は絶滅させるとさ」

「ドレミドさんに連絡したって事か?」

「ああ」

「正直助かる、敵が多すぎるんだよ」


 縁はその言葉を聞いて、改めて自分と絆が迷惑の原因と自覚した。


「……ありがとう、父さん」

「いいんだ、原因は俺にもあるからな」

「え? そうなの?」

「神様と結婚しちまったからな……それ相応の事が有るとは覚悟していたが」

「予想を上回ってた?」

「ああ、ただお前や絆がそれを気にする事じゃない」


 旋は自信に満ちた目で縁を見た。


「産まれた可愛い子供を守るだけだ、お前を見る限り、絆も未来では幸せになるんだろな」

「今更だけど、父さんって驚かないよね、未来の息子が来ても」

「はっはっは、縁考えてみろ? 神と結婚した男だぞ? 不思議な出来事は沢山経験している」

「あーそれを言われると納得する」


 過去の父と雑談をしていると、スファーリアがアイコンタクトを送って来て、縁は頷いた。

 スファーリアも頷いて縁に近寄ってきた。


「縁君、そろそろ帰りましょう? 私達に出来ることはしたし」

「ああ」

「お姉ちゃんもう帰るの? もっと一緒に居たい」

「また会いましょうね、約束」

「あ! 絆お姉ちゃんの学校に行きたい!」

「私の学校は大人が入る学校だから、貴女が大きくなったら来なさい、待ってる」

「本当? 約束ね! あ、このマラカス返すね!」

「あ、それと今日会ったのは、この時代のお兄ちゃんには秘密ね?」


 マラカスを受け取りながらそう言う。


「どうして?」

「お兄ちゃんが恥ずかしがるからよ」

「そうなの? お兄ちゃん?」

「ああ、秘密にしてもらえるかい?」

「じゃあお姉ちゃん、絆、約束守るから、お姉ちゃんも守ってね!?」

「もちろんよ」

「じゃあゆびきり~」


 スファーリアと絆は、笑いながらゆびきりをした。


「またね、絆ちゃん」

「うん、またね!」


 縁とスファーリアは光に包まれて消える。


 小さい部屋に大きな古ぼけている鏡、そこで絆は過去に行った縁達を待っていた。


「そろそろ帰ってくるかしら?」


 鏡の前に光に包まれながら縁達が現れた。


「お帰りなさい、お兄様、お姉様」

「ただいま、絆ちゃん」

「お姉様、私、待ってる間思い出した事がありまして」

「私がついさっきしてきた約束かな?」

「ええ、私からしたら10年以上たってますが」

「学校に入学する?」

「ええ、私、思春期はまともな学園生活を送れませんでしたので」

「私の学科は戦闘科だけどいい? まあ座学も有るけども」

「もちろんです、あの時の筋肉ムキムキに手も足も出なかった事に、後々苛立ちを感じていましたので」

「あの時の斬銀さんの事か」


 縁が愛を叫んだあの時、絆はスファーリアの治療に専念していたとはいえ、何も出来なかった事を悔やんでいるようだ。


「この『絆』という名前に、負けない力を付けてお兄様達の事をお守りいたしますわ」

「頼もしいな」

「帰ったら学園の説――」


 スファーリアが喋っている時に、縁の鞄から警報の様な音が鳴る!


「緊急連絡? 誰だ?」


 縁は連絡様に使っている長方形の物を取り出した。


「色鳥か? どうした?」

『縁か!? 今すぐ神社に来い! お前達の神社が滅茶苦茶にされている!』

「ああ!? わかった!? すぐに行く!」

「どうしたの縁君?」

「俺と絆の神社をぶっ壊されたらしい」

「神社に行きましょうお兄様」

「ああ!」

「私も行く」


 3人は何の予兆も無くなその場から消える。

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