「ほい、到着」
「お、学園が復興してる」
手を繋いで現れた縁と風月、目の前には復興した学園の姿が。
「縁先生! 風月先生! お待ちしていました!」
元気よく手を振りながら一本槍が走ってきた。
「生徒達は2人に分かれてるって知ってるのか」
「学校もちゃーんと知ってるよ」
「そりゃそうか」
「むっちゃん速すぎ、楽しみなのは分かるけど」
「いやはや、歳にはかなわないかの」
「ふふ、そうですねぇ」
遅れて、人の良さそうな雰囲気の老夫婦が、ゆっくりと歩いてきた。
「風月、この方達は?」
「私の生徒だけど?」
「ああ、この前来た時居なかった人達か」
「あらあら、ご利益がありそうな兎さんね」
「こらこら、自己紹介も無しにいきなり拝んじゃ駄目じゃろ」
おばあちゃんが有難そうに縁を拝んでいる。
「家内が失礼した、わしは
「私は石田
「私は縁といいます」
縁は深々と頭を下げた。
「おや? いつになく礼節しっかりしとるね、どったのさ」
「いつも通りだろ?」
「そうかな~? ま、いいやそれより実技教室に移動するよ」
「何処にあるんだ?」
「地下」
風月の案内で学園の実技教室へと移動する一行。
「さ、ここだよ」
「うお!? 広くね?」
「襲撃されて壊れたからここも一新してね、生半可じゃ壊れなくなったし」
「そしてギャラリーも居るのか」
体育館を正方形に9個並べたような広さ、そして2階はまばらに生徒達が居る。
「そりゃ現役の神様が手合せって言ったらこうなるよ」
「見世物じゃねーんだがね」
「ある程度は仕方ないとして、観客感覚の奴が居たら私が潰すから安心して、ささ、準備が出来たら勝手におっぱじめていいから」
「適当だな」
風月達は2階へと行き、縁と一本槍はある程度の距離を取って向き合った。
「始める前に一本槍君」
「なんでしょうか先生」
「俺は人に何かを教えた事は本格的には無い、戦いの中で相手に悟らせるなんて無理だ」
「はい」
「だから解らない事があったら質問してくれ、その間攻撃するしないは任せる、そして今回はあまり手を出さない」
「解りました、よろしくお願いします!」
「来い! 一本槍君!」
縁はウサミミカチューシャを外して、白い着物と髪に返り血を浴びた様な姿になった。
斬銀との戦いの時と同じように、赤と白の色合いが半々だ。
観戦している生徒達からざわつく声がする。
「遠慮無くかかってこい」
「……行きます!」
一本槍は全力で縁に向かい殴りかかった!
縁は避けようとはせずに、一本槍の拳をほほにくらったが平然としている。
「なっ!?」
「俺を恐れないか」
「スファーリア先生の殺気に耐えてますから」
「それはいい経験をしたな」
「はい、でなければ今こうして縁先生と話していません」
「その独特の呼吸法は界牙流か? 風月に教わったのか?」
「見様見真似です」
「準備は出来たようだね」
「いきます! 闘気! 獅子弾!」
一本槍は後方へ高く飛びながら、手から獅子の形をした闘気を放った!
縁に命中するが平然としている。
「奇襲獅子弾! 十連獅子弾!」
今度は縁の背後、正面から十匹の獅子の闘気が襲うが、これも意味は無かった。
「見事だ」
「可笑しい」
「どうしたかな?」
「技のキレが自分じゃないようだ、強さが増している」
着地したと同時に、一本槍は何時も以上の手応えに不信感を抱いている。
その表情は、両手を見ながら何とも言えない理解出来ないと言った感じだ。
「それは運がいいな」
「ま、まさか……いや……」
「解らなかったら質問していいんだぞ?」
「僕の技が効かないのは『先生の加護を受け取った、もしくは支配下にあるから』ですか?」
「その通りだ、炎の神から力を貰った者が、その力で炎の神を殺せないと同じだ、例外はあるが」
再び観戦している生徒達がざわつく。
「どうすれば突破できますか?」
「神は『信念や心、想い』に弱い」
「なるほど、己の信念を見せてみろって事ですね?」
「ああ」
「それを見せる前に試したい技があります」
「何だい?」
「『絶滅演奏体術』です」
「演奏の名前は?」
「『消滅』といいまして、文字通り相手を消滅させる演奏術です」
「試してみるといい」
「行きます!」
一本槍は再び縁飛びかかった!
「絶滅演奏体術!」
縁の体に連続で拳や蹴りを当ていく、様々な音を奏で、一本槍自身も全身を使い音を出している。
だが、縁はまたもや平然としている。
「消滅!」
大きく両手を広げて思いっ切り縁を押し出すように叩いた!
轟音が響くが、縁は感心した顔をしている。
「なるほど、周囲や自身の音で演奏術を完成させるのか」
「はい」
「見事だ」
「……ここまで手応えが無いとなると、全身全霊をかけます!」
一本槍はまた縁から距離を取った。
自分の右手を槍に見立てるように構える。
縁はただただ見ているだけだ。
「我が信念! 一本槍の如く!」
槍を持った突撃兵の様に縁に襲い掛かる!
そのスピードは凄まじく、瞬きが終わる瞬間には縁の胸を貫いていた!
「ぐっ! 俺の身体を貫く信念、降参だ」
「縁先生、ありがとうございます」
縁から右手を引き抜くと、貫いた部分は直に治った。