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第六話 演目 好き勝手の報いが始まる

  ジンに案内されて応接室に向かう色鳥達、中では縁達はお茶菓子を楽しんでいた。

 色鳥達も座り本題に入ろうとしていた。


「で、グリオード俺達を呼んだのは何でだ?」

「俺の国民がジャスティスジャッジメントの被害にあった」

「ふえー大変だな」


 色鳥は自分に関係ないという顔をしながら紅茶を飲んでいる。


「一命は取り留めたんだが『命を弄ばれた』」


 グリオードは握り拳を作った。


「はぁ!? 命を弄……ゴフォ! ゴフォ!」


 いきなり大声を出してむせる色鳥。


「お茶菓子は静かに優雅に楽しむ物よ?」


 涼しい顔で絆はお茶菓子を楽しんでいる。


「聞かせろグリオード! 命を弄ばれたってどういう事だ!」

「落ち着いて下さい色鳥様、私から説明させていただきます」


 麗華は鬼の形相の色鳥を涼しそうな顔で見た。


「すまねぇな、大きな声を出して」

「我が国の領域ギリギリに関所の砦があるんです」

「ん? 関所? いつの間にそんなもんが?」

「ある日いつの間にか出来ていました」

「どんなマジックよ」

「幻覚です」

「幻覚?」

「はい」


 麗華は軽くため息をした。


「ジャッジメントが用意した趣味の悪い幻覚です、砦では酒池肉林や違法な取引、拉致した者への暴行、地下闘技場での殺し合いなど」

「なるほど?」


 色鳥は怒りが抑えきれないのか右手が震えている。


「この幻覚の質が悪いのが『その場に長時間居ると幻覚化』してしまうのです」

「なあ確認だが……そいつらは『命を遊びの道具』にしてるって解釈でいいか?」


 色鳥はドスの効いた声を出した。


「はい」

「ならここで茶菓子飲み食いしてる場合じゃないし、麗華と遊んでる場合じゃなかったな……とりあえずその砦ぶっ壊してくればいいんだろ?」


 明らかにイラつきながら立ち上がった。


「いや意味はあるよ色鳥」

「どういう意味だグリオード?」

「この紅茶とお菓子には対幻覚のアイテムでね、紅茶の仕上げに雪の様に冷ます必要があるのさ」

「なるほどな、で、縁達を呼んだのは万が一の為か」

「うん、今回の事件の裏にどっかの神が一枚噛んでるらしくてね」

「その砦には私に刃を向けた神の加護を受けた異世界から来た者が居るとか? そろそろ私の堪忍が切れますのでぶっ潰しますわ」

「あの神が一枚噛んでるのか、確かにそろそろ消えてもらうか」


 縁と絆はニヤリと笑いながら立ち上がる。


「兄妹のやる気も出た所で行くか、どうやって向かえばいい?」

「色鳥様、私の転送されて魔法で砦の前までお送りいたします」

「じゃあ頼むぜ」


 麗華は指を鳴らすと雪が地面に降ってきた。

 それが積もり青色の魔法陣へと変わる。


「んじゃ、殺しに行こうか」


 色鳥の言葉を合図に3人は魔法陣の上に立つと雪が溶ける様に居なくなった。


「砦周辺に到着っと、随分と高い壁だな」


 色鳥は辺りを見回した。

 国境にそうように高い壁が左右に広がっている。

 縁達の少し前方の壁は綺麗に切り取られていて向こうへ続く道があった。


「入り口は一カ所なのか?」

「ええお兄様、不幸が一カ所に集まっていますわ」

「まあとりあえず、関所とやらに行ってみようぜ」


 色鳥を先頭に歩き始めた一行、関所の入り口へ。


「ふーん、内部はこうなってると」


 壁を超えた色鳥は辺りを見回した。

 真っ直ぐに進めば隣の国への道があり左手には見かけは小さい砦がある。

 通り道の真ん中で複数の兵士と家族連れが話をしていて縁達からは少し距離があった。

 縁達は巡回している兵士の数を確認している。


 その時!


「こんな所に関所なんて無かっただろ!」


 男性が兵士に抗議をしている。


「縁、行くぞ」

「ああ」


 色鳥と縁はそれを見て走り出し、絆は傘を銃のように構えた。

 縁は走っている最中にウサミミカチューシャを外した、何時もの神々しい衣装と共に髪の毛が白くなり白いウサミミが頭に生える。

 絆もウサミミを外した、するとゴスロリドレスから高そうな黒い着物になり、白い色の兎のガラがある。

 構えていた紫色のゴスロリに似合いそうな傘は、和風の舞傘へと形を変えた。

 黒い髪の毛に黒いウサミミが生えている絆は赤い目で獲物を狙っている目をしている。


「ヘッヘッヘ、通行書を持ってないとはいい度胸じゃねーか」

「知らん知らん! そもそも『ルシファント国』なんて無いだろう!」

「うるせぇ! ルシファント国に逆らうってか!」


 兵士は男性に剣を突き付けた!


「ひっ!?」


 男性は尻餅をついて倒れた。


「これは身体検査が必要だな、ヒヒヒ」

「へへへ、上玉じゃねーか」

「楽しくなりそうだな」


 近くに居た兵士数人が女性の手を引っ張って何処かに連れて行こうとしている。


「いや! 離して!」

「や、止めろ! お母さんに触るな!」


 女性は暴れているが兵士のに羽交い締めにされそうになっている。

 少年が兵士を突き飛ばそうとするが体格差があり何もおきない。


「このクソガキが! さっきからピロピロピロピロうるさかったんだよ!」


 少年は殴られて少し吹き飛んだ、手に持っていたオルゴールが地面に落ちた、それを兵士がオルゴールを踏み潰そうとした!


「人間、お前の方が五月蝿いぞ?」


 縁はオルゴールを踏み潰そうとした兵士を、走りジャンプした勢いで思いっきり蹴っ飛ばした。


「ぐへぇ!」


 空高く飛んでいった兵士は、一筋の流れ星のように何処かへ落ちていった。


「て、てめぇ!」

「お前ら弱いな」


 他の兵士が応戦しようとしたが色鳥が背後から忍び寄り首を折った、兵士はなすすべなく死んだ。


「な、な!?」

「こいつら!?」

「て、敵しゅ!?」


 混乱している兵士達に対して絆が構えていた舞傘の先から銃弾が発射される。

 実弾ではなく魔法の弾のようで混乱している兵士達の頭を狙い撃ち、兵士達は次々と倒れた。


「あらあら心臓狙ったのに頭に当たってしまいましたね、やっぱり私は運が悪いですわ」


 絆は舞傘を開くと傘には二匹の兎のガラがあった。


「ひっひ……」

「し、しん……しん」

「あわわ……」


 男性と女性は震えていて少年もガタガタと震えていた。

 縁は少年が持っていたオルゴールを拾う。


「少年、おじいちゃんとの思い出は大事にするんだぞ?」


 震えている少年にオルゴールをそっと渡した。


「へ!? な、何でしってるの!?」

「それよりお父さんとお母さんと一緒にここを早く離れなさい」


 ハッとした顔をした少年を縁は優しく立たせた。


「う、うん!」


 少年はオルゴールを大事そうに抱いて両親に駆け寄った。

 縁が少年と話している間に両親は少し落ち着きを取り戻したようだ。


「あ、あの! ありがとうございます! 妻と息子を守っていただいて!」

「ここは危なくなるから、さっさと帰りな」


 色鳥はつまらなそうに欠伸をしている。


「は、はい!」

「兎のおじちゃん、ありがとう!」


 縁達は家族が見えなくなるまで見送った。


「なるほど、様々な理由でここに来る様になっているのか?」

「そうなる様に仕向けているのでしょうね」

「まあそんな事どうでもいいじゃねーか」


 色鳥は砦を睨んでいる。


「胸くそ悪い『遊び』はここまでだ」

「……」

「お兄様?」


 絆は普段あまり見せない縁の顔に少し驚いている。

 誰かを殺しそうな顔をしていたからだ。


「人としての倫理、論理とどうのこうの言ってられん……神として相手をしよう」


 縁の姿が何時も以上に返り血を浴びたような姿になった。

 それは血で染めたように真っ赤で髪も着物もだが肌はそのままの色だ。


「幻覚とはいえ生きる者よ、今幸せを届けようぞ」

「お兄様、砦の地下から不幸が溢れ出ています、もし居ればですが生存者は救出した方がいいかと」

「うむ、不幸を払いのけるのはお前の仕事、我は幸運を与えるまで」

「御意、私が先頭を」

「では参ろうか」


 絆を先頭に縁と色鳥は砦に入っていった。

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