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第五話 幕開き 過去の父親と未来の息子

 縁とスファーリアは絆に呼び出されて、過去に行って来いと言われる。

 絆曰く、決められた運命のようだ。

 そんなこんなで軽い気持ちで過去に来た2人だった。


「妹に呼び出されて簡単に過去に来てしまったな」

「何をすればいいんだろうね」

「さあ、何かをすればいいようだけども」

「この森で何かをすればいいの?」


 ふと周りを見れば複雑そうな森に居た。


「縁君、向こうから誰か来る、怪我をしている音を感じる」

「怪我をしている?」


 スファーリアが見た方向を縁も見る。


「なんだ? 先回りされてたってか? 俺もここまでってやつか?」


 その方向から太い枝を杖にして、怪我をしている中年男性が歩いて来た。

 どことなく縁に似ている容赦をしている。


「と、父さん!?」

「あぁ? 俺には息子が居るがまだ三歳だ、娘は生ま……お、お前は縁か?」

「はっ! えっと、あの……」


 父親にすぐさま駆け寄った縁だったが、ここが過去だと思い出して慌ててしまった。


「縁君、ここはお父さんの治療が最優先、警戒は私に任せて」

「そ、そうだな!」


 スファーリアはトライアングルに乗って辺りを警戒し始めた。

 縁は鞄から医療道具を出して父親の治療をする、その最中自分が未来から来た事を話す。

 手慣れた手付きで治療をしてあっという間に終わった。


「そうか……未来から来たのか」

「あまり驚いてないね、父さん」

「あのな、俺は神様と結婚した男だぜ? 不思議体験は腐る程してきた」

「なるほど、説得力がある」

「……今思えば雫の言葉はこういう事だったのか」

「母さんの言葉?」

「『命の危機に息子達』ってさ、走馬灯で息子達を思い出して俺が奮起する! と思ったら物理的に助けに来たってな」

「……もしかすると母さんって、好き勝手している?」

「ああーお前から見て雫がどう見えているかわからんが、かなりな、雫の力が無かったら、俺はここで死んでいたかもな」

「父さんは何をしてこんな怪我を?」

「……大人のお前だったら言ってもいいか、家族の幸せを守るため、難癖付けてくる人間を殺しに行ってたんだよ」

「え!?」


 自分の知ってる過去の父親と印象が違ったからだ。

 子供の時に見た父親の姿は、優しくたくましい印象があったから。

 ビックリした縁だったが、子供の見えない所で父親は、小さい自分達を守ってくれていたんだなと思った。 


「まあ、そりゃビックリか?」

「いや俺が人を殺した時に、父さんと母さんにガッツリと怒られたからさ」

「ん? それ何歳の話だ?」

「十歳くらい?」

「そりゃ怒るな、てか人殺しをする年齢早すぎるだろ、何をしたんだ?」

「絆を傷つけた奴らを殺した、母さんが蘇らせたけどさ」

「なるほどな、ま、親心って事で勘弁してくれ、って、人殺しをした帰り道の……しかも、過去の父親から言われても仕方ないか」

「父さんは誰と戦ってきたんだ?」

「雫の幸せを妬む奴ら、縁をさらおうとする奴ら、絆を嫌い殺そうとする奴ら、色々だな」

「この時から絆は危険に晒されていたのか」

「お前もな、縁」


 父親は未来の息子の肩に手を置いた。

 その顔は晴れやかで、自分がしていく事の自信に満ちている。


「お前が元気って事は絆も元気って事だろう?」

「って父さん、今更だけど、未来の事って言っていいの?」

「まあいいんじゃないか? んな事より縁よ」

「何?」

「一緒に居た絶滅演奏術奏者はお前の恋人か?」

「絶滅演奏術を知ってるんだ」

「まあな、で、どうなんだ?」

「大切な人だ」


 その一言で父親は立ち上がり、縁も続いた。


「よし、だったらつまらない死に方は出来ないな、披露宴に出なきゃならんし」

「気が早くないか?」

「目標があるって事は生きる糧になるんだよ」

「目標って言えば、父さんはこれから家に帰るのか?」

「ああ、今は小さい教会に隠れ住んでいる」

「なら目指すはそこか」

「まずはこの森を抜ける所からだな」

「複雑そうだけど出れるの?」

「まあ、任せろよ」


 父親は道具袋から地図を取り出して広げた。

 スファーリアはそれに気付いて戻ってくる。

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