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第四話 演目 小手調べ

「ほい、到着」

「お、学園が復興してる」


 手を繋いで現れた縁と風月、目の前には復興した学園の姿が。


「縁先生! 風月先生! お待ちしていました!」


 元気よく手を振りながら一本槍が走ってきた。


「生徒達は2人に分かれてるって知ってるのか」

「学校もちゃーんと知ってるよ」

「そりゃそうか」

「むっちゃん速すぎ、楽しみなのは分かるけど」

「いやはや、歳にはかなわないかの」

「ふふ、そうですねぇ」


 遅れて、人の良さそうな雰囲気の老夫婦が、ゆっくりと歩いてきた。


「風月、この方達は?」

「私の生徒だけど?」

「ああ、この前来た時居なかった人達か」

「あらあら、ご利益がありそうな兎さんね」

「こらこら、自己紹介も無しにいきなり拝んじゃ駄目じゃろ」


 おばあちゃんが有難そうに縁を拝んでいる。 


「家内が失礼した、わしは石田守善いしだしゅぜんじゃ」

「私は石田薬味やくみよ、兎さん」

「私は縁といいます」


 縁は深々と頭を下げた。 


「おや? いつになく礼節しっかりしとるね、どったのさ」

「いつも通りだろ?」

「そうかな~? ま、いいやそれより実技教室に移動するよ」

「何処にあるんだ?」

「地下」


 風月の案内で学園の実技教室へと移動する一行。


「さ、ここだよ」

「うお!? 広くね?」

「襲撃されて壊れたからここも一新してね、生半可じゃ壊れなくなったし」

「そしてギャラリーも居るのか」


 体育館を正方形に9個並べたような広さ、そして2階はまばらに生徒達が居る。


「そりゃ現役の神様が手合せって言ったらこうなるよ」

「見世物じゃねーんだがね」

「ある程度は仕方ないとして、観客感覚の奴が居たら私が潰すから安心して、ささ、準備が出来たら勝手におっぱじめていいから」

「適当だな」


 風月達は2階へと行き、縁と一本槍はある程度の距離を取って向き合った。


「始める前に一本槍君」

「なんでしょうか先生」

「俺は人に何かを教えた事は本格的には無い、戦いの中で相手に悟らせるなんて無理だ」

「はい」

「だから解らない事があったら質問してくれ、その間攻撃するしないは任せる、そして今回はあまり手を出さない」

「解りました、よろしくお願いします!」

「来い! 一本槍君!」


 縁はウサミミカチューシャを外して、白い着物と髪に返り血を浴びた様な姿になった。

 斬銀との戦いの時と同じように、赤と白の色合いが半々だ。 

 観戦している生徒達からざわつく声がする。


「遠慮無くかかってこい」

「……行きます!」


 一本槍は全力で縁に向かい殴りかかった!

 縁は避けようとはせずに、一本槍の拳をほほにくらったが平然としている。 


「なっ!?」

「俺を恐れないか」

「スファーリア先生の殺気に耐えてますから」

「それはいい経験をしたな」

「はい、でなければ今こうして縁先生と話していません」

「その独特の呼吸法は界牙流か? 風月に教わったのか?」

「見様見真似です」

「準備は出来たようだね」

「いきます! 闘気! 獅子弾!」


 一本槍は後方へ高く飛びながら、手から獅子の形をした闘気を放った!

 縁に命中するが平然としている。 


「奇襲獅子弾! 十連獅子弾!」


 今度は縁の背後、正面から十匹の獅子の闘気が襲うが、これも意味は無かった。


「見事だ」

「可笑しい」

「どうしたかな?」

「技のキレが自分じゃないようだ、強さが増している」


 着地したと同時に、一本槍は何時も以上の手応えに不信感を抱いている。

 その表情は、両手を見ながら何とも言えない理解出来ないと言った感じだ。


「それは運がいいな」

「ま、まさか……いや……」

「解らなかったら質問していいんだぞ?」

「僕の技が効かないのは『先生の加護を受け取った、もしくは支配下にあるから』ですか?」

「その通りだ、炎の神から力を貰った者が、その力で炎の神を殺せないと同じだ、例外はあるが」


 再び観戦している生徒達がざわつく。


「どうすれば突破できますか?」

「神は『信念や心、想い』に弱い」

「なるほど、己の信念を見せてみろって事ですね?」

「ああ」

「それを見せる前に試したい技があります」

「何だい?」

「『絶滅演奏体術』です」

「演奏の名前は?」

「『消滅』といいまして、文字通り相手を消滅させる演奏術です」

「試してみるといい」

「行きます!」


 一本槍は再び縁飛びかかった!


「絶滅演奏体術!」


 縁の体に連続で拳や蹴りを当ていく、様々な音を奏で、一本槍自身も全身を使い音を出している。

 だが、縁はまたもや平然としている。


「消滅!」


 大きく両手を広げて思いっ切り縁を押し出すように叩いた!

 轟音が響くが、縁は感心した顔をしている。


「なるほど、周囲や自身の音で演奏術を完成させるのか」

「はい」

「見事だ」

「……ここまで手応えが無いとなると、全身全霊をかけます!」


 一本槍はまた縁から距離を取った。

 自分の右手を槍に見立てるように構える。

 縁はただただ見ているだけだ。


「我が信念! 一本槍の如く!」


 槍を持った突撃兵の様に縁に襲い掛かる!

 そのスピードは凄まじく、瞬きが終わる瞬間には縁の胸を貫いていた!


「ぐっ! 俺の身体を貫く信念、降参だ」

「縁先生、ありがとうございます」


 縁から右手を引き抜くと、貫いた部分は直に治った。

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