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第五話 幕切れ また過去へと来るらしい

 追手を絶滅した一行は無事に目的地に到着したのだった。

 そこは捨てられた村で、朽ち果てていた。

 目立つ小さい教会も、時の流れを感じさせている。


「さ、ついたぜ」

「父さん、随分と寂れた村だね」

「元々は廃墟だからな、雇った護衛と家族しか居ない」

「逃亡生活中?」

「まあな、妻が神達が居る所に居たくないとさ」

「どうして?」

「そりゃ神様は神様で子供達を狙ってる奴らが居るからさ」

「なんで?」

「人間と変わらんよ、目障りだったり色々とな、地上に居るのはおいそれと神様は手をだせないからさ」

「……なるほど、神同士が争う、最悪地上が壊滅、人が減り信仰心が無くなるって所か」

「よくわかってるな、お前も苦労したのか……いや、これからするのか」

「苦労しないで生きるって無理でしょ」

「うん……いやまあ、そうなんだがな?」

「おう旋さん、帰ってきたんだな」


 若い男2人組が気さくに話しかけてきた。


「え? 斬銀さん?」


 昔の斬銀は筋肉ムキムキではなく、若々しい冒険者といった感じで、もう一人の方が全身鎧で、見るからに筋肉質だった。


「なんだ、知り合いか斬銀?」

「いや? 初対面だが?」

「って事は俺達傭兵コンビ『前列』の名前も、多少は知れ渡ったって事だな?」

「だな、旋さん俺達は周辺を見回りしてくるぜ」

「よろしく頼む」


 斬銀達は村の外へと出て行く。


「縁、お前斬銀さん達を知っているのか?」

「……俺の恩人だ、この時から多少なりと関わりがあったのか」

「彼らとの契約はあと数日で終わる」

「そうなんだ」

「さ、ぼろいけど入ってくれ」


 教会の中に入ると、椅子に座っている絶世の美女の言葉が似合う女性と、抱っこされている女の子の赤ちゃんに、母親にぴったりとくっついている男の子が居る。


「良く来ましたね、縁、スファーリアさん、ドレミドさん、おかえりなさい、あなた」

「うぃーただいまー雫、ちょっと着替えてくるぜー」


 旋はそう言うと奥に消えていった。


「ドレミドさん、ありがとうございます、息子と夫を守っていただき」

「あらいいのよ、私は私で娘の幸せを守っただけだから」


 ドレミドは自前のトライアングルに乗って雫に近寄った。


「聞きたいのだけれど、貴女達の幸せを邪魔する輩ってまだまだ居るのかしら?」

「はい」

「なら私が絶滅するわ」

「敵は多いですよ?」

「私は娘の幸せの為にやるだけよ、限界はあってもね」

「直接私が対処出来ればいいのですが、手出し出来ない理由がありまして」

「貴女程の高位の神がおいそれと力を使わない方がいいわ、それに戦うと笑顔を忘れるから、私も最近になってやっと笑えるようになったから」

「2人共、そこに居ないでこっちに来なさい」

「え、あ、うん」


 縁とスファーリアも雫の方へと歩く。


「絶滅する旅が始まるわね、これから忙しくなるわ」

「もしかして、お母さんが修行の一環として一緒に旅に出たのって」

「そうなるわね、将来、貴女が幸せになるため、敵は滅ぼしておかないとね」

「今更ながらびっくり」

「それは私もよ、未来から娘が婿を見せびらかしに来るなんてね」

「見せびらかし……なのか? 母さん」

「2人にお願いがあったのです」

「お願い? 俺達に?」


 縁とスファーリアはお互いの顔を見た。


「今の私から見て近い将来、絆が危機に晒されてしまいます」

「なるほど、それを俺達がなんとかするのか」

「ええ、身勝手な運命ですが」

「いいよ、俺と絆が『確実に助かる未来』がそれだったんでしょ?」

「そうです、私は縁と共に神として外せない用事に、夫と出かけた絆が、ジャスティスジャッジメントの脅威にさらされます」

「思ったよりヤバかったな、大丈夫……なんだよな? てかジャスティスジャッジメントが絡んでるのか」

「ええ、今の貴方の信仰心なら対処出来るでしょう」

「神の力は理解出来ないね、やっぱり」

「縁、人の言葉で語れるようならその程度の神です」

「ああ」


 過去とはいえ、母親の言葉に改めて納得させられる縁。

 説明や理解出来るという事は、人にその技術があるという事。

 半分とはいえ、神だからこそ人知を超えなければならないと。


「物事が片付いたら、私から贈り物をします」

「ありがとう母さん」

「なら私もあげた方がよさそうね? スファーリア、絶滅演奏術で困ったら過去に来なさい」

「え? おいそれと過去に来ていいの?」

「今の貴女の身体は音でしょ? 音は時代を超えるの」

「なるほど、困ったらくるね」

「それと、母親として困ったら未来の私を頼りなさい、何時か必要になるでしょう」

「その時はよろしく」

「おっ、何だ何だ? 夢のある話か?」


 茶化ながらラフな姿で戻ってきた旋、そこに険しい顔をした斬銀達がやってきた。


「旋さん、近くに怪しい奴らが居た、直に移動した方が良さそうだ」

「わかった準備する、引き続き警戒していてくれ」


 斬銀達は再び外へと出て行く。  


「私達も手伝った方がいい?」

「大丈夫よスファーリア、私が守るから」

「お母さんと斬銀さん達が居れば大丈夫か」

「って事は俺達の役目はここまでだな」

「あれ? 来たのはいいけど、どうやって帰るの?」

「それなら大丈夫だ、俺が知ってるから」

「どうやるの?」

「帰りたいって願うだけ」

「おおう、祈りって万能だね」

「一応神だからな」

「ま、音の私はついていくだけ、早くかえろう」

「だな、じゃあな、父さん、母さん」

「いってらっしゃい」

「未来の俺達によろしくな」

「また来るかも、お母さん」

「その時を楽しみにしているわ」


 縁とスファーリアは手を繋いぎ、光に包まれその場から消えた。

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