過去の父の旋を待つ事数分、血相を変えて走ってやって来た!
「あ、お父さんだ!」
「縁、何があったんだ!?」
縁はスファーリアにアイコンタクトを送る。
「絆ちゃん、音楽は好き?」
「うん、絆はこれでも神様だから、音楽とは深い関わりがあるんだよ!」
スファーリアに慣れたのか、少々小生意気な事を言っている。
が、本人はよくわかってはいないだろう。
「私、音楽の先生をしているの」
「音楽の……先生!?」
絆は目を輝かせてスファーリアを見ている。
スファーリアはマラカスを召喚して、絆に渡した。
「これなーに?」
「絆を奏でるマラカス、マラカスっていう楽器ね」
「絆? 私と同じ名前だ!」
マラカスを受け取った絆は、しっかりと握りしめて振った。
シャッシャッと、楽しそうな音が鳴る。
「面白い!」
「いい音よ絆ちゃん」
「褒められた~」
和気あいあいとしている2人から離れて、縁と旋は話していた。
「父さん、絆が通っている学校は大丈夫なのか?」
「ああ、教職員のほとんどが俺の古い知り合いで、訳ありの子供達を熱心に教育してる奴らだ」
「て事は、外部の人間の仕業か」
「何があったんだ?」
「絆の筆箱が盗まれた様だ、生徒か教職員に変装したかは知らんが……絆を殺す為にここまでするか」
「……縁、俺は親としてお前に、人は殺すなって言ったんだよな?」
「ああ、俺が子供の時にね」
「お前、今子供は居るか?」
「居ないよ」
「将来授かる予定は有るか?」
「そうなったらいいね」
「親はな、大切な子供の為なら何だってするんだ、容赦するなよ」
旋は自分の心意気を託す様に縁の肩に手を置いた。
「ああ」
「安心しきってた、出掛けるんじゃなかったぜ」
「用事?」
「ちょいとお祝いの品を手渡しにな、ま、その話は置いといて……絆を助けてくれてありがとうな」
「いいよ、ここで助けてなかったら、間違いなく道を外れていた」
「どういう事だ」
「そこの伸びてる男を見てみ」
旋は縁に首を掴まれた男を調べた。
「確実殺す気で首を絞めてるな」
「道を外れなくてよかったよ」
「こりゃ途中で止められたな? じゃなきゃ生きてるはずがない」
「スファーリアさんに止められた」
「絆の前だからか」
「ここに誘い込んだ元凶は絶滅させるとさ」
「ドレミドさんに連絡したって事か?」
「ああ」
「正直助かる、敵が多すぎるんだよ」
縁はその言葉を聞いて、改めて自分と絆が迷惑の原因と自覚した。
「……ありがとう、父さん」
「いいんだ、原因は俺にもあるからな」
「え? そうなの?」
「神様と結婚しちまったからな……それ相応の事が有るとは覚悟していたが」
「予想を上回ってた?」
「ああ、ただお前や絆がそれを気にする事じゃない」
旋は自信に満ちた目で縁を見た。
「産まれた可愛い子供を守るだけだ、お前を見る限り、絆も未来では幸せになるんだろな」
「今更だけど、父さんって驚かないよね、未来の息子が来ても」
「はっはっは、縁考えてみろ? 神と結婚した男だぞ? 不思議な出来事は沢山経験している」
「あーそれを言われると納得する」
過去の父と雑談をしていると、スファーリアがアイコンタクトを送って来て、縁は頷いた。
スファーリアも頷いて縁に近寄ってきた。
「縁君、そろそろ帰りましょう? 私達に出来ることはしたし」
「ああ」
「お姉ちゃんもう帰るの? もっと一緒に居たい」
「また会いましょうね、約束」
「あ! 絆お姉ちゃんの学校に行きたい!」
「私の学校は大人が入る学校だから、貴女が大きくなったら来なさい、待ってる」
「本当? 約束ね! あ、このマラカス返すね!」
「あ、それと今日会ったのは、この時代のお兄ちゃんには秘密ね?」
マラカスを受け取りながらそう言う。
「どうして?」
「お兄ちゃんが恥ずかしがるからよ」
「そうなの? お兄ちゃん?」
「ああ、秘密にしてもらえるかい?」
「じゃあお姉ちゃん、絆、約束守るから、お姉ちゃんも守ってね!?」
「もちろんよ」
「じゃあゆびきり~」
スファーリアと絆は、笑いながらゆびきりをした。
「またね、絆ちゃん」
「うん、またね!」
縁とスファーリアは光に包まれて消える。
小さい部屋に大きな古ぼけている鏡、そこで絆は過去に行った縁達を待っていた。
「そろそろ帰ってくるかしら?」
鏡の前に光に包まれながら縁達が現れた。
「お帰りなさい、お兄様、お姉様」
「ただいま、絆ちゃん」
「お姉様、私、待ってる間思い出した事がありまして」
「私がついさっきしてきた約束かな?」
「ええ、私からしたら10年以上たってますが」
「学校に入学する?」
「ええ、私、思春期はまともな学園生活を送れませんでしたので」
「私の学科は戦闘科だけどいい? まあ座学も有るけども」
「もちろんです、あの時の筋肉ムキムキに手も足も出なかった事に、後々苛立ちを感じていましたので」
「あの時の斬銀さんの事か」
縁が愛を叫んだあの時、絆はスファーリアの治療に専念していたとはいえ、何も出来なかった事を悔やんでいるようだ。
「この『絆』という名前に、負けない力を付けてお兄様達の事をお守りいたしますわ」
「頼もしいな」
「帰ったら学園の説――」
スファーリアが喋っている時に、縁の鞄から警報の様な音が鳴る!
「緊急連絡? 誰だ?」
縁は連絡様に使っている長方形の物を取り出した。
「色鳥か? どうした?」
『縁か!? 今すぐ神社に来い! お前達の神社が滅茶苦茶にされている!』
「ああ!? わかった!? すぐに行く!」
「どうしたの縁君?」
「俺と絆の神社をぶっ壊されたらしい」
「神社に行きましょうお兄様」
「ああ!」
「私も行く」
3人は何の予兆も無くなその場から消える。