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第六話 幕開き その出会いは合縁奇縁

 縁と斬銀は雑に舗装された道を歩いていた。

 斬銀の親友が眠っている墓へ行くためだ。


「すまねぇな縁、親友の墓参りに付き添ってもらってよ」

「いやいや、いいですよ」

「おお見えた、あれだ」

「おや? 誰か居ますよ?」


 目的の墓に既に先客が居てその人は透けていた。

 その人物は縁が過去に行った時と同じ服装と容姿をしている。

 オールバックで動きやすそうな戦闘服、そして見るからに年齢が若い。


「よう隼士、久しぶりだな」

「おお斬銀、今年も墓参りありがとうな」

「いいってことよ」


 斬銀と隼士は熱い握手を交わした。


「斬銀さん、この人は?」

「この間病室で話した、俺の親友だよ」

「ああ、幽霊になったという」

「君が縁さんかい? 話は斬銀から聞いているよ」

「初めまして」

「よろしく」

「んじゃ、墓掃除をさっさと終らせて行くか」

「何処にですか?」

「今日は冥界でお祭りがあるんだ」

「お、お祭り!? 縁日って事?」

「縁も冥界の事情は知らないか」

「流石に死者の国は知らないよ」

「まあ、入るには資格が色々と居るんだが、隼士の口添えが有れば大丈夫だろ」

「隼士さんて凄い人なんですか?」

「冥界の平和を守ってる隊長さ」

「と言っても位は下の方だがね」

「行ってみたいです、死者の国のお祭り」

「よし、墓掃除頑張るか」


 縁とち斬銀はささっと掃除をして、花や団子を捧げた。


「まあ、こんなもんだろ」

「2人共ありがとう、んじゃ、冥界へご招待しよう」


 隼士は手を叩くと天へと続く、透明な階段が現れた。


「この階段を上がれば冥界さ」

「行こうぜ」


 3人は階段を登り冥界へ。

 着いて直に目に入ったのは、煌びやかなお祭りの会場。

 一般的なお祭りの雰囲気となんら変わりなかった、店番やお客が幽霊だったり、死人だったり、骨だったりする以外普通だ。


「おお、ここが冥界! ってなんか華やかですね」

「暗いイメージが有ったかな? 私も死んで来た時は衝撃的だったよ」

「今日は縁の行きたい所に行こうぜ」

「パッと見た感じ色々と屋台が有りますが……って、流石に冥界のお金はありませんよ?」

「私が払おう、斬銀の飲み食い代よりは安いだろう」

「すみません」

「いいんだよ、見て回ろうか」


 隼士を先頭に歩き出そうとした時、縁は何かを感じてキョロキョロし始めた。


「これは?」

「どうした縁」

「いや、なんか向こうから呼ばれる感覚が」

「お、何だ何だ、行ってみようぜ」


 縁は迷うことなく歩き出して、斬銀達はそれに続く。

 様々な動物達が沢山居る出店で縁は足を止めた。

 動物達は檻に入れられてるが、幽霊の様に透けている。


「おやおやいらっしゃい、未練を持って死んでしまった動物達の出店にようこそ」

「この店に何か運命を感じたんだけど」

「少々お待ちを……」


 店主は品定めをするように動物達を見た。


「ああ、この子ですかね?」


 店主が抱っこして縁に見せたのは、赤色が血だらけ模様に見える白い兎だった。

 その兎は悲しそうな顔で縁を見ている。


「このこは生前、この身体の模様で愛される事無く死んでしまった兎」

「模様で? 何時の話ですか?」

「何世紀も前の話ですよ」

「ふむ、それくらい前ならその価値観でも仕方ないか」

「どうですか? 縁起えんぎ身丈みのたけ白兎神しろきうさぎのかみえにし様、この子を幸せにしてやってくれませんかね?」

「……冥界だからわかるのか?」

「噂は色々と、で、どうなされます?」

「これも何かの縁ってな、いくらなんだ?」

「いやいや、お代は結構です、その子の未練が少しでもなくなるのであればね」

「俺の所に来るかい?」


 兎は有無を言わずに縁に飛びついた!

 縁は抱きとめると、器用に縁の鞄の中に入って頭だけ出す。


「ほお? なかなか可愛げがあるじゃねーか」

「ふむ、兎の神だけあるね、その子も安心しているようだ」

「で縁、名前はどうすんだ?」

「うーむ……合縁奇縁あいえんきえんとか」

「あいえんきえん? 意味は何か有るのか?」

「ふむ、合縁奇縁は色々と当て字があり、いい意味にも悪い意味にもなる」

「簡単に言うとなんなんだ? 隼士」

「その縁が良いか悪いかは知り合ってみないと分からない……かな? 少々違うかもしれないけどな」

「ほー中々考えさせられる名前だな、ただ長くないか? 愛称作ろうぜ」

「うさちゃんとか?」

「おいおい、安直じゃーねか?」

「いや、本人は気に入っているぞ?」

「ええ?」


 斬銀が合縁奇縁を見ると、自信満々な顔をしていた。


「まあいいか、他にも出店は有るんだ、見て回ろうぜ」

「ああ……お爺さんありがとう」

「いえいえ、こちらこそ」

「お、そうだ出店で名物が有るんだ、付いて来てくれ」


 隼士を先頭に一同は歩き出す。

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