「って! 縁落ちてくる! 助けないと!」
風月はわざとらしく慌てて指さした。
「腰が痛くて」
「拙者、疲れたでござる」
「風月が助ければいいだろ?」
その言葉に風月はジト目をして斬銀を軽く叩いた。
「いや~界牙流って異性をあんまり手助けしないんだよね~」
「そう言って面倒くさいだけだろ」
「バレたか」
「はいはい俺が行きますよ? 縁が可哀想だしな」
斬銀はため息をして走り出だす!
落下地点で縁を受け止めた。
「お遊びが過ぎないか?」
斬銀は呆れた顔をして縁を見てると風月が近寄ってくる。
「んだ縁何してんの?」
「相手が俺にイキリ散らしてるだの色々とお説教してきたからさ、どんな実力なのかとね」
縁は痛がる様子もなく斬銀にお姫様抱っこされている。
「えっとさ、神様って信仰の力で強弱付くんだっけ?」
「大まかに言えばね、俺に説教すねんだからさぞ強いんだろうと」
「いや縁は元気じゃん? ってか何時までお姫様抱っこを?」
「おっと」
斬銀は縁を降ろした。
「俺を殺すには足らないな」
「お! かっこいい事言い出したぞ?」
先輩風を吹かすような顔をしている縁を風月は肘でつついた。
「クックック、兎は良く跳ねるのぉ」
「なるほどな、縁がおちょくりたくもなるか」
「クックック、何がわかったのかな?」
「いやいやお前さんが縁の敵じゃないって事だ」
「クックック、初撃は耐えたようだが、次は無いぞ?」
「いや、縁に攻撃は効いて――」
斬銀は効いて無いと言いかけた縁が斬銀を見て首を振って言葉を止めた。
「クックック、諦めて殺される気になったかな?」
「いや、あんた弱いのに何威張ってんの?」
風月がバッサリと言い放った。
「クックック、何を言い出すかと思えば――」
「あ、面倒くさいから縁に任せようよ斬銀」
「そうだな」
斬銀と風月は青桜達への元へと歩いていった。
一緒に茶菓子を楽しみ始める。
「クックック、お前一人で私に勝てると思うのか?」
「俺は逃げた方がいいとあんたに言ったが逃げなかった」
縁がそう答えた時、カーン、カーンと鐘の音が聞こえた。
「時間切れだ」
辺りに響いている鐘の音は神々しい音色だ。
「この音色はなんだ!?」
「忠告通りに帰ればいいものを」
「おっなんだなんだ? この教会の鐘のような音は? そして気にアレは何?」
何時の間にか縁の隣に居た風月は上を指差した、そこにはうっすらと村を包む膜のようなものがあった。
「『道徳結界』だな」
「道徳結界って何?」
「場合によるが今なら『道徳が無い者は出れない』かな」
「なんだそりゃ」
「こ、これは! ま、まずい!」
隷属の神はその場で急にうずくまった。
「今から来る奴と『縁結び』しといてやったから逃げるのは不可能だぞ?」
「な、何? お前は何者だ!?」
「……身の丈に合う縁結びをする神様だよ」
縁は殺意剝き出しで冷酷な視線を隷属の神に向けた。
「馬鹿な!? 縁結び程度の神がワシを縛り付けるだと!?」
「縁、そんな顔したら駄目だよ? 笑う門には福来るってね」
「……ああ」
風月はスッとお茶を縁に差し出して縁はお茶を受け取る。
「で、この神どうすんの?」
風月は半狂乱になってのたうち回っている隷属の神を指差した。
「今降臨してくる奴に任せる」
「ワシをナメるのもいい加減にしろ!」
それを聞いた隷属の神は顔を真っ赤にして立ち上がった!
隷属の神は右手を振り上げ縁に向かって走り出した!
『コラ! 暴力はいけませんよ!』
優しく叱る女性の声が辺りに響いた。
「お、やっと来たか」
縁は空を見るとつられてその場に居た人々は空を見た。
「いけません! 貴方からは外道へと身を落としてしまった方々の心を感じます!」
なんと空からシスターが光に包まれてゆっくりと降りてくる。
神々しいその姿に一同は息を飲んだ。。
「『道徳の加護』を持ち道徳の神を主とする、シンフォルトと申します」
シンフォルトはニコッと笑った。
絵に描いたような教会のシスターの服、金髪に青い瞳と聖母のような笑顔。
腕には道徳と書かれた腕章をしていた。
縁を庇うように前に舞い降りる。