今日は過去の絆を助けに行くという、ロールをする為に集まった長谷川、荒野原、あゆさ。
ログインをしてロビーに集まった。
「今日の流れはどんなのなんだ? 妹よ」
「ん? 簡単だよ? 過去の絆ちゃんを助けに行くのだよ」
「いつもながら説明簡単だな」
「ガチ勢の兄貴と姉貴ならこの説明で十分じゃん」
「せめて入りを教えてくれ」
「再び過去にワープした縁達、付いたのはまた森の中! 絆を助けろと言われたけど場所がわからない、だがその時悲鳴が聞こえたのだった!」
「わかりやすい導入だ、また過去から始まるのか?」
「うん、カット出来る所はカットしよう」
「了解」
「んじゃ、準備が有るから少し待っててから開始よろしく」
絆はそれだけ言うと、メニューを操作して消えた。
「さてさて、今日はどんなお話になるんやら」
「過去の絆ちゃんを助けに行くお話」
「まあそうなんだけど」
「どんな色……いや、音にするかは私達次第よ?」
「そうだな」
「ん? 準備出来たみたい」
メールを確認するスファーリア。
「早いな、よし行くか」
「うん」
2人はメニューを操作して、その場から消えた。
縁とスファーリアは運命に導かれ、再び過去へとやって来た。
また森に放り出された2人は辺りを見回す。
「また森か」
「場所は違うようだけどね」
「ささっ絆を――」
「お兄ちゃん! 助けてー!」
森全体に響き渡るような幼い女の子の声が響いた。
「今の声って!」
スファーリアが縁を見た時には、もうその場には居なかった。
悲鳴が聞こえた方向へ、トライアングルに乗って向かう。
その聞こえた方向では。
「鬼ごっこはおしまいだ、お嬢さん」
「小さいとはいえ不幸の神、油断するなよ」
「ま、ささっと片付けましょ」
大人3人に追い詰められた小さい絆が怯えていた。
黒い着物を着た絆は泣きながら頭を抱えている。
「絆、悪い事してないのに! 何で絆を殺そうとするの!」
「お前さんは生きてるだ――」
「おいゴミ、俺の妹に何するんだ?」
絆を守る様に立ちはだかった縁は、一番近い男を思いっきり蹴った。
蹴られた男は有無を言わさずぶっ飛ばされて、木に激突する!
「なんだてっ! むぐぅ!」
「死ね」
縁はボケっと突っ立っている男の首を、右手で握り潰すように持った。
それと同時に、トライアングルの音が響き渡る。
絆を襲おうとしていた輩は全員気絶した。
「縁君落ち着いて、小さい絆ちゃんの前でそれ以上はダメ」
「……すまねない」
ゴミを捨てる様に持っている男を投げた。
絆は脅えながら縁達を見ている。
「絆、大丈夫か?」
縁は優しい笑顔をしながらしゃがみ、目を合わせるが……。
「ひっ!」
絆は後退りする、その反応を見て自分の行動が軽率だったと痛感した。
「縁君、怖がってるじゃない」
「……反省する、てか凄い後悔している」
過去とはいえ、実の妹に拒絶されてしょぼくれる縁。
「……え? 縁? それにこの知ってる運気……お兄ちゃん?」
「ああ」
「本当にお兄ちゃん? 何で大きくなってるの?」
「ずっと未来から絆を助けに来た……っても簡単には信――」
「おにぃぢゃーん!」
絆は泣きながら縁に飛びついて来た!
無き止むまで待ってあげる事に。
「お兄ちゃんだお兄ちゃん! この運気はお兄ちゃん!」
安心しきった絆は縁に抱っこされていた。
「絆、どうしてこの森に?」
「……筆箱隠されたから」
その一言を聞いて縁は鬼の形相になる。
「縁君、落ち着いて? そういうのは、この時代のお母さんに任せましょ?」
「え?」
「それくらいの覚悟があって……絆ちゃんにちょっかいかけてるんでしょ」
スファーリアはトライアングルを叩いた、それを興味深々に見る絆。
「お姉ちゃんはだあれ? あれ? 結びお姉ちゃんと同じ運気がするんだけど?」
絆は首を傾げながらスファーリア見る。
結びという発言に縁ははビックリしていた。
「絆、結びを知っているのか?」
「もちろん、お兄ちゃんも一緒遊んだの覚えてないの?」
「あまり覚えてない」
「一緒に遊んで、かいがりゅう? の技教えてもらってたよ?」
「ああ……ただの蹴りか」
「そうそう! それ以外にもかくれんぼしたり色々としたよ? でも、修行が忙しくなるなって言って、来なくなったの」
楽しそうに思い出を語る絆に、2人も自然と笑顔になる。
「でもお姉ちゃん不思議な感じになっちゃったね? 上手く言えないけど」
「今の私はスファーリア」
「す、すふぁー?」
「結びでいいよ」
「わかった!」
「よし縁君、絆ちゃんをささっと安全な場所に」
「いや、兎術を使って父さんに連絡しよう、下手に動いて絆に何かあると自制出来ない気がする」
「だね」
「兎術」
白い兎が現れて走り去っていった。
「あ、絆の筆箱も探さなきゃ」
「そうそう絆、筆箱ってこれか?」
縁は鞄から黒い兎の形をした筆箱を取り出した。
「何でお兄ちゃんが持ってるの?」
「この森に来てまたまた見つけたんだよ」
「ありがとうお兄ちゃん!」
筆箱を受け取った絆は最高の笑顔をしていた。
父親が来るまで、その場に待っている事に。