目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報
第六話 幕切れ これからと過去

 縁達は隊員達の介抱を終えて話を聞いた。

 副隊長曰く、自分達は組織のやり方についていけず、部隊全員で上手く抜け出すはずだった。

 しかし、隊長が消息不明になり、別の隊長が急遽来て、そこから記憶がない事等々。


「なるほど、そいつは大変だったな」

「記憶が無いとはいえ、貴方達とこの街の方々には、謝りきれない事をしてしまった」

「それでもあやまらねーとな、俺もついてってやるから」

「感謝します」

「斬銀、この人達の隊長を探すのを手伝ったらどうだい?」


 幽霊に戻った隼士は斬銀の肩に手を置いた。


「この部隊に伸びしろを感じる、これも何かの縁って奴でさ」

「へっ、仕方ねぇな」

「はい?」


 隼士の声が聞こえていない副隊長は首を傾げた。


「お前らの隊長探し、俺も手伝ってやるぜ」


 その言葉に隊員達はざわざわし始める。


「お恥ずかしい話、助太刀して頂きたい……今の私達は何の力も無い」

「よし、面倒見てやるぜ、てか恥ずかしくないだろ? 今の置かれている状況をちゃんと把握してるならな」

「事が終わったらお礼を」

「いらん」

「ですが!」

「……お前達の部隊の信念、隊長や副隊長のお前さんが掲げた目標は?」

「悪い強者から弱者を守りたい、弱者のふりをする者から罪のない強者を守りたい」

「よし、世間の風当たりが冷たかろうが、その目標を達成しな! それでいい」

「名の有る御じ……失礼、自己紹介がまだでした、私はフレミー・ブレシング」

「俺は斬銀、んじゃまずはラクギアの街に謝罪しに行くか、話はそれからだ」

「はい」


 隊員達を待機させ、4人はラキアグ街へと入っていく。


「俺達は警備に話付けてくる、今日はここで解散だな」

「はい」

「んじゃ、またな」


 斬銀はフレミーと歩き出す、隼士はその背中を見て思い出にふけっていた。


「さて、私もそろそろ冥界に帰らせてもらうよ」

「お疲れ様です、隼士さん」

「縁さんもね、今日はありがとうございます、久しぶりに生きた心地がした」

「簡易的にとはいえ、生き返りましたからね」

「はは、これからも斬銀を気にかけてやってくれ」

「はい」

「では」


 隼士はにこやかに笑って消えていった。

 一人残された縁は寂しいそうな顔をする。

 鞄から顔を出している合縁奇縁が、縁の袖を口で引っ張る。

 縁が見ると顔で合図をしている、その方向を向くと。


「縁や、厄介事に巻き込まれてるのー?」


 ブルモンド・霊歌が立っていた。

 手には黒いジャージの上下を持っている。


「ブルモンド・霊歌さん、お久しぶりです」

「お前にそろそろ……こいつを返してもいいと思ってな?」


 持っていた黒いジャージを縁に渡した。

 受け取った縁は後ろめたさを、顔に出して見ていた。


「……これは」

「最近、嘆かわしい神が増えたとは思わんか?」

「……」

「自らの力を高める為に異世界から、無知な者を従者にしている、ワシがその方法を気に食わないだけかもな」

「信仰心は質です、数多の心のこもっていない気持ちを崇拝させても意味がない」

「では何故やるのじゃ?」

「信仰心が高まるのを辞められないからですね、新規を取り込むのも大事だけど、維持する方が重要で難しい」

「ふーむ……小腹がすいたからスナック菓子を食べ、満足したが少し経てばまた小腹が減ると?」

「感覚ではそれに近いですね、ちゃんと満足したいならしっかりとご飯を食べればいい」

「……縁や、そんなふざけた神々を滅ぼしてくれないかえ?」

「また難しいお願いをしますね」

「ここを襲撃したジャスティスジャッジメントも、神の仕業なのだろう?」

「ええ、前にここに来た時の神が糸を引いているようです、俺の不始末です」

「何を言っとるんじゃ?」


 ブルモンド・霊歌は鼻で笑った。


「神に頼ってばかりでは、最近世間を騒がしている転移、転生者と同じではないか?」

「……」

「この街の事は出来る範囲でみんなでやるよ、ダメだったら縁に頼るよ」

「わかりました」

「して、そのジャージを返した理由だがな?」

「はい」

「今のお前さんなら、無闇に自分の力を使わんじゃろ?」

「もちろんです」

「しかしだ、なめられるのも考えものじゃろ?」

「まあ、いちいち気にしてられませんがね」

「ワシはな? 自分の好きな神がよくわからん奴らに、好き勝手言われるのが腹立つのじゃ」

「それ霊歌さんがムカついてるだけでは?」

「何言っとるんじゃ、気にしてないとは、我慢してるだけじゃろ?」

「まあ……」

「だったら、暴れるのも一興じゃ」

「昔は止められたのに」 

「それは無差別に力振るってたからじゃろ」

「このジャージを見ると古傷が痛む」

「ふっふっふっ、長話悪かったの、我慢は毒、とだけ言ってばばぁの用事はおしまいじゃ」


 言いたい事を言ってブルモンド・霊歌はゆっくりと歩いて去っていった。


「我慢は毒……か、ひと暴れするんだったら、結びさんに相談しないとな」


 縁は黒いジャージを鞄に入れた後、光に包まれて消えた。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?