風月と縁は手を繋いでロビーへと帰ってきた。
「ロビーに到着」
「お疲れ風月」
「おういえ! お疲れ様です」
「で、今日も飲みに行くのか?」
「当たり前だ馬鹿野郎! こっちはそのつもりで来てんでぃ!」
「……テンションが同一人物と思えん」
「いいじゃんか~イチャイチャチュッチュッしようぜ~」
「チュッチュッは勘弁だ」
「ええ~つれないね~かれすぃ~」
「ま、それは置いといて、ログアウトして向かうぞ」
「へーい」
2人は何時もの様に居酒屋へ行き、何時もの席に通される。
店の配慮なのか、2人がよく頼む物がセットメニューになっていた。
それを見つけて速攻で頼んで、今日の反省をしつつ品物を待つ。
食べ物と飲み物が来たら本格的な反省会の始まりだ。
「ああそうだ長谷川君」
「どうしたよ」
「お母さんが一緒にロールしたいってさ」
「いいけど、何かしたい事が?」
「うん、昔縁とあってたらしいじゃん?」
「正直あまり覚えてないけどな」
「そこで、お母さんが当時の再現をしていと」
「な、なんだって?」
「ただの再現じゃないよ? スファーリアがその場に追加されるから」
「あー類は友を呼ぶかな」
「どうしたのいきなり」
「いやうちの親もさ、お前もとい、縁が小さい頃に運命の人と会ったなら、やり直せとね」
「おお、それは丁度いいね」
荒野原は速いペースで飲み、ピッチャーが既に半分だ。
「はぁ、やる事がたくさんあるな」
「お? 長谷川君、面倒くさいかい?」
「何事も準備段階って面倒くさいよな、正直」
「まあね~で、ご両親はどんなロールをしたいと?」
「父さんが今、縁とスファーリアのシナリオを調べて、辻褄が合う様に考えてるよ」
「おお、お父さんは何かお話とか作ったりする人?」
「ああ、好きで同人活動してたら、いつの間にか会社建ててしまった人」
「わ、わお、プロじゃん?」
「ちなみに母は声優、妹もな……いや、役者って言った方がいいか」
「わおわお、凄い」
「家族はそれに見合う努力をしてきたからな、俺は何もしてこなかったけどな」
「え? してきたでしょ?」
「え?」
長谷川君は箸を止めた。
「あゆさちゃんから聞いたよ? 中学高校と凄かったらしいじゃん?」
「俺の封印したい過去が赤裸々に」
「何で?」
「レアスナタがしたい為に、勉強で一番を取り、内申点を高くして、生徒会長もして、普通に考えたら可笑しいよな」
「何処が? 学生としてやる事をやってるならば、好きな事していいじゃん」
「進路相談で先生に『俺はレアスナタをする為にいい子でいたんだ、いい大学や就職先を進めないでくれ、プレイ時間が無くなるだろ』ってさ」
「おーいいじゃん! 人生の目標がしっかりとしててさ」
「そうか? 今思うと張り倒したくなるな」
「その選択肢が私と出会う分岐点だったのさ」
縁の様な語り口調で自信満々にニヤリと笑った荒野原。
「それを言われると自分の過去は否定できないな」
「そそ、過去は振り返る事しかできないからね~これからの事を考えましょう?」
「だな」
「ま、自分達のシナリオはお互いの両親に任せて、今は飲もう!」
「って事はさ、両親通し話し合いさせた方が早くないか?」
「お! それだ! あゆさちゃんに橋渡し役をお願いしよう!」
荒野原し意気揚々とスマホをいじりだした。
「当事者の俺達は関わらなくていいのか?」
「お互いの両親を信じよう、変なシナリオじゃなければ出来るでしょ?」
「まあな」
「んじゃ決定! ぐへへ、また長谷川君と一緒に居る口実が出来たぜ」
「飲むのも程々にね?」
「寂しい唇は酒を求めているのさ」
「うわ~どっかに有るようなセリフを言い出したよ」
何時もの楽しそうな反省会はまだまだ続くのだった。