「んじゃ、縁先生授業をどうぞ~」
「待て風月、何をしろと」
「さっき言ったじゃん、精神力は重要! って話でもすればってさ」
「っても、俺に説得力があって言える事は、人との縁についてしかないぞ?」
「ならばそれ語ればオッケーよ」
「じゃあそうするか、人との縁の大切さ、これが俺の経験で語るとだ」
縁は身振り手振りを入れつつ話し始めた。
「昔、俺は妹が人間達に迫害されててな? 俺は妹を守る為に人間達と殺し合った、人間達は不利になると『俺は悪くない、アイツがやったんだ』とか『騙されたんだ』とか『不幸の神は死ぬべきだ』とか、色々だったが……全て『幸せに』してやった」
「あの先生、幸せにしたってどういう事ですか?」
女子生徒が手を上げた、制服に刻まれたクラスを表す紋章は『鏡に写った人』をモチーフにしていた。
「身の丈に合わない幸せをくれてやった、浪費癖がある奴には宝くじとかで、巨額の大金を当てさせて自滅、とかな」
「先生って何の神様なんですか?」
「俺の名は縁起身丈白兎神、縁だ、縁起の良い事、身の丈の幸せを守る神様だな、一応」
「幸せって、身の丈合ったのを求めた方がいいんでしょうか?」
「幸せの上限を上げる事は出来るぞ?」
「上限をあげる? ですか?」
「努力をするんだ」
縁は威圧感を放ちながらそう言った。
質問した生徒は真剣な表情をしていたが、他の生徒の何人かは目をそらしていた。
「幸せになる努力をしたらいい、簡単に言えば『まっとうにお金持ち』になりたいなら、それ相応の努力をしろって事だ」
「……なるほど、ありがとうございます」
「人様に迷惑をかける幸せは求めない方がいいぞ? 俺の身体の様に呪われてるからな」
自分自身の行いを嘲笑うかの様に鼻で笑った。
「でだ、話を戻して、人に呪われた神様がちょっとまともになれたのは……人の縁があったからだ」
今度は感謝してもしきれない様な表情をしている。
「戦争が表向きには終わっても、俺は妹を迫害した奴らを幸せにし続けた、それを見かねた俺の恩人が神社を建ててくれたんだ」
「お? あの神社ってさ、もしかして斬銀が建てたん?」
「ああ、俺があまりにも暴れてたんでな」
「神社ってそんな効果があるん?」
「『神社を建てて祀りますので、怒りを鎮めて下さい』ってやつだな」
「ああ~なるほどね」
「そこが俺の怒りの抑え何処だったんだ、恩人に『お前、これ以上暴れると自分と周りを不幸にするぞ、幸運の神がそんなんでどうする』ってな」
「んで縁はどう変わったんだい?」
「とりあえず無関係な人間達に対しては、攻撃はしなくなった」
「いや~あれてんね~あたしも人の事言えんが」
「まあ、そこから少しずつ変わったのさ」
「急に変われるもんなのかね?」
「いや? 今も神社が有るから暴れてないだけ、それと大切な人達が増えたからな、その人達にも迷惑かけてしまうし」
「まとめると、縁が悪い神様にならなかったのは、人との関わりって事だね?」
「ああ、だからみんなには……何かあって時に、周りに当たり散らさずに自分が幸せになる方法を探してほしい」
自分が後々後悔をして今に至るこの姿を、反面教師にしてほしい様にみえた。
「何度も言うが、調子に乗って考え無しに力を振るった結果がコレだ」
「そこは大丈夫だよ縁」
「そうなのか?」
「うん、ここに居る生徒達は『相手の実力』を測れるよ」
「それがどう関係あるんだ?」
「人の恨みをちゃんと感じているって事、そしてそれすら力にしていて、自分達と比べて月とスッポン以上だからさ」
「……つまり怖いって事か?」
「当たり前でしょ、何言ってんの」
「いや、そんなつもりは」
「さっき自分で言ってたでしょうに? 『自分から不幸になっていってる』ってさ、その姿に愛着沸くと思う?」
「ああ……客観的見れてなかった」
「ま、先生初日なんてそんなもんよ」
「んじゃ、次の話をしようか」
何時のもウサミミカチューシャを付けた縁。
普段通りのジャージ姿になった。
その姿になった時、数人の生徒が安堵の表情をした。
「お、何時もの縁に戻ったね、うんうん、あたしはそっちの方が好きだよ」
「んじゃ、次は精神力について自分なりに話していくか」
「ほほう、聞かせてもらおうじゃないの」