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第五話 幕切れ お茶飲んで帰りましょ

「で、縁さん? 後ろに隠れている女性はどなた?」

「風月、てかお前はインパクトが強いんだから自重しろ」

「はて? 私は人々の懺悔を聞いただけですが?」

「……俺も人の事は言えないが自分の行いを客観的に考えろ」

「んん? 道徳を布教しただけです、それは置いといて私はシンフォルト、小さい教会でシスターをしています」


 シンフォルトは風月に対して深々とお辞儀をした。


「コレハドウモゴテイネイニ、フウゲツトイイマス」


 風月はカタコトで深々と頭を下げた。


「さて挨拶もしましたし、村の皆様の治療をいたしましょう」


 シンフォルト達は村人達や山賊達を治療して歩き回った。

 山賊もとい山の民達は正気を取り戻しておかしらが村長に謝罪、村長はその謝罪を受け止めて和解の宴をすることに。

 村長はシンフォルト達を自宅に招きお茶をご馳走してくれる、同時に宴も誘われたがそれは断る。

 大きなテーブルを囲んで椅子に座り、村長の奥さんがお茶とお菓子を用意してくれた。


「皆様、村を救ってくださりありがとうございます」

「いえいえ、道徳心の導きですので」

「そいや村長はどうやってシンフォルトに助けを求めたの?」

「助けて下さいと願っただけですよ」

「え? それだけ?」


 風月は疑う眼差しでシンフォルトを見た。


「以前この村を訪れた時に村長さんとお話しをして、我が教会の御神体を祀ってもらう事になりまして」

「ああ~神に願いが届いたって感じかね? 縁」

「ああそうだな、それより村長さん、御神体がすり替わっていました」


 何時になく真面目な顔をしていた縁。


「御神体が!?」

「はい、村人以外であの祭壇に近寄った奴は居なかったでしょうか?」

「あなた、この間来た商人じゃないかしら?」


 村長婦人がハッとした。


「確かに、村人以外で祭壇に案内したのはその商人だけだ」

「って事はその商人がすり替えて今回の事件が起きたと」

「では私は『道徳のシスター』としてその商人と『話し合い』をする必要があるようですね」

「んじゃこれ飲んだら帰ろうぜ、和解の宴をするようだしな」


 優雅に上半身裸で紅茶を飲んでいる斬銀がそう言った。 

 しばし皆で談笑をして縁達はおいとまする事に、村の入り口まで見送りに来てくれた村長夫妻と村人達、山の民のおかしらと部下も。



「ありがとうございます、何と言えばいいか」


 村長は再び頭を下げた、顔を上げて縁の顔を見た。


「それでは皆さん、まいりましょうか」


 一行は村を出て道を歩いて車まで来た、道中特に何も無かった。


「あ! そうでしたわ!」


 シンフォルトがいきなり手を叩いて彼女に注目が集まる。


「流れに任せつつも歩きながら考えてました! 何かしてないと思ったら報酬のお話をしてませんでした!」

「報酬? 界牙流としてはなんもしてないから私はいらない」

「フォルク、拙者達はどうする?」

「ふぅむむ……ワシ達もいらんよ、この程度では貰えぬ」

「俺も筋肉見せびらかしただけだしな、一番苦労したのは縁だよな?」

「受け取れない、あの程度の神の対処に何か貰えないな」

「あ、そういえば縁ウサミミ外してなかったよね?」


 風月は思い出したかの様に手を叩いた。


「ああ」

「って事はかなり格下なの? いや私も弱いとは感じたけどさ」

「力の無い者達から見れば脅威だな」

「厄介だね~何とかするの?」

「ああ、次は消滅させるかもな」

「おお~う怖い、ま、それは置いといてここに居る全員が受け取り拒否ですな」

「……皆様素晴らしいです! 一時の欲に負けない心! 正に道徳の一端!」


 シンフォルトはニコニコしながら拍手を始めた。


「ねぇ縁、このシスターさん何時もこうなの?」

「まあ基本的にな」

「何というか強烈なキャラクターだね」

「界牙流が言うのか」

「隣の芝生は青く見えるって奴だね」

「ちょっと違わないか?」


 縁と風月がこっそり話しているとシンフォルトは難しい顔をしていた。


「うーん、とは言え皆様に何かお礼をしたいのですが……」

「教会でお茶でも飲ませてくれればそれでいいよ」

「では今すぐ! と言いたいのですが今日は子供達の発表会の片付けが残ってますので……あ! 片付けしなければ! 私はこれで失礼しますね!」

「また今度、都合のいい時に誘ってくれ」

「はい、では失礼します」


 シンフォルトに天使の翼が現れる、それを羽ばたかせて天に向かっていき消えた。


「拙者達も帰るでござるよ」

「んじゃ、ここで解散するか」

「おっけ~斬銀、そうしようか~」

「では皆の衆になったの」

「また逢う日まで御免」


 フォルクと青桜は車に乗り走り去る。


「あたしも帰るね、バイバーイ!」


 風月は音も無く瞬きした時には居なくなっていた。


「んじゃ、またな縁」

「ああ、またな斬銀さん」


 斬銀はゆっくりと歩き出して、縁は光に包まれて消えた。

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